木々の隙間から
木々の隙間から入り込み槐のうろの前に立った。ウルフに襲われたあの日、良く見付けたものだと改めて不思議に思う。
五人で並んで槐を見上げる。
「やっと着きましたか。」
「これが槐?本当に見たこと無い木だね。」
「そうだな。ヒボラとクダナはどうだ?他所で見たこと有るか?」
「私は見たこと無いですね。」
「俺も見たこと無いぞ。それにしても上手く隠して有るな。こんな所全然気付かなかった。」
「そうか。」
早速荷物を下ろしながらクダナが表情を引き締める。
「ヒボラ、日が高いうちに魔法陣を探しましょうか。」
「ああ、専門家には敵わないと思うがな。皆も変わった物が無いか周囲を調べてくれ。」
「「「了解!」」」
俺達も荷物を下ろし手分けして調べる。クダナは槐の木を調べる様だ。ヒボラはうろの中。
俺は周りの木々を見て回る。うろを囲む木を一本づつ調べて見る。戦争の前と言うと400年前くらいなのか?そんなに古い木だとは思えない。
峰司とノアタは地面を見て回っている。
「ちょっとヒダッカ来てくれないか?」
「なんか見つかったのか?」
うろの中から身体を半分程覗かせてヒボラが呼んでいる。
「この行灯って知ってるか?」
「ああ、それは峰司の家から持ってきた物だ。」
「そうか。変わった形だから怪しいと思ったのにな。」
ヒボラが行灯を戻そうとして手間取っているので俺もうろに入り手伝う。
うん?なんか引っ掛かってるな。
一旦行灯をヒボラに預け木の出っぱりに腕を伸ばして探る。
指先が細い物に触れた。探っていると動いたので指先を使って手繰り寄せる。
筒状に丸められた羊皮紙だった。
「おい、これ……」
「ああ。」
見るからに古そうな羊皮紙に俺とヒボラは顔を見合わせる。
俺達はうろを出て皆に作業を止めて集まって貰う。
「何か分かりましたか?」
「これを見てくれ。」
「何だろう?」
「広げられる?」
「私がやりましょう。」
クダナに羊皮紙を渡し慎重に広げる手元を見つめる。
「手紙ですね。読み上げます。」
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愛するティノへ
この手紙を書いている事を怒らないでくれ。
後で読み返して一緒に笑おう。
身重の君を残して影と戦う事を許してくれた事に感謝する。
子供が産まれた後で影に襲われたらと思うとどうしても行かずにはいられない。
リベルトと俺の力が有れば何とかなるさ。
俺達は最高の相棒だからな。
他の五人とはここで別れる、ラッセルは最後まで着いてくると言い張っていたが……君と子供を守ってくれるよう頼んだら納得してくれた。ラッセルなら子育ての経験も有るし安心して甘えられるだろう?この先はリベルトと二人だけで行く。
心配しなくても良い、俺だけなら影に触れても大丈夫だから。
もしも……戻ってこなかったら子供の名前はホーテと名付けたい。
凄く悩んだから気に入ってくれると良いんだが。
最後になったが必ず戻ってくる。
元気な子供を産んでくれ。
ナーダン
……………………………………………………
「すごい。」
「これ峰司の先祖の手紙じゃないか。やっぱり影と戦ったんだな。」
「うん……」
「リベルトと二人ってもう一人槐国に行ったのか?」
「~俺だけなら影に触れても~って書かれてますから精霊の名前がリベルト様なのでは?」
「ああ。そうだなそう読めるか。」
「何故触れても大丈夫なのでしょうかね?」
「それについては分からないな後で考えて見よう。峰司、預かって居てくれるか?」
「えっはい。ありがとうございます。」
ナーダンの子孫の峰司が持っているのが相応しいだろう。クダナが峰司に羊皮紙を渡した。
峰司は貴重な手紙を慎重に受け取った。
「他に何か見つかったか?」
「肝心の魔法陣は槐の木の下か中に隠れされてしまっているようです。」
「僕達なんか変わった石を見付けたよ。枯れ葉が不自然に盛り上がってて峰司君が気付いたんだ。」
「見せてください。」
皆で変わった石と言うのを見に行く。
「おお!当たりだな。」
「ええそうですね。」
ヒボラとクダナが木の葉や土を掻き分け意見を交わしている。
表面を拭き取り石を見ると五角形に彫られているようだ。内側には複雑な記号が書かれている。大きさは直径1メートル程だ。
詳しい説明は端折るが、と前置きをされて二人がどういう物か教えてくれた。これは魔法陣へ魔力を注ぐ装置らしい。
影を魔法陣へ追い立て槐国に飛ばしたんじゃ無いかと言うことだ。
うろで一晩泊まると言うのは本来の使い方では無かったんじゃないかと言うのが二人の意見だ。そして今も使えるのか、皆で石へ魔力を注ぐ事になった。
「では私の指示に従ってください。」
俺達は首肯く。
「先ずそれぞれの位置へ着いてください。」
五角形の石には火、水、風、土、木の印が有った。そこに魔力を注いでいく。
石を囲む様に印の前に立つ。それぞれ得意な魔力を担当する。火はノアタ水は勿論俺だ。
風は峰司、土はヒボラ、木はクダナだ。
「では、お願いします。」
全員の魔力を同じくらい注がなくてはならない。俺とノアタの魔力量が心配だ。
峰司とヒボラは問題なく魔力を注げるだろう。クダナも木の魔力はそこそこ有ると言っていた。
魔力を練りあげ水の印に手を翳すと吸い上げられているような感覚が有る。
水の印が鮮やかに輝き出す。
驚愕の思いで見つめる。
他の印も輝き出しそこから中心に描かれた円へと光の線が延びて行く。
「くっ」
まずい、魔力が切れそうだ。延びていた線が止まってしまった。ここまで皆が注いだ魔力が無駄になってしまう。
集中して身体の隅々から魔力を掻き集める。それでも足りないか……
「ヒダッカさん!」
諦めかけた俺の手に峰司の左手が重ねられた。
驚いたが魔力が満ちていくのを感じる。
受け取った魔力を練り上げそのまま石へ注いだ。止まっていた光の線が延びて中心の円に届く。
円が強い光を放って空へ光が昇った。
「「おおっ。」」
驚きの声がクダナとヒボラから上がる。光の帯がフッと消えた。
「成功したの?」
ノアタの顔には疲れと不安が見えた。俺も疲れた顔をしているだろう。
「多分な。見てくれ。」
ヒボラの視線は石へ向かっていた。
中心の円へと延びる線が消えていた。しかし五つの印は淡く光を放っていた。
「確認しましょう。」
クダナを先頭にうろを見に行く。
外から見た様子では変わった所は無い様に思えた。下からうろの中を見上げた峰司が声をあげる。
「行灯が無くなってるよ!」
「本当ですね。成功でしょう。」
「よし、急いで通り抜けるぞ。」
荷物を背負い準備が出来たものから入って行く。
先ずノアタがうろに入ると数秒で姿が消えた。
「おおっ!よし次は俺が行くな!」
ヒボラがうろに入るとこちらへ振り返り何だか良く分からないポーズを決めた。
そのまま姿が消えたので残った三人で苦笑を交わす。
クダナが最後に残ると言うことだったので峰司に先を譲り俺が続く。
「じゃぁ向こうで待ってるぞ。」
「はい。」
クダナが消えたと思うとうろを出る峰司の後ろ姿が目に飛び込んできた。直ぐに俺もうろから出る。暖かで柔らかい空気にほっとする。
「着いたな。」
「やった。やった、やったー!」
「……煩いな。」
「森の様子も大分違うね。ここが槐国なんでしょう?すごいなぁ。」
「無事に来れて良かったよ。」
「嬉しいけど疲れたね。」
「ああ。」
騒いでいるヒボラとそれに付き合っている峰司を放っておいてノアタと話す。
ノアタも嬉しそうだ。うろを振り返りクダナが出てくるのを二人で待つ。
「遅いね?」
「そうだな。」
しばらく待っているとクダナがフッと現れた。
「遅かったな?」
「心配かけちゃいましたか?すみません。一応魔法陣を閉じた方が良いと思いまして少し作業をしてました。 」
「うん?そうかありがとうな。」
「そこまで考えて行動するなんて流石だね。」
「いえいえ、それではこちら側の魔法陣を調べますね。」
「え?あ、うん。」
着いて早々研究者の顔を浮かべるクダナにノアタが若干引きつった笑顔を浮かべた。はしゃいでいるヒボラを呼びうろの回りを改めて皆で調べた。
いつもお読み頂きありがとうございます。
すみません投稿日入力ミスしておりました。
今日は少し長めです。
お楽しみ頂ければと思います。
本当にすみません人( ̄ω ̄;)




