雪に閉ざされたロブド
いつもお読み頂きありがとうございます。
6/7に最後の部分少し修正致しました。
雪に閉ざされたロブド国の奥深い森に人知れず醜悪な泉が湧きだしていた。
周辺の雪を黒く染め上げコポッコポッと湧き出すのはヌメヌメとした黒い液体。
光の差し込まない黒い泉の底では『影』が泥の中を蠢めいていた。
『影』はかつて闇の王と呼ばれていた。しかしすでに闇の王だった頃の記憶は霞み姿を保つ事も出来無い。ただ自分に何かやるべき事が有ったと意識の深くに刻まれているだけだ。
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巨人国が滅びへと向かっていた頃、王で在った闇の王は研究室の一角で魔法陣を前に焦燥した顔で立っていた。
目だけが爛々と光る姿は異様としか言えない。闇の王を知る人が見れば既に王の威厳もなく別人と見えただろう。
遠くから響く戦闘の凄まじい音や建物の崩れていく揺れにも気付いた様子は無い。
若き日の闇の王は幾つもの研究を成功させ天才の名を欲しいままに王へと登り詰めた。王と成ってからも己の研究を続け国を富み栄えさせた。しかし魔法工学にも限界が来た。栄華を誇った巨人国は恐るべき早さで衰退していった。
…………どこで道を間違えたのだろう。
この国はもう、終わりだ。
それならば私が。
新たな力を持って新しい国を興すしかない。
目の前に有る魔法陣は素晴らしい。人と精霊を合成し私は新たな力を得るのだ。
禁忌の魔法等とは戯言だ、この研究の成果が理解できない愚か者の言う事など何の意味もない。
気遣わしげに自分を見つめる者の顔を一瞬思い出す。
私に迷いはない。君もいつか私の正しさに感謝する時が来る…………
捕まえた色つきの精霊を手に魔法陣へ入っていく、新たに興す国はどの様な国にしようかと考えつつ。そして闇の王は高笑いをしながら意識を手放した。
しかし魔法陣の中で精霊を取り込んだ闇の王は自身の思惑とは違う異形の存在へと成り果てたのだ。死をもたらす闇の王の影へと姿を変えた。
触れるものの命を奪い巨人国と大陸を滅ぼし、闇の王の影は海へと彷徨い出た。
四百年の後、闇の王の影はシュタリアへと辿り着いてしまった。
シュタリアを襲った闇の王の影を人々が倒そうと魔法を放った時、剥がれる様に落ちた一片の『影』に人々は気付かなかった。
剥がれ落ちた『影』、闇の王は誰に気付かれる事もなく地中深くに沈んでいった。
傷付き力を失った闇の王は消滅することも出来ずに牢獄の様な地底で唯々存在していた。
光の届かぬ深い沈黙の中で永き時は過ぎ去って行く。
半年程前のある日、闇の王の沈む深い地底に水脈が流れ込む。
水に押し上げられるように闇の王は地上へと再び現れたのだ。
朧気な意識に生まれたばかりの泉の精霊が見えた。当然の様にぱくりと精霊を飲み込んだ。
闇の王は溢れる力に歓喜する。
力があれば…
朧気な自我の中で自分にはやるべきことが有ったと思い出す。
成すべき事はしてきたはずだ、だが何故こんなにも苦しいのか。そのためには…そうだ…力が足りないのか。
力を!
闇の王は助ける事の出来なかった死を受け入れられなかった。誰の死だったのかも忘れてしまったというのに。力が足りないと言う思いだけが心を占める。
もっと力を!
泉に近付いてくる精霊を見つけては喰らって喰らって喰らって喰らって。甦った溢れる力に歓喜する。
もっともっと!力を!
歪んだ闇の王は何故自分が力を欲していたかも忘れ精霊を貪る影へと姿を変えてしまっていた。
黒い泉に近付いた動物を操り精霊の力を集めさせる。
闇の王は人知れず着実に力を付けてゆく。
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ロブド国も無策だった訳では無い、影を討伐するべく戦力が整えられた。しかし村を襲った後、姿を見せぬ影の未知の力に不安が募る。
フォス国では魚人族からもたらされた朝焼けの歌を人々の護りとするべく動き出していた。
プロフ国ではプログレヤの目覚めにより事態が大きく動き出していた。シュタリアを覆う結界を維持していたのは三大精霊だった。結界を解除することで三大精霊の残り二柱、フォス国のフォムンとロブド国のロブレシアも目覚めたのだ。
そして影を倒したナーダンを知るリベルトが見つかれば闇の王の影との戦いの鍵となる筈だった。
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精霊を食らった狼を取りこみ闇の王は遂に……三つの頭を持つ獅子へと変貌した。黒い巨体を泉から持ち上げる、四つ足を着け雪の上にザクッと立った。三つの頭を天に向かって伸ばし吠えた。
グルッ…ゴギュァウォオオオーン!!!!!!
力に餓えた三頭獅子は獲物を求めて走り出した。




