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露程も知らない幻想組曲  作者: 熱帯長草草原地帯
第十章 金木犀の下で
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パッヴァの話に

 パッヴァの話に引き込まれていた面々は数百年前の海からこの場所に戻って来た様に感じた。部屋の寒さにか、話の恐ろしさにか解らないが皆がぶるりと身体を震わせた。


「パッヴァ様、貴重なお話をありがとうございます。」


 ハルノーが吐息の様な弱々しい声で礼を告げる。

 クファルがすっと立ちあがった。

 見るともなく皆が視線で後を追うと温かい飲み物を用意している様だった。

 手際よく用意され運ばれたお茶で身体が暖まる。

 頬に血色が戻って来たケットはパッヴァへ声を掛けた。


「そんな遥か昔の話が生き生きと伝わってるのは流石長命の種族じゃな。」


 ケットの言葉にぴくっと反応するパッヴァ。ポルヴォとビューユがケットに向かって小さく首を振って見せそれ以上言うなと合図を送る。女性に年齢の事を言うのは魚人族でも失礼に当たるようだ。

 話題を変えようとしたのか偶々なのかジェダンが質問をする。


「精霊を食べると言う言い伝えは無いのでしょうか?」

「精霊を食べる?そう言う話は聞いた事も無いですな。」


 ヴゥントゥが訝しそうに答えた。


「そうですか……隣国のロブド国に現れた影は精霊を食べたそうです。影を纏ったウルフの群れが村を襲いました。お伺いしたプルートーの影とは少し違う物なのでしょうか?

「なんとも答えようが有りませんな…」

「ええ、すみません……とは言えパッヴァ様のお話は大変興味深い。是非その歌をご教示頂け無いでしょうか?

 影が何処に居るかも分からず安全を確保出来ない現状で、大変心苦しいのですが……」


 深く頭を下げるジェダンとそれに続くハルノー。

 ヴューヴェ、パッヴァ、ポルヴォ、ビューユはヴントゥを見てどうするのかと視線で質問を投げ掛けた。


「勿論ご協力致しましょう。友人の困難を見過ごす事等出来ましょうか?」

「心強いお言葉ありがとうございます。私は早速ラクル神官を此方へ呼んで参ります。」


 儂も一緒に行こうとクファルがジェダンを連れて席を外す。二人を見送りケットがハルノーに聞いた。


「さて儂達はこれからどうするんじゃ?」

「王の指示を仰がねばなりませんが、私達に出来ることを探しましょう。もう少し詳しく影のお話を聞かせて下さい。」


 その後も話し合いは長く続いた。

 精霊を見捨て、大陸を捨て全ての民と逃げる、そんな事態を防ぐ為に。



 ………………………………………………………


 槐国に戻って来て直ぐにうろの周りを調べたけど魔法陣も魔法陣へ魔力を送る石も見付からなかった。

 少し遅くなっちゃったけどオレ達は昼食を食べ休息を取ることにした。

 初めて見る疲れきった顔のノアタさん、ヒダッカさん。魔力切れってけっこう辛いのに眠ってしまわないのは凄い。

 ヒボラさんとクダナさんは帰り方をどうするか意見を交換しあってる。

 精霊にお願いしたら良いかもと思った……でも変に魔法陣に力が加わるとまずいのかな?一晩待てば良いんだけど早く帰れるならその方が良いに決まってる。

 休んでいる二人と話し合っている二人を見てちょっと寂しい気持ちになる。

 気持ちを切り替えて横笛を取り出す。

 リンの曲を吹いて見よう。

 皆の邪魔に成らないように少し離れる。明るく日が差し込む場所に立った。

 構えて横笛に魔力を馴染ませる。呼吸に合わせて魔素を借りる。魔素の流れが整った所で音を出した。うん、もう違和感なく横笛を吹ける。


 リベルト様、何処に居るんですか?

 ナーダン様の子孫です。

 精霊の守り(フローライト)に戻ってきて下さい。


 そんな気持ちを乗せてリンの曲を吹いた。

 暫く繰り返し吹いていたらトンっと肩を叩かれた。

 振り返るとヒダッカさんだった。


「そろそろ行こうか。」

「あっはい。」


 けっこう長く吹き続けちゃってたかな?皆荷物を背負って出発出来る様だ。

 オレも直ぐに荷物を背負う。

 いきなり見付かるなんて分けないか。


「これからどうする?峰司(ホウジ)の家に行くの?」

「それが良いだろう?峰和(ミネカズ)(コズエ)に挨拶をした方が良い。」

「そうだなぁ、闇雲に探してもなぁ。」

峰司(ホウジ)はリベルト様のいそうな場所は思い付きませんか?」


 それは何となく考えていた場所が有る。


「えっと、ナーダン様の縁の在る場所を先ず探したら良いと思います。イェローツリーが在る場所に行って見たいです。あと、父さんに話を聞いて見たいです。オレよりもナーダン様について詳しいから。それと北の森に精霊がいっぱいいた場所が有って、今も居るかは分からないけど調べて見たいです。」

「そうか、それで何処が一番近いんだ?」

「イェローツリーが近いです。果樹園の少し上の方に有ります。」

「イェローツリーへ寄ってから家に帰るとすると日暮れに間に合うか?」

「はい。たぶん間に合うと思います。」

「よし、じゃぁ峰司(ホウジ)に着いて行くな!」

「宜しくお願いしますね。」


 皆を先導するのにちょっと緊張しつつ歩き出した。こちらに戻って直ぐは暖かさにホッとしたけど動くと暑くて汗が出てきた。水分を取りつつ森を抜けた。

 薬草取りで見慣れた場所を横目で見つつ進む。ヒダッカさんに初めて有った場所だ。


「ここで初めて峰司(ホウジ)と会ったんだよな?」

「うん。剣を持った人なんて見たこと無かったから正直怖かったよ。」

「警戒されてるなって思ったよ。沙葉(サワ)の前に立ったのは子供のくせに男前だったぞ?」

「ヒダッカ、子供のくせにって……」

「随分小さく見えたからな?10歳くらいなのかと思ったんだよ。」

「10歳?小柄とは言え流石に失礼ですよ?」

峰司(ホウジ)は最初もっと背が小さかったんだよ。魔法で背が伸びたんだ。」

「何ですかそれは?魔法で背が伸びるとは聞いた事も無いですね?」


 10歳は酷いと思った、オレ背が小さいのけっこう気にしてたんだ。けど、オレもヒダッカさんの事おじさんって言った気がする……

 そんな話をしている間に果樹園が見えてきた。木の間に作業している人も見える。

 沙葉ちゃんのお父さんとかも居るかも知れない。知らない人こんなに連れて帰ったら目立つよなぁ。どう説明したら良いか考えながら果樹園への坂道を登って行った。

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