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メゴマ奪還戦 Ⅴ

――辺鄙な村・宿屋


明け方帰ってきたら、宿屋の親父が朝食の仕込みをしていた。

この人は、夜は酒場をやってるので、いつ寝ているのか不思議でしょうがない。

あいさつを済ませてから、二時間ほど休んで、朝食をいただいた。


朝食を食べているところに、ポールが入ってくる。

神妙な顔をしたポールは


「元村長さんが亡くなった。今夜葬儀をするからよろしく頼む」


それだけ言ってから、帰ってしまう。

宿屋の親父も相当なショックを受けているようだ。

小言は多かったが、皆に好かれていたのだろう。


宿屋の親父は、葬式の準備を手伝うので、外出していった。

改めてこの村の人間を守って、安定した生活を取り戻す手伝いをしなければならないと、心に誓う。


【マテリアル】により、限界まで、魔石を作成して、魔石のストックを作る。

それと、生命の魔石を加工して、遠投用の槍を三本作製。

さすがに体力と精神力を使いすぎて、夜まで深い眠りに落ちる。


――村の広間


ちょうど夕日が落ちてすぐの頃。

広間には、現在この村に残る村人があつまっていた。

皆、様々な表情であった。

呆然とする者、悲しみに暮れる者。

元村長が、木製の棺桶に入れられて、眠りについている。

村人一人ひとりが、その中に、野草を入れていく。

本来は、鮮やかな花を手向けるのだが、花屋が逃げてしまったので、道端に咲く花を集めて、その代わりとしている。

元村長家族は、棺桶の横に立っており、例の少女も涙を流しながら、参列者に、花を渡している。

村人全員が、棺桶に花を入れ終わると、蓋をして宿屋の親父が、何やら炭で棺桶に幾何学模様を書きしるす。この、周辺の村に伝わる、葬儀の流れである。

最後の、棺桶を囲むように、ささやかな食事がふるまわれる。

アルス少年は、少女の傍にいるようだ。


食事の後、少し酒に酔ったポールが、皆に向かって言葉を発する。

「今、この村は、未曾有の危機に瀕してる。今こそ、皆まとまって、乗り越えようじゃねーか!」


皆、それに賛同して、呼応する。

この団結力を、どこまで戦場で活かせるかが、鍵になるだろう。

人族は、一人ひとりは、脆弱であるが、集団を統制する能力は優れている。


葬儀が終わり、各々の家へ帰り支度を済ませ、ちらほらと、人が居なくなる。

僕も、そろそろ帰ろうと席を立ち、棺桶を見に行くと、その蓋には見覚えのある幾何学模様が描かれていた。


これは、『回路』だ。

『魔術回路』か『元始回路』か、と考えていると、『精霊回路』じゃないのかと、結論にいたる。もう一度その模様を見てから、帰路につく。何度も、頭の中で、回路を組み立てながら。


――翌朝、西方村入口


ゼラとゼラの隣にいた女性が、旅人の格好で現れた。

宿屋に招きいれ、親父には事情は説明した。

客人として丁寧に対応してくれた。


ゼラとは個人的にも、少し力試しがしたく、数本手合わせした。

ゼラ自身本気を出していたかは謎だが、【畜生道】で勝利することができた。

この大陸でも、中々の強さであろう。

ゼラの方は、かなり関心しており、

「お前との戦いだけで、調査隊との様子を見なくても、信頼できそうだ」

とまで言ってくれたが、村人の団結力が、鍵になると説明し、調査隊の到着をまった。


夜には、三人で酒を酌み交わす程仲良くなった。

女性の方は、ルインといって、ゼラの元部下で、現在は奥さんになっているようで、公私ともに、ゼラを支えている。ゼラは、聖騎士としては、珍しく盾を使わず、大剣のみで戦うスタイル。ルインは、スタンダードな聖騎士の装備である盾と槍。


盗賊家業は、実際には、あまりやっておらず、魔獣などの討伐による賞金や報酬、狩り、農耕で食いつないでいた。たまに、盗品を乗せた、他の盗賊の積み荷を襲うが、身ぐるみまでは剥がさない。近隣の村からの上納もあるという。


夜も更け、各々の部屋へさがり、睡眠をとる。


――辺鄙な村・西方出入口


昼過ぎに、六十騎程の聖騎士の鎧を付けた軍団が、現れる。

調査隊どころの話ではない。

完全に壊滅させる為に、この村を訪れたとしかいいようがない人数だ。

ポールを中心に、村人全員で迎える。

当然ゼラとルインは、その場にはいない。


集団の指揮者が前に出てくる。


「このほど、この村に十名ほどの聖騎士が訪問したはずだが、知るものは居らぬか?」


まずは、ポールが交渉役として前に出る。


「そのような方々は、知りませんぜ」


「嘘を申すな、この者が、こちらの村で、聖騎士が殺されるのを見たと申しておった」


指揮者の後ろから現れた、筋肉隆々な男の武器の先には、村人らしき男の首が刺さっている。


「貴様らぁぁぁああぁぁ」

ポールが吠える。


調査隊の派遣かと思えば、殲滅隊の派遣であったようだ。

既に、この近くの村は、地図の上から無くなっているのであろう。

やはり最初から交渉は無理の様である。


ポールは感情的になり、その右手をかざす。


【ロットブレス】


扇型に放射する雷を前方の三騎が受ける。

少しくぐもった声を上げるが、致命傷になっていない。

顔や腕が少し焦げている程度だ。


「良い度胸だ、これよりこの村の民を反逆者として処刑する」


全員が、ランスを腰の位置にあて、突撃の体制をとる。

騎士たちは、そのランスから緑色のオーラを放つ。

《振動》超高速の振動により、すべてのモノを粉砕する。

指揮者が、にやりと口元を釣り上げてから


「突撃いいいぃいいいぃいい!」


指揮者は自らの間違いをすぐにでも気づくべきだった。

たかが村人だと思い判断力を鈍らせていたのだろう。

そのおごりが、そのどんな悲劇を生むかを知らぬまま。


【ファランクス】


当然、紋章術では、詠唱は必要ないが、ポールの合図に合わせて、皆が右手をかざす。

厚い盾の壁ができる。

突撃体制に入っていた馬に、大きな壁ができる。

馬が嘶くが、さすがの馬術で、落馬するものは、いなかった。


感情的なポールに対して、アルス少年は冷静であった。

続けざまに、彼は叫ぶ。


【ロットブレス】


集団心理が働く、皆がそれに無意識に続く。

【ロットブレス】による、雷の波が、聖騎士に襲い掛かる。

聖騎士自体のダメージは少ない。

まばゆい閃光に対しても、徐々に冷静さを取り戻し、二手に別れ挟撃する布陣へと馬を進める。

【ロットブレス】が分散してしまう。

直接的な攻撃力の少ないそれは、分散する事により、被ダメージは激減する。


「小癪な人間どもよ」


再び突撃の構えをとる。

今度こそ、勝利を確信した指揮者が、手を振り下ろす。

しかし、それを合図に、ほとんどの騎士が落馬する。


指揮者は、驚愕しつつ、急にバランスを崩す。

自分自身も重力には逆らえず落馬する。

自分自身に異常が無いのに、何故と考えるのが遅かった。


【ロットブレス】での攻撃目標は、聖騎士ではない。

『馬』が対象なのである。

元々、臆病な動物である馬は、閃光にも慄きやすく、また、聖騎士に比べれば、魔術に対する抵抗力も弱い。


馬の皮膚は、腐敗し爛れ落ちる。

馬が激痛で、嘶き、明後日の方向へ逃げてしまう。


村人たちは、自分たちの力で、六十騎もの聖騎士を翻弄できるという事実に驚き、また自信を持つ。


【氷槍・スピサ】

【氷槍・スピサ】

その光景の中、一番最初に動いたのは、ほかでもなくアルス少年であった。

ディアルフォースでは無く、連続放出に専念したようだ。

僕がやっても、あれほどの短時間で、連続起動は不可能である。


大量の、氷の礫と、それによる凍結で、聖騎士は更に混乱する。

二手に分かれている事もあり、指揮者側は立て直しつつあったが、そこに暴風が吹き荒れる。


【テンペスト・トリプルフォース】


二手に分かれた事により、対象範囲が狭まり、【テンペスト】で一掃できる。

部下たちの悲鳴を聞き、激昂した指揮者は、


【魔人化】


右目が以上に肥大化して、身体も灰色のなる。

サイクロプスの類だろう。

巨体ながら、優れた動体視力により、回避行動が早い。

しかし、すでに、勝負は決していた。


【テレポーテーション】

【ライトニングウェポン】


顎に向かい一撃を放ったが、回避される。

それでも、その眩く輝く拳が、視力の良すぎる目には刺激が強く、目くらましとなり、第二目の脇を狙った拳が体に食い込み、骨が砕ける音が鳴り響く。

苦悶しうずくまったところで、四肢の関節を拳で砕く。


「君たちは、魔人なのかい?」


逃げる事の出来なくなった指揮者は、這う這うの体でやっと言葉を紡ぎだす。

「め、メゴマ殺害後は、騎士長、いいや、アモン様を中心に我々が政を行っている」


「それでは、メゴマは実質的に魔人の支配にあるという事だね」


不敵な笑みを浮かべて

「そうだ。貴様ら下等な人間どもより、我々が支配した方が、うまく回る。精霊王様を崇拝する心は、我々の方が高い」


「それでいて献上を厳しくしている理由が分からないが」


「我々は今集結しつつある。軍備には金がかかるのは当たり前だ」


「聞いて何だが、べらべらとしゃべるやつだな」


「はっ、はああはっは!もう漏れる事も無い、何故なら貴様らは、ここで死ぬのだから」


歯に何か仕込んでいるようだった。

咬んで起動させようと、口を開けた瞬間、遠方より一陣の矢が飛んできて、こめかみに命中する。

口は閉じられることもなく、力尽きる。


ルインによる遠方射撃。

かなり訓練された攻撃である。

てっきり、槍での戦いのみが得意だと思っていたが、弓兵でもあるらしい。


「今の戦い見させてもらった。今後ともよろしく頼む。空き家をつかって構わないか?」


「よろしく頼むよ。パール構わないかな?」


「おう、使ってくれ。こんな連中に、メゴマが占領されていると思うと、ぞっとする」


「それでは、装備を整えてから、メゴマを奪還しに行きましょう」


村人たちは、黙ってうなずくのである。

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