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露程も知らない幻想組曲  作者: 熱帯長草草原地帯
第十一章 大男と精霊
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改めて周囲を

 改めて周囲を確認してその異様さが目に入った。

 降り積もった雪は優しく大地を包むのではなくて、折れ曲がり倒された木々を浮き上がらせていた。

 どうしてこんな風になっているかは分からないけど三頭獅子(ケルベロス)の力かな?

 樹液や葉の潰れた香りもする。たぶん倒されてからそんなに時間が経って無い。見通しは良いけど倒れた木々に隠れようと思えば潜む事も簡単かな。

 倒れた木々の間から積雪を巻き上げウルフが飛び出して来た。一匹二匹と数を増やしながら群れの姿が現れて来る。影を纏っているかはこの距離じゃ分からない。

 身体強化をかけつつヒボラとヒダッカに声をかける。


「どっちの矢が良いと思う?」

「「烈火の(バーニング)波紋(リプル)」」

「了解」


 二人とも同じ矢を指定した、ヒボラが最初に作ってくれた矢だ。弓に烈火の(バーニング)波紋(リプル)をつがえて狙いを定める、効果範囲に群れが全て入る所。矢に魔力を込める。全身を使って弓を引き絞って………今だ!


 ビュンッッ


 上方に放物線を描きつつ狙い通りウルフに向かって飛んだ。


 ドゴオッッッン


 ウルフ達の先頭を通り越して着地した場所を中心に炎が広がっていく。定められた境界迄炎が辿り着くと中心へと寄せ返していく。閉じ込められた炎は激しく燃え盛り火柱が上がった。ウルフの群れはすっぽりと炎に包まれ見えなくなった。凄い威力だけど逃げ出して来るウルフも居ないとは限らない。いつでも矢に手が届くように構えつつ火柱を見る。


 ヒュンッ


 風切音に慌てて意識を向けるとヒダッカのアイスアローが放たれていた。


「ノアタ上だ!」

「了解!」


 一羽の鷲が急降下を始めている。狙いは(リベルト)様?その上にも鷲が集まって来て旋回していた。

 ヒダッカの放った矢が急降下してきた鷲を仕留めた。鷲はくるくると旋回しながら落下して来る。


「ヒボラ、ノアタの援護を頼む。俺はウルフの後始末だ。」

「了解」


 ヒダッカの指示で周りを気にせず空に集中する。残りの鷲が五羽逃げもせずこちらの隙を窺っているみたいだ。後ろを任せるヒボラに伝える。


「旋回の中心を通してシューティ(イング)(ブレイズ)を放って見る。」

「ああ、流れ弾は気にするな全力でやってみな!」

「うん。」


 かなりの高さ300メートルくらいの上空を飛んでいるけど僕なら届く。弓を限界まで引き絞り放つ!狙い通り一直線に昇って行く。

 鷲達は悠々と当たら無い矢を遣り過ごした。

 良かった、これで逃げられそうに無い。

 (シューティ)(イング)(ブレイズ)は上昇を続けパンッと音をたててその力を現す、焔が雫となって地面に向かって降り注いだ。

 突然の上空からの攻撃を鷲は避ける事が出来ずにバランスを崩し焔に焼かれ落下する。

 そしてこちらへも焔が降り注いで来た。


「ヒボラごめん!」

「心配すんな。トルネード!」


 ヒボラが風を操り上空の焔と鷲を絡め取っていく。風と火の相性は良くてボッと火炎の竜巻が生まれる。上空を赤く染める竜巻は、まるで炎の化身みたい。


「ヒボラあれ凄すぎない?」

「ああ…ああいう使い方も出来るな。はは…」


 竜巻は暫く上空で火炎を吐き続けてそのまま収束していった。


「なぁなんか魔法の威力高くないか?」

「僕も思ってた所。さっきの泉の水のお蔭かな?」

「そうかもな。さて、ヒダッカは……」


 先程ウルフが飛び出て来た方向へ視線を向けるとヒダッカがこちらへ歩いて戻ってきている。


「あっちも終わってるね。」

「そうだな。」


 泉の近くに控えていた峰司君クダナさんと二羽に合流する。


「娘よ中々やるではないか。」

「あ、えっとはい。ありがとうございます。」

「私は出番無しでしたね。ヒボラ作の二つの矢はどちらも試し射ち以上の出来ですね。」

「うん、まぁな。魔力が大量に練り上げられる分威力が凄いな。魔素も精霊の力も借りずにあの威力だったよな?」

「うん。借りる必要も感じなかった。ヒダッカも問題なかった?」


 僕達が話している間に合流したヒダッカの落ち着いた様子に不安は湧かなかったけど一応確認。


「ああ問題ない。黒い影を纏ってたかは分からずだ。」

「そっか。」

「あの、誰かこっちに来ます。」


 峰司君が指し示す方向に目をやるとこちらへ向かってくる人が居た。

 僕達が気付いたのが分かったのかこちらに手を振ってきた。手を振り返し待っていると兵士らしき三人とその他に二人の人物が揃って僕達の前にやって来た。


「我らは偵察部隊第八班です。リベルト様に合流する為に来ました。火柱が上がったときは心配しましたよ、どうやらご無事のようで何よりです。」


 えっとロブド国の兵士さんだよね?何で(リベルト)様の事知っているんだろう?

 ちょっと戸惑って誰も返事を出来無いでいたら兵士さんも困った様子で話しかけてきた。


「人違いでしたか?この辺りは一般人は立ち入り禁止なのですが。」

「いや、すまんちょっと驚いてな。どうしてここにいると分かったんだ?」

「ロブレシア様からの指示です。」


 兵士さんはヒダッカの返事にほっとした様子で答えてくれたけど僕達には誰の事か分からない。

 どういう事かと再度尋ねると事の経緯を説明してくれた。

 説明を聞いている途中でヒダッカの事を(リベルト)様と勘違いしていると気付いて皆で慌てて訂正をした。

 (リベルト)様が梟の姿だと分かると凄く驚かれた。

 他の大精霊は兵士も直接は見ていないけど人の姿をしているって。その事に僕達も驚いたけどお互い質問をぶつけ合いながら何とか現状の把握をした。


 僕達が槐国へ旅立った後で魚人族からは朝焼けの歌という闇の王(プルートー)の影を追い払う曲が有ると情報を得られた事。

 三大精霊が目を覚ました事。

 三国の力を合わせた対闇の王(プルートー)の影への作戦が練られ、既に動き出している事。

 そして作戦の要が(リベルト)様が連れてきた人物、峰司君だと言う事。


「俺達は三頭獅子(ケルベロス)を追いかければ良いんだな?」

「作戦本部へ報告をしますので暫しお待ちを。」


 連絡が終わるまで周囲を警戒をする。もう三頭獅子(ケルベロス)を追いかけるウルフや鷲は居ないのか特に襲われる様な事は無かった。


「お待たせしました。雪原にて迎え撃つ様にとの事です。必要な装備もそちらで準備させるとの事です。転移の魔方陣を用意しますので暫くお待ちください。」

「分かった。」


 ヒダッカが返事をしたけど(リベルト)様が転移の魔方陣を描けば直ぐに行けるんじゃないかなって思った。けど(リベルト)様は儂もちと準備が有るとか言ってた。

 泉の周りにクダナさんと一緒に魔方陣を描くみたい。この泉を守る為にかな?

 邪魔に成らないようにと遠巻きに見つつ(リベルト)様に聞きたい事が一杯浮かんできたけど我慢した。


「準備が整いました。もう出発しても宜しいでしょうか?」

「こちらも大丈夫です。」


 兵士さんにクダナさんが答えて僕達は急いで決戦の地、雪原へ向かう事になった。

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