メゴマ奪還作戦 Ⅵ
――辺鄙な村
程なくして、ゼラの部下たちが、空き家に暮らすことになった。
人口が急激に増加したことにより、トラブルが多発すると考えていたが、大きな文化の違いも無く、信仰対象も同じであり、村人はもともと、ある程度の年齢のものしか残っていなかった事から、特に問題は起こらず、仲良くやっている。
宿屋の酒場も、仕入れは大変になったが、客がくるようになり、騒がしさを取り戻しつつある。
ゼラの部下は、十代から三十代の若い元聖騎士であり、小さな子供を抱えている家族が多かった。
広場には、また子供たちの声が戻ってきている。
転出者が残した畑などの土地を、貸し与えて昼間は、農作業。夜は、剣の稽古を行うこととした。もともと、似たような生活をしていたことから、特に不満の声も上がらなかった。
また、ポールに提案し、戦死者の家族を支える為、戦死者家族支援として、一割弱の税金を依頼。多少の不満はあったが、これも了承させた。税収は基本、現物による習得を行い現金化は、土産屋の親父に依頼して、行商もしくは、村の中で換金した。
たまったお金は、金物屋で村長のポールが管理した。
莫大になったときは、別の運用方法を考えればいい。
年金のシステムと同じで、百年続くようなものではないのだから。
撃退後の聖騎士が装備していた者は、ポールの手により金属へ戻され、加工し隣国の町で莫大なお金になった。当然、支援金としてストックする。
加工が不可能なものは、ゼラの盗賊ルートにて販売、そちらもそれなりのお金となった。
盗賊商人とのコンタクトの為、僕も同行して、顔をつなぐ事にも成功した。
ゼラの部下の中にも単身者はいるので、それらと僕、アルス少年で、防衛及びメゴマへ武器・食料の供給を抑える為、商団の襲撃を行った。
襲い続けると、さすがに制圧部隊は、派遣されたが、この辺鄙な村の蜂起の情報に合わせて各村が一斉に蜂起を始めた為、メゴマ側も部隊の分散が必要になった。
巡礼者についても人数が激減して、メゴマ自体や、それに強力的な町にも大きな経済的な被害が及んだ。
強力的な町は、もともと巡礼者が落とすお金により、経済を回しているからである。
周辺の村には、魔導具を与える。
当然、ただでは無く莫大なお金を要求するが、献上の増額に苦しむ村は、メゴマに払うぐらいなら自分たちの身の安全をとる。
そして、武器(魔導具はもはや兵器だが)の強化により、メゴマからの殲滅部隊は苦戦をしいられ、勝利した村の情報を掴めば、すかさず盗賊ルートを紹介し、戦利品の現金化を手伝う。
当然、盗賊ルートからも感謝され、戦勝で盛り上がる浮ついた村からも、武器の提供を含め感謝され、新たな武器の依頼も舞い込む。
メゴマの戦力を吸いつつ、こちら側の戦力を強化する。
上策であり、王道を行く。
年間莫大な収入があるメゴマでも、兵士の増強に偏った支出をしていたのだろう、自身の力で金を生み出す事については、後回しにしており、巡礼者の減少と戦力の分散は、非常に打撃を与える事になった。
負ける村も中にはあり、難民として、各村に再配分される。
そこで、メゴマ側の草が混じっているかは不明であるが、中には、再々配分されるものもいるので、情報が流失してしまう危険性はあるが、当面の人口増加には難民の受け入れは止む負えない。
それに、対外的にも蜂起の旗印であるこの村については、尚更受け入れ拒否はしずらい。
ゼラやルインなど、その手の輩を見破る力があるものを難民認定の手続き及び、その後の監督者として指名した。
三名ほど疑わしい者があらわれ、二名は最終的に【魔人化】して暴れたが、被害少なく処刑する事となった。
辺鄙な村であったが、武器の販売、農耕収入、盗賊ルートへの紹介料、戦利品の売却などにより、莫大な収入が確保できるようになり、隣国からの商人も来訪するようになった
戦争中であるが、そこに目をつける商人も多い。
行商の必要性が少なくなり、他国の情報も入ってきている。
他国では、重税による蜂起として伝わっており、世論はこちらの味方だ。
他国は現在のメゴマの状況を感知したうえで、静観していたのかもしれない。
今回は、民衆側優勢とみて何もしない構えであろう。
頭がすげ変われば、その後の交流も容易になり、特に自国に飛び火するレベルの話ではない。税率八割との噂だからだ(隣国は約四割)。
盗賊ルートからの情報では、ついにメゴマ側も千人規模の部隊を、こちらに送ってくる可能性があるとの事。盗賊の頭、フリーとは更に親交を深めており、難民の中でメゴマ側の草の情報も提供してくれる。
中々に義理堅い盗賊で、防衛戦にはフリー自身の部下も提供するといってくれたが、繋がりを隠したい事もあり断った。
――メゴマから辺鄙な村までの山道
千人規模の部隊が、歩みを進めている。
軍隊の指揮者は、メゴマでも四将と言われ、岩石を使った魔術を得意として、強靭な防御力と突撃で相手を灰塵に帰すことを己の使命と思っている。
今回の戦いはつまらぬものと考えている彼はれっきとした武人である。
強者と戦う事に、喜びを感じ。
弱者との戦いを避ける。
相手がどんな武器を持っていようが、自分の壁を容易に破壊できまいと思っている。
彼の考えは正しい、村人や元聖騎士では、彼の壁を破ることはできない。
彼は岩陰に、彼の望んだ強者がいるとも知らず。
戦利品運搬及び、僕が敗れて殺害されたときにはその旨の伝令として、独身聖騎士と村人十五名ほどが後方で待機。
僕の背後には、遠投用の槍が数本刺さっている。
当然、それらは魔導具となった槍であり、腕に革製のグローブを装着する。
革製のグローブには、《強化》対象は自身の腕のサーキットがあり、
【リインフォース・パワー】
後ろの槍をおもむろに取り出し、レンズの抜けた伊達メガネに力をこめる
【ホークアイ】
「ふん!」
気合と共に、投げ放つ。
彼の部隊後方より、凄まじい爆音が鳴り響く。
爆発とその後、高熱の岩の雨が降り注ぐ。
十数人は、即死。
周りにもかなりの被害が出ている。
一端部隊の進行が止む。
彼は、側近に周りの観察をするように指示を飛ばしたところで、二投目が襲い掛かる。
これは、先ほどとは違い、爆発後、大量の水蒸気が発生して、視界を奪い。
高温により肌を焼く。ただし、致命傷の者はいない。
視界を完全に奪われて、前方の部隊は、混乱に陥る。
その後、三投目が前方の軍に着弾。
先ほどより強い爆音と、岩の雨が降り注ぎ、数十人が即死。
視界不良の中での攻撃であり、いくら彼の精鋭たちでも、混乱は避けられず、また馬たちが興奮してしまっている。
「転進!」
命令が飛ぶなり、多くの聖騎士が、狭い道でもうまく切り返す。
その転進が彼らの命を奪いと知らず。
最後まで、敵の姿を捉えられぬわけにはいかず、この窮地のなか、指揮者は一人槍が飛んでくる方向を睨んでいる。
側近に促されてやっと転進の準備に入り、徐々に晴れてきた霧の中前進するが、すぐに歩みを止める。
「何だこれは?」
晴れた視界に広がるのは、数えきれないほどの部下たちが、酸の沼にはまり、皮膚をはだけさせ、骨まで見えた状態の屍として浮かんでいる様であった。
恐らく、沈んでしまった者もいよう。
あの視界不良のなか、全力でこの沼に突っ込んだのだろう。
少し離れた所には、紅い魔石が輝く、二本の槍が刺さっていた。
「こうすれば、死骸を剥ぎ取る手間を避けられるからね」
その声を聞いたと同時に、彼は目覚めぬ眠りへといざなわれた。
いくら強靭なゴーレム種だとしても、【魔人化】する前に、襲われては、一たまりも無い。
大規模な制圧部隊は、たった二日間の進行で、撤退を余儀なくされた。
指揮者死亡及び部隊の一割強の被害をだして。
その報告を聞き入れたフリーは、実際両軍の草をやっていた節があるが、ゼラに対し忠誠を誓うと膝をついて、先方の戦力が、現在一万弱しかいない事も話してくれた。
そして、献上を焦っていたのは、魔人側の世論で、サクーアの件もあり支援が滞っていたためであるとの事も教えてくれた。
「攻め時が近づいているね」
ポールとゼラ、フリーに向けて期は熟しつつある事を伝える。
一投目は、距離の計算と進軍を止める為。二投目は、沼に嵌める為視界をわるくする。三投目は撤退命令を出させるため。通常指揮者の周りは優れた兵士を置くので、それを確実に仕留める為の作戦。被害人数以上の損害あり。 指導者がけっして無能では無く、優秀がゆえに、「転進」命令をだした。




