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寄り道とシバーシンと百万書架

男くさかったので、お口直し

――ノェウ近隣の森の中


久しぶりにノェウを見た気がする。

少し、島全体が浮遊を取り戻しているようだった。

いつもの様に、近隣の森へ入ると、そこは昼間なのに、少し薄暗かった。

特に方向を、気にする必要もなく、それがどこにあるのかは自然と分かった。

そこへ、たどり着くまでの間に、以前は魔物が襲ってきた事もあった。

しかし、今の僕を襲う魔物は少ない。

魔物化して、少なからず知能を身に着けた為、危険性を感じ取る能力が高まっているためだろう。


道なき道をすすみ、少し開けた所にでた。

木漏れ日が、周りより多く差し込んでおり、神秘的であった。


「まったく、あまり移動させていないとは不用心な」


そんなことを漏らしたが、実際は、分かりやすく留まってくれている事は、頭の中では理解している。


もう小慣れてしまった浮遊感を感じながら、慣れとは怖いなと心の中で思う。

当初は、酷い目まいを感じていたが、今は『こういうものだ』と考えるようになった。


浮遊感が収まり、周りの景色が、森から星が瞬く宇宙空間となる。

いつ見ても綺麗だ。

正面のドアに近づくと、こちらの侵入を感じたのか、メイド服を着た美しい女性ナーセットが現れる。


「お久しぶりでございます」


「やあ、元気だったかい?」


「寂しゅうございました」


この空間の主には聞こえない吐息のような声で言われたものだから、ものすごく色気をかんじた。


「そうかい」


彼女は、この空間の主が作ったホムンクルス。

自分自身を、まがい物というが、感情はあり、その考え方自体も、彼女自身から生み出されており、普通の人族と変わりはない。


着ていたローブを脱ぐと、自然な手つきで彼女は、綺麗に整える。

それを、横目で確認し、感心していると、奥からこの空間の主が現れる。


自称頼りになるお姉さま、クンヘルである。

少し、目には隈ができており、何かに夢中になっていたのだろう。

お気に入りのホットパンツにキャミソールというラフな服装であった。

寝癖まじりの白銀の髪に、首筋と腕、足に純白の鱗をはやしている。

彼女は、白竜とインテリジェンスの混血。

白竜は、知能が高く、魔獣の王である竜の中でも比較的平和的で、人族になじみやすい。


そんな彼女が、開口一番にこんなことを言ってくるのだった。


「誰だい君はっ!!」


――クンヘルの遺跡


「もう、驚かせないでくれたまえ」


「まあ、約一ヶ月で八年経過してしまっているからね。容姿も少しは大人びたかもね」


「ふっふぅん。ようやくお姉さんに近づけたようだね」


「そうだね。これからも頼むよ」


「しょうがないなぁ」


少しおだてると、すぐ調子に乗るところは、相も変わらず子供である。

まあ、子供らしからぬ身体が、反って強調されているのだが。


クンヘルは、僕の姿を見ると、安心したのかまた元のソファーへ戻るのだった。

クンヘルが、迎えに顔を出すことは今までなく、今回は、相当心配していたのだろう。

ポチポチと、ゲームを再開している。

そんな、彼女がいじらしく、少し悪戯をしたくなってきた。


「クンヘル何をやっているんだい?」


「何でもないよ」


小さな携帯ゲーム機をいじっているようだ、赤ひげの土管工が、縦横無尽に駆け回る人気作の、ステージデザインをしているようだ。


「ちょっと見せてみなよ」

ソファーに座り、少しクンヘルへ体を乗り出す。


「後で、君が苦戦する姿を見て、私が楽しむんだからダメ!」

彼女は、少し身をそらす。


「じゃあ、致しかたないかー」

少し、クンヘルと距離をおく。


彼女は、また自分の楽な姿勢で、ステージ作成をしていた。

程なくして、完成したようで、意地悪な笑顔をこちらに向けてくる。


「さあ、できたよ。これをクリアしてみせたまえ」


悪戯好きな彼女の事だ、相当な難易度のステージだろうと思いながら、こちらも意地悪を開始する。


「本当かい?どれどれ」

そう言いながら、おもむろに、彼女を背中から抱きしめる体制で、携帯ゲーム機を彼女から奪いとる。


「なっ!」

白くて絹の様な肌が、赤みを帯びてきている。


「はっ!ほっ!なかなか難しいな」

ワザと彼女の耳元で、声をだす。声変わりを完全に終えた低い大人の声で。

声を出すたび、彼女の体はビクンと小刻みに跳ねる。

彼女は、何とか声は漏らさないように口を閉じていた。


「うんっ!うっ!」


鬼畜な仕様のステージ(既に五回以上赤ひげが、酸欠状態の青冷めた顔になっている)を、半分以上攻略して、終盤に差し掛かった事には、クンヘルは、我慢できず声を漏らしていく。


ゴールにジャンプで着地する際に、最後の一押しをする。

彼女の耳に向かい、低い大人の男の魅力全開で、

「これで、最後だ」

とつぶやきゴールのバーをきる。


クンヘルは、一度体を反らし、

「メ、メスになっちゃう!」

と訳の分からない事を叫び、体を弛緩させて、目は虚空を覗き、髪がべたつくほどの汗が体から噴き出していた。


やりすぎてしまった。

ナーセットからは、非難の目で見られる。


その後、意識を取り戻したクンヘルに、小一時間嫌味を言われたのは言うまでもない。

悪戯する子は、大概悪戯にされることには弱いの法則を実感するのであった。

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