寄り道とシバーシンと百万書架・参
――シバーシン学園都市・門前
都市丸ごとが学園という作りになっているらしく、門前だけでは全体像は全く見えない状態である。
シバーシンの警備は厚く、学園の生徒以外は、なかなか門前を通るのは至難の技であるが、モーガスの王鬼からの紹介状があるので、問題なく門を通過できた。
王鬼に、あの後、シバーシンに行く旨を伝えたところ、警備の事や紹介状を書いてくれた。
町並みは、レンガ造りの建物がならび、魔導灯が一定感覚て配置され、緑も豊かである。
都市にはいると、まずは商業地区から始まる。
学園都市ならではの文具店や書店、ゲームセンターの様な娯楽施設などが立ち並び、中心街に近づくにつれ、住居地区、飲食店街など、多彩に雰囲気が変わってくる。
店員は、学生が多く、中には学生時代に独立して企業するものもいるそうだ。
学園は、魔術についての研究から、経済、政治、各国法律、文学、美術、音楽等の幅広い分野を学ぶことができる。
それぞれは、カリキュラム制になっていて、自分自身であったものを選考していく。
人気の分野はやはり魔術であり、優秀な者は、各国高官を目指す。
ブーツで石畳の道をコツンコツンと軽快に進んでいく。
目的地は既に決まっている。
程なく学園の門前までたどり着いたら、再度招待状を見せて、シバーシンとのアポイントを確認。少し待たされたが、学園内の学長室へ案内された。
案内役としてスィという、二十代前半の学園を卒業したばかりの女性が学長室へつれていってくれた。金色の髪に、細身のローブ、眼鏡をかけており知的な感じである。
目の前には、深淵の魔女と言われている学園長シバーシンがいる。
まんま魔女の様な黒のローブを着ており、髪はくすんだ金色で青い目をしている。
四十代中盤というのに、肌にハリがあり、美魔女という意味わからない日本語があるが、そのまんまの表現で間違いはなかった。
「あなたが、王鬼の知り合いなの?」
「そうだが」
「それで、ここには、どんなご用でこられたのかしら?」
「ここには、百万書架と言われる図書館があると聞いてるが、そこで魔術回路についての資料を読んでみたいと思ってるのだが」
「なるほど、まあいいわ。ただ、単にそれだけでは無く、この学園にとって有益な事もしてもらうわよ」
「といいますと?」
「そうねぇ。この学園都市は、暗黒大陸にほど近く、たまに魔獣が迷い込んでくるのよ。年に何度か討伐するんだけど、たまに特定危険種が出る場合があるの。それを、うちの生徒会と一緒に討伐していただければいいわ。それと、スィの講義の手伝いをしてくれないかしら」
「生徒の御守をしてほしいということかい?」
「御守されるのは、どちらかしら?」
「成程、ずいぶん生徒を信頼しているようだね」
「もちろん、私の生徒だもの」
「わかったよ。それでは、図書館に程近い部屋に泊まらせてもらうとありがたいのだが」
「分かったわ。ご用意するわ」
その後、学園都市での生活は、基本的にはすべて学生が決めているので、それを順守してもらうようにと注意事項を確認して、図書館に近い寮の一室を用意してくれるとし鍵を渡してくれた。後で、部屋はスィに案内してもらうことにして、都市の中をぶらつくのであった。
さすがに、飲食街は学生価格であり、大盛無料など良心的なサービスが満載だった。
少しこじゃれた喫茶店の様なレストランに入店して、窓際の席に座る。
日が陰り始めたおり、少しずつ外はせわしなくなっていた。
骨付きの牛肉に、新鮮な野菜、馬鈴薯と人参、玉ねぎ、キノコの入ったコンソメ風味のスープに、黒っぽいパンを貪りながら、スィの事務仕事が終わるであろう時間までの暇つぶしをすることにした。
食べ終わり、食後の紅茶を啜りながら、近くの書店で購入した『精霊王と七人の勇者』という小説を読んでいると、紅茶を下げにきたウエイトレスが声を掛けてきた。
「あんた、見ない顔だね。シバーシンは初めてか?」
「そうだけど、どうしたんだい」
「いや、何でもない。新しい先生が来るって噂があったから、あんたじゃないのかと思ってね」
「どちらかというと、この歳で勉強をやり直さなければいけない方だから、人に教えることはできないさ」
「そうかい。私は、リザ。もし同じ講義になったらよろしく頼むわ。まあ、あたしは大概講義をさぼってここで働いているけどな。悪かったな邪魔して」
そういって、紅茶をもう一杯サービスしてくれた。
「そうかい。だったら、また会いにくるよ。ここは心地いいしな」
何となく言っただけだが、リザは少し赤くなる。
「おっ、おう」
暫くして、本も読み終わった頃には、すっかり夜景となっており、時間的にもスィに会いに行かなければならない。
教授個人に与えられる部屋があり、そちらにお邪魔する。
中には、スィ一人しかおらず、僕が入室するなり、作業がちょうど終わったらしく、手早くそれを片づけたところであった。
眼鏡を外すと、その眼には、どこかシバーシンの様な妖艶さを内包しているように見えた。
「お待たせしてしまったようで、申し訳ございません」
「かしこまった言い方はやめないかい?僕の方が生徒なのだから」
「私は、もともとこういうしゃべり方なので、なかなか直すのは難しくいですが、そのご要望であれば、善処いたします」
「いいや、無理にとは言わないさ」
「助かります。では、お部屋にご案内いたします」
学園の内部は、各講義塔に分かれており、魔術の講義を行う施設は、一番大きく作られている。そこから、図書館は近く。また、寮もその近くにあるという。
歩いて約十分ほどで、寮に着く。
部屋の中は、一人で住むなら十分な広さであり、キッチンは無いが、近くには飲食街があるので十分だ。
「それでは、明日早速講義がありますんので、午後一時に訓練塔でお待ちしております。何かございましたら、端の部屋に、わたくしは居りますので、いらしてください」
この寮に住んでいるのか。
「ありがとう。もし何かあったときは、頼らせてもらうよ」
スィは、嬉しそうに微笑み。
お互い別れの言葉を交わした。
ベットに横になると、すぐに眠気が襲ってくる。
目を瞑り夢の世界へ潜り込む。




