鶇村に入り
鶇村に入り家へと進む。沙葉ちゃんと二人でヒダッカさんを案内した時以上に村の人達の視線が痛い。
久しぶりの家に着いても近所の人が集まってとてもゆっくりフォス国の話をできる状態じゃなかった。
入れ替わり立ち替わり挨拶に来る人達を父さんと母さんで応対してくれた。
やっと近所の人に帰ってもらったらすっかり遅くなってた。手伝いに来てくれていた沙葉ちゃん家族も何時の間にか帰っていってしまった。沙葉ちゃんにお土産を渡すどころじゃなかったな。
「皆さんもうお休みになりますか?」
夕食を終わってお茶を飲んでいると母さんがそう言った。
久しぶりの母さんの手料理でつい食べ過ぎた。自分の家ですっかり気も抜けてけっこう眠い。そんなだったからかな?
ヒダッカさん達がオレを見る。もちろん母さんはフォス国の言葉で話しているので意味を聞きたい訳じゃない。
今、話をするのか?って事だと思う。
うんと皆にうなずいた。
「父さんと母さんに話を聞いてもらいたいんだけど良いかな?」
「ああ。」
「お願いするわ。」
思い出しながら旅の最初から話し始めた。父さんと母さんに向かってこんなに喋った事は無かったかも知れない。
槐のうろで一晩過ごし無事にフォス国へ辿り着いたこと。
魔法を習ったこと、依頼を受けたこと、ベアーの討伐の話しの時は母さんが顔を青褪めさせていた。なんかごめん。
精霊視の事、精霊の守りを貰ったこと、そして影の事…
ノアタさんやクダナさんも所々で助けてくれた。途中上手く話せない所も有ったと思う。けど二人とも真剣に耳を傾けてくれた。
話し終わってから精霊の守りを胸の革袋から出した。
青紫にゆらゆらと光る精霊の守りに一瞬見とれてしまった。
「えっと、これがオレの精霊の守りだよ。この革袋はスコットさんとロイ君が造ってくれたんだよ。」
「まぁ。」
「よくやったな峰司。」
父さんは精霊の守りを眺めた後、オレに手を差し出した。父さんに握手を求められた事は初めてだ。
驚いたけど手を握り返した。父さんの手は思ったより小さかったけど、とても力強かった。
気まずくなって席を立ち荷物の中からお土産を取り出した。
「これは討伐したベアーの肉だよ。スコットさんが薫製にしてくれたんだ。それとこれは母さんに、イェローツリーで染めた布だよ。」
「ありがとう峰司。約束通り買ってきてくれたのね。とても綺麗な黄色ね。」
イェローツリーは白い花で赤い実なのに種を使うと黄色に染まる。これがイェローツリーで染めた布って店員さんに教えて貰った時は驚いた。神殿の町でトラシ町の布を買うなんてって思ったけど良い記念になると思ったんだ。
「父さんにはこの絵皿を。」
「おお、これは神殿の絵かな?」
「うん、二つの塔が神殿の入り口なんだ。それでこういう船に乗ったんだ。この湖の真ん中に在る森の中が試練の泉になってて、精霊の守りが有るんだよ。」
「そうか、良いものを見れた、ありがとうな。どこかに飾っておこう。」
オレ達の話しが終わったら、それまで黙って聞いていたヒダッカさんが口を開いた。
「戻って来るのが遅くなって済まなかった。」
「いえいえ、無理矢理お願いしたのに無事に送り届けて頂いて感謝しか有りませんよ。」
「本当ですよ、こんなに健康そうになって。ヒダッカ様、それとヒボラ様ノアタ様クダナ様も大変お世話になりました。」
深々と頭を下げる父さんと母さんと一緒にオレも頭を下げる。
「峰司まで改まって……礼などいらんぞ。依頼をこなしただけだ。」
「俺は面白そうだから着いてきただけだしな。」
「僕もこんなに珍しい経験なんて出来無いからね。峰司君は可愛いし旅は楽しかったよ。影の件が無ければもっと楽しかったのに。」
「そうですね、早く問題を解決してゆっくり楽しみたいです。」
「そうだ、峰司。さっき見つけた手紙を峰和に見て貰ったらどうだ?」
「うん。父さんこれなんだけど……」
ナーダン様の手紙を取り出して手渡した。手紙に目を通してくれた後で母さんにも見せて頷いている。
「これは何と言うか読むのが申し訳無いような私信ですか……ナーダン様すみません。光の消えた精霊の守りの精霊がリベルト様、フォス国の大男がナーダン様、奥様がティノ様で無事に生まれたとしてホーテ様は男の子か?」
父さんはぶつぶつ呟いてた。何か気になる事が有るからと手記を見返す為に席を立った。ヒボラさんとクダナさんも一緒に調べたいと同じく席を立った。
夜も遅いし続きは明日にとノアタさんが言ったけど気になって眠れないからと三人は2階に上がっていってしまった。
それならと手記の事は任せてオレ達は先に休む事にした。
ノアタさんにオレの部屋を使って貰って、オレ達は1階の小上がりで寝ることにする。温泉も行く時間が無かった。ナーダン様の縁の地、そこが分からなくても、北の森にリベルト様がいると良いんだけど。森のどこら辺だったのか……目印の金木犀を見つけなくちゃ……明日の予定を考えながらも直ぐに眠ってしまった。




