寄り道とモーガス寺院と修行編
修行良い響きだ。昔かめはめ波を打つために修行ごっこをした記憶があるなぁ
――モーガス寺院
門前に立つとその寺院の大きさが、とてつもない大きさだと分かる。
門徒が数人門前に立っていた。
入門を願いに意を決して話しかけてみた。
「あの、入門を願いにきました」
「どれどれ、俺たちが入門試験をしてやるよ」
「そうだね兄弟」
こいつら本当の兄弟じゃなくても兄弟っていうんだね。
だからラバーハキアでもフォウとファウは兄弟と呼んでいたのか。
「お願いします」
そして、瞬殺だった。
ボコボコに殴られて、門前に捨てられた。
「だめだなこりゃ」
「すぐ壊れちまったよ」
また明日も挑戦する為に今日は戦略的撤退をしよう。
フラフラになりながら、近くの宿屋を探す。
しかし、近くの町には宿屋もなく、野宿する事にした。
翌朝も、門徒に挑みに行くが、また瞬殺される。
一週間ほど経った頃には、門徒の攻撃を回避する事もでき、瞬殺にはならず数打の打撃を加える事ができるようになった。
「なかなか壊れないガキだな」
「入門試験なんてのは無いんだよ」
「お前はただ俺たちの打たれ砂になってりゃいいんだよ」
殴られあまりうまく声がでない。
「ど、どうか……住職に……会わせてください」
ゴスッ!
「ぐふぁ」
腹に蹴りが入り、飛ばされた。
意識が遠のく、門徒はニヤけながらその様をみている。
意識を保ち倒れそうな足をこらえて、門前を去る。
意識は相変わらず朦朧としている。
門徒に馬鹿にされたことが悔しいのではない。
せっかくここまできて、何も得られずに、ただ帰るのが悔しいんだ。
カッコ悪いな。
このまま、ノェウに帰るわけにはいかないなと思いながら、山を下山している途中で、
先ほど負傷により、体のバランスを崩してしまい。そのまま、下に転落してしまった。
意識が戻った時には、水の音が聞こえる静かな場所だった。
もう少し休もうと目をつむり、全身の力を抜いた。
風は心地よく肌をなで、傷ついた体を労わってくれる。
さて明日は、殴り込みにでも行ってやろうかなと考えていると、老人が水面を眺めていた。
ふいに、その老人が右腕を上げる。
気合と共に、その腕を振り下ろす。
「破っ!」
水面は割れ、地面が露出する。
老人は悠々と、地面に残った魚を素手で捕まえ、また川岸に戻ると、水は元の流れを取り戻す。
常軌を逸した芸当に、昔漫画で見た仙人のイメージが重なる。
この人なら、何か教えてくれるかもしれないと考え。
体の回復を待ってから、追いかける事にした。
老人は気づいていない様子で、魚を焼いて食べている。
草むらに隠れながら、その様子を見ていると、こちらもお腹が減ってきてしまう。
「お主も食うか?」
急に声を掛けられてしまい、警戒する。
自分に言った言葉なのか、それとも他の誰かなのか、判断がつかず、すぐには反応できなかった。
「その草むらに隠れておるお主じゃよ」
自分の事だと、ようやく理解して、すごすごと草むらから出ていくとこにした。
「それ、そこに座りなさい」
「申し訳ない、僕はレオナールという者だ」
「そうか、儂はこの界隈で暮らす帝鬼という、老いぼれじゃ」
「先ほどの技は何というものでしょう?」
「技?おお、水面を割った手刀の事かのう?技でも何でもないわい」
何という魚なのか、不明であるが、たんぱくな身であまり味はしない。
しかし、空腹感を和らげてくれる。
「しかし、何か特殊な技能が無ければ、あのような事はできない訳で」
「何、ただ、流れに従ったのみじゃ」
「流れをとらえる?」
「万物は、常に変化し続けておる。その変化すなわち流れを捉え、その流れに沿い力を加えれば良いだけじゃ」
「僕にもできるでしょうか?」
「誰でもできるよ」
「僕にその捉え方をご教授ください」
「儂など、人に教える程の者ではないよ。モーガス寺院に入門するほうが良いぞ」
「入門はできませんでした。才が無いのでしょう」
「ほうほう、誰がお主の才を見極められよう。ところで、主はなぜ強くなりたいのじゃ?」
「そうですね……自らの為です」
「ほーほっほほ。欲望に忠実ではないか」
「守りたいものがあります。ただ、それは守られるつもりもないでしょうから、自己満足である事は分かっています」
「なるほど、それで己の為か」
「はい」
「お主の求める強さを得られるかわ分からぬが、モーガス寺院の門番を倒す力は与えてやれるかのう」
「お老人?」
「ほっほほ。着いてきなさい」
その老人は、そう言うとモーガス寺院の反対側に向けて歩き出す。
状況を上手く呑み込めなかったが、着いていくことにした。
先ほどの川から、山奥に入り、ちょうどモーガス寺院を見下ろす崖の上に、掘建て小屋があった。
老人は、迷うことなくその中に入っていく。
中は、雑魚寝ができるスペースと、料理を作る竈があるのみ。
老人は余った魚を開きにし、塩をまぶして、外に天日干しする。
「待たせたのう。それでは、お主の実力を見せてもらおうかのう」
外に促され、掘建て小屋より更に山の中に進む。
緑が生い茂り、モーガス寺院も見えない山奥。
しめ縄で封印された岩石で蓋の去れた洞窟がある。
老人はその大きな岩石を、難なくずらし、洞窟へと促す。
その洞窟に、侵入した瞬間、洞窟からは想像もつかない広さの部屋が現れた。
「この洞窟は、『百日送りの間』へつながっておる。この空間での百日は、外の一日に相当するのじゃ」
「長時間の修行をしても、外ではその百分の一しか時間がたっていないということですね」
「そうじゃ、お主が奴らに勝つには、ここで修練を積むしかあるまい。奴らとてそれなりの修練を積んで居るから強いのじゃ。追いつく為には、時間を掛けなければなるまい」
「分かりました」
「ちなみに、この空間では当然歳をとっていくから、出た時にはお主も老人になっている事もあろう」
「老師は、寿命を使い果たしませんか?」
「辛辣な弟子じゃな。儂は大丈夫じゃ。生涯現役じゃ」
どっかの書籍のタイトルのようなことを言い出す。
本当に、ぽっくりいかないでほしいものだ。
「お主は、バンパイア種であるからに、年齢経過はあまり気に病む必要も無かろう」
バンパイア種は、青年期から身体的な老化は、死を迎える瞬間まで止まる。
一つは、異性を誘うため、一般的に魅力的と思える年齢で、老化は抑えられる。
吸血行為をする上での措置なのだろう。
「それでは、この儂と勝負をしてもらおうか」
そういった途端、帝鬼の正拳突きが飛んでくる。
その流れるような動きを回避する事はできず。
もろに、その攻撃を受けてしまう。
体が、後ろに十人分くらい飛ばされる。
悶絶して、息もできない状態になる。
「あれを捉えられないか。魔力を解放してもよいぞ」
「ぐっ、はぁはぁ。魔力を操作するには魔導具が無ければできません」
「バンパイア種なのに魔力制御が不得意とな」
「恥ずかしながら」
「ほっほほ、それで合点がいったわい。お主、バンパイアと鬼が混ざっているな」
「自分では分かりかねますが」
「まあ良い、これがどうお主に影響するか興味深いものじゃ」
「?」
「では、儂に攻撃できるまで、掛かってきなさい」
「分かりました老師」
老師は、構えることもせず、ただ立っている。
何かそれにも意味があるのかもしれない。
しかし、その真意は読むことはできず。
ただ、立ち向かうしかない。
気合の掛け声とともに、全力で突進していく。
攻撃を当てれば良いということは、タックルで相手を羽交い絞めにしてから、
攻撃を加えても良いということになる。
目標は、ただの木ではないので、動いてしまうかもしれないが、鳥を素手でつかむわけではないので、組み伏せるのは容易であろうと考えた。
しかし、何度タックルをしても老師を捉える事ができなかった。
向こうは攻撃すらしてこない。
それなのに、かすりもしないのである。
何時間それを繰り返していたのであろう、空腹を感じ老師にたずねる。
「老師、お腹が空きました一旦休憩してからにしませんか?」
しかし、老師は即答してくる。
「ダメじゃ。儂に攻撃を加える事が出来れは、食事を用意してやろう。いずれにせよ、お主はこの部屋から出る事はできないのだから」
絶望にうちひしがれながら、方法はただ一つと考え、当たるまで何度も突進するのである。




