メゴマ奪還戦 Ⅳ
――辺鄙な村宿屋
「ふざけるな!」
「勝てるわけないだろ?」
「逃げるしかない!」
当然そうなるだろうと予想した言葉が飛び交う。
争いたくないなら、それもしょうがない。
「どう選択しても、現状を維持することは難しでしょう。現状を変えるには、やるべきことをやるしかありません。まずは、逃げたい世帯は、今から準備して逃げてください」
そう話すと、半数以上人が外に出ていった。残るは、約十人ほどに減ってしまった。
宿屋の親父に向かって
「親父さんも行くなら準備してください」
「ばかやろ―。俺は残るぜ。さっきは何もできなかったからな」
口を少し釣り上げる。
「頼りにしているよ」
残ったのは、元村長の家族とアルス、宿屋の親父、金物屋の親父、お土産やの親父、職人風の親父、農業団体の代表者とその他の人達。
利害関係があるものしか残らないのは常だな。
後は、メゴマや周辺の村に逃げ込むだろう、こちらの戦力は筒抜けか……。
「良く残ってくれました。これだけ残ってくれたなら十分です」
「これから、どうしたらいい」
「まずは、調査隊への対応からになります。おそらく、戦いになるでしょう。そこで、戦いに備える事。後は、本当に聖騎士が魔人なのか人なのかを確かめるだけですが」
農業団体の代表者たちは
「しかし、私たちには戦う力が無い」
「その力は僕が与えましょう」
不敵に笑う
「お、おう」
「それと、戦力が圧倒的に足りない。一番大きい盗賊のアジトが知りたい」
アルス少年は、非常にいやな顔をしながら
「西方に大きなアジトがあるようです」
「それでは、そこの頭と交渉するしかないな」
アルス少年は、怒りをあらわにした
「なぜです!そんな奴らの力を借りる必要なんかありません」
「本当に聖騎士が人族である場合は、問題ないが、人族以外だと彼らの力は必要になる。四年前のメゴマ殺害後、聖騎士が多く辞めさせられた。その聖騎士が、盗賊となった。僕の考えが正しければ、魔族に上が鞍替えして、邪魔な聖騎士を追放した可能性はある。本当に略奪のみを生業にしている盗賊と、奪還の機会を狙っている者に分かれていると思う」
「やつらは、皆悪です」
「そう決めつけてもしょうがない」
アルス少年は納得はしていないようだ。
当然、納得してもらわなくていい。
まだ、僕の予測自体も真実であるとは、限らないのだから。
「それでは、本日は解散します。明日も同時刻に、この場所に集合してください。この話を聞いて逃げたい方がいらしたら、明日は来なくてかまいません」
本日は、お開きとした。
帰り際に、職人風の親父に声を掛けた。
睨んでいた通り、精霊王のお守りを作っていた人物であり、人数分のお守りがほしいと話をしたら、いくらでも渡すといわれた。
各々が不安そうな顔をしながらも帰路につく。
僕はアルス少年と一緒に、元村長の家にいった。
元村長はベットに横たわっている。
少女が心配そうに傍らに寄り添う。
「なぜじゃ……なぜ戦う」
「恐らくは、これが最善の選択です。現在のメゴマの統治体制は明らかにおかしい。献上とは、各村にその額を限定せずに、自主性に任せるものです。なぜ、聖騎士まで派遣してくるのか理解に苦しむ」
十分理解はしているのであろう
「……それでも」
「村を維持するのが長の務めじゃない。村民の幸せを実現するのが長の務めです。あれに応じていたら、決して幸せにはできないし、メゴマ自体の統治体制も長くはもたない」
「そうじゃな……おんしらの好きにせい」
「ご自愛ください」
村長と話をしている間
アルス少年は、少女を慰めている。
少女もアルス少年との会話を楽しんでいるようだ。
アルス少年とお暇した後、別れて、腕輪職人の家へ行く。
すでに、日は落ちて、月の明かりを頼りに訪問する。
「早速こさせてもらいました。何個か腕輪を貰っていきます」
ぶっきらぼうに
「勝手にしろ」
皮を伸ばす工程に取り掛かっている。
「逃げないのかい?」
「俺はこの村民だ」
「その居場所を僕は奪うかもしれないが」
「それでもかまわない。仲間の幸せが俺の幸せだ」
なかなかどうして、ぶっきら棒だが、良い人じゃないか。
「明日また」
そういってもこちらを見ないが、それでよかった。
ハンマーの音だけが響きわたる。
――宿屋二階・自室
【マテリアル】と【バイオス】の連続使用で、疲労困ぱい。
ベットに寝転がり、天井を見やる。
魔導具は、そろった。
今後の展開を考えて、準備はもう少し続けた方が、よさそうだ。
調査隊が、こちらまで来るのにも、時間はかかるだろうから。
準備する時間はまだある。
――宿屋一階
人数の減った店内では、今までの様な喧騒は無く、静かに時が流れる。
悪者になっているだろうが、あえてそこで酒を飲むことに意味があった。
「これから、俺たちはどうすればいいんだ」
静寂を切って、ポールが言葉を吐き出す。
「先ほどお伝えした通りです」
「そうか……それしかないか……」
「恨んでますか?」
「テメーを恨んじゃいない……今の聖騎士の状態を考えれば、いずれこうなる。ただ、うちの村じゃないどこかが、決起した後に、我々も続くと思っていた」
「……」
「他人任せであったのは認めよう」
「そうか……では、自分たちの力で、自由を勝ち取れるじゃないですか」
「大きな犠牲を払ってでもやらなければならない」
ポールは言葉に力をこめる。
「すでに、心は決まっているじゃないですか」
周りで飲んでいた大人たちも、腹が決まったらしい。
そうだよ、僕についてくることは無い。
ポールについてく行けばいい。
――翌日の昼・宿屋
農業団体のうち一人が姿を消しただけだった。
元村長の体調が思わしくなく、元村長家族はきていない。
集まった全員に、精霊王の守りを配る。
職人の親父さんは、改めて自分自身が作った腕輪を見る。
当然、僕が手を加えた部分も見てくる、魔石が輝く。
「なかなかいい出来だ」
普段は無口だが、ちゃんと見てくれるんだな。
コアを《障壁》、《硬化》をリンクして、前面への防御を徹底した。
【ファランクス】
コアを《閃光》、《腐敗》をリンクして、範囲は前方扇型。
【ロットブレス】
彼らに説明を行い。
調査隊到着までの間に、少しでも回数が打てるように依頼。
また、農具でクワやフォークの様な、長物を集めるように依頼した。
夕方までには、長物も集まり、金物屋からは、武器の類を渡される。
ツーハンズやロングソードなどがある。
ランスは、人数分揃えてもらうようおねがいする。
何人かは、魔術の発現をさせてみたらしく、数発で魔力切れしたらしい。
やはり、魔石にある程度頼るしかないかな。
当然アルスは、マスターするのが早かった。
しかし、彼には【氷槍】で敵をガンガン倒してほしいがね。
五〇センチくらいの短刀を二本選び、《吸血》と《蓄積》《硬化》をそれぞれ刻む。
腰に、二本させるように、職人親父にベルトの作成を依頼したところ、手持ちの革ベルトを持ってきてくれた。
――西方
夜も深まり、今日は酒場によらないで、アジト探索に行く。
アルス少年を連れていくのは、はばかられたが、道案内はしてもらうことにした。
仇うちの為、アジトの探索はしていたようで、すぐに見つかった。
西方には、いくつか盗賊の集団がいるようだ。
一番大きいと思われるのが、ここであるらしい。
アルス少年には、待機してるように命令しておいた。
少し心配だが。
見張りが二人いた。
正面突破しかないだろう。
「やあ、今宵は月が綺麗だね」
「誰だ貴様は?」
「旅人さ。ここには聖騎士様がいると聞いてきたのだが」
「貴様我らを馬鹿にしているのか?」
すでに、僕に殺意を向けている。
どうしようかな。
なにも考えてなかった。
「聖騎士様にメゴマ奪還について話をしたいと伝えてくれないかい」
「俺も聖騎士だが……ちょっとまってろ」
「お前いいのかよ」
「ゼラさんを呼んでくるよ」
「悪いね」
「しっかし、お前も我らがここあたりを縄張りにしている盗賊だって知ってるのか?」
「まあ、雰囲気からするとそんな感じだとは思ったけど、格好や言動から、それなりの教養があると感じたんだけど」
「緊張感のない奴だな」
「そっくりそのまま返すよ」
「おーい、ゼラさんが、つれて来いってさ」
かなり軽いんだけど。
大丈夫かこいつら。
木造の簡易的な部屋がいくつもあり、あった。
居住空間になっており、団員の家族が住んでいるようだ。
密集はしているが、人口については、辺鄙な村以上は余裕でいるようだ。
小さな家に、案内された。
「ゼラさん、連れてきました」
「はいんな」
「やあ、邪魔するよ。しっかし、大将が小さな家とは」
「わるいな小さくて、まあ座んな」
紅いツーブロックヘアの大男であるが、無駄な肉は無く、細身の体にも見えるが、筋肉がびっしりついている。緩い服装をしている。
隣には、同じく紅い色の美人がすわっていた。
そちらも、細身でありモデルの様なスタイルだが、筋肉がそれなりについている。
「要件は聞いているようだけど」
「本気でそんな事かんがえてるのか」
「考えざる負えない状況だからね。既に、聖騎士を殺害している」
今まで、穏やかな雰囲気が流れていたが、急に試すような鋭い眼差しを感じる。
「なるほど」
「そこで聞きたいことがあるんだ。四年前メゴマに何があったんだい。殺害した聖騎士の一人が魔人になったんだ」
少し驚いたような表情になったゼラ。
「やはり、そうだったか……メゴマ様は四年前に殺された。魔人の凶刃の前に。その傷口は背後から貫かれていたそうだ。あの方が、背後からの襲撃で、倒れるはずはないと思っていた。やはり、聖騎士長アモン様の裏切りであったか……」
「話はだいぶ見えてきたよ。そのアモンという者おそらく魔人もしくはその関係者だと思われる。現在、メゴマの指導者である所から推測されることだが」
「これで俺たちも、動く理由ができたが、まだ戦力は足りない」
「そこで、御見せしたいものがあるんだが、おそらく後二、三日後に、聖騎士を殺害したことにより、調査隊が村に来るだろう。そこで、僕たちの力を見てほしいんだ」
「なるほど、それでどちらにつくか決めてほしいということか」
「よろしく頼むよ。それと聞きたいのだが、二年前この集団は、人をさらったことがあるかい?別に責めるわけでは無いよ。生きるためには必要な場合もある」
「うちは、そんな事はしない。積み荷の略奪はするけどな」
「そうかい、ここら辺で人さらいを多くやってる集団はあるかな?」
「恐らくジトの所だろう、あいつは享楽的だからな。幻覚草の転売もやっているらしい」
その後、ジトの住処を教えてもらった。
聖騎士時代は、ゼラと並んで二番手を張っていたほどの実力者だそうだ。
人数はおそらく二十人ほどとの事。
二日以内に、村に来てくれると約束を取り付けた。
帰り際に、アルス少年を拾ってくる。
少年は、今にも門番を殺そうとしていたので、何とか引き留めた。
アルス少年に、ジトの事を話したら、今すぐにでも行きそうになっていたので、一端冷静にさせた。
――翌日夜、ジトの住処
ゼラのアジトに比べると小さいが、かなり金を掛けたつくりであり、門番も良い恰好をしている。裏には、幻
覚草を畑で栽培しているようだ。
アルス少年と突入する。
双頭の剣を光り輝かせて、魔導具の素材である【生命の魔石】を集めるために、どんどん切り殺していった。
ジトの部屋は、幻覚草で、すでに快楽のみを求める女たちに囲まれた張本人がいた。
アルス少年は、我を忘れて勝負を挑み、危うく殺されかけていたが、最終的に【氷槍】で心臓を貫き絶命させた。奴が、事の最中で裸だったから勝てたものの、鎧を着ていたら、アルス少年のほうがやられていただろ。女たちは解放したが、のたれ死ぬか、魔獣に食われて死ぬか、娼婦として生きるか。
あまり、選択しの多い人生にはならなそうである。
別の部屋からは強奪品も見つかったが、特に手は付けなかった。
アルス少年は、仇をうった後、泣いていた。
復讐は何も生まないというのは、綺麗ごとだ。
喜びも力になるが、憎しみだって人の力になるもんだ。
当然悲しみも。
彼のその涙は、終止符になる。
そして、泣き止んだ後に、彼はまた一つ成長していることだろう。
なろうコンテストみたいなのがあるらしい。感想もらったり、イラストもらったり、書籍化されたりするらしい。ちょっと応募してみるわ。端にも棒にも触れないと思うが。。。。




