ロブド国は
ロブド国は国土のほぼ中央に火山が在った。精霊の神殿はその火山の麓に位置する。神殿からもたらされる鉱物を求めて鍛冶師の楽園とも言える町が有る。
その町の一画にアーヴェ、ガンテと言う二人の男が工房を構えていた。
通りに面して武器や防具の販売を行う店舗。その奥が工房というこの町にはよく有る造りだ。
店の奥からは様々な音が響いてくる。
ガァンッガンッ、グゥオー、コンカン、キンッ、シュッシャッ。
店を訪れた者が見学を希望すれば弟子達の誰かが作業をしている様子を説明しながら案内してくれる。
ここにもうすぐ王の使者が訪れる。
アーヴェは剣を造る職人を目指すべく親方の元で腕を磨いた。
そこに防具職人を目指すガンテが同時期に弟子となったことが二人に取って幸いだった。
最強の武器と言えば全てを破壊する強さを持つ事が条件となるだろう。
では最強の防具とは何か。
それは勝利条件によって変わる。
対人、対軍、対動物、対自然そのいずれにも勝てる防具。
そんなものは存在しないと言うのが二人の考え着いた答えだった。
そこで防備を固める性能も合わせた最強の武器を造ると発想を転換させた。
要は相手を倒せば攻撃されないと言うことだ。
鍛冶師にあるまじき暴論と呆れられた事も有る。
遠くない未来、武器だけが自律して攻撃を行える様になるだろうと二人は考えていた。しかし口に出すことは無い、流石にそこまでの技術は今は無いと悟っていたから。
二人には現在出来無い事が諦める理由にはならない。いつか誰かが完成させるならば俺達にもチャンスは有るはずだと。
二人は色々な素材、技術を取り入れ切磋琢磨した。
武器の性能を十全に発揮できるのは自分達だと武道大会に出て優勝したことも有る。
工房に隠って研究を続ける者の多い鍛冶師の中では異端児。
ここで武道大会を主宰した王の知己を得る事になった。
先代の崩御により20代で王となった現王。同年代のアーヴェとガンテ、二人の若者が夢を語る姿は好ましく映った様だった。
アーヴェとガンテは武道大会で優勝したのを切っ掛けに二人で工房を開いた。更なる研究を加速させるべく希望に溢れた独立だった。
開かれた工房として共同研究を申し出る者もいる。弟子になりたいと希望する者も多く、独立当初より大所帯の工房だった。
そんな二人のもとに珍しい鉱石が届くことは最早必然だったのかもしれない。
その鉱石は異質だった。
融点が極端に高く従来の鍛冶技術ではナイフひとつ作ることも叶わない。
鉱山で見つけた者は気付かなかった様だが鍛冶師の二人には夢の鉱石だった。
一つは硬度。打ち合いに勝つには硬度が高い方が良い。そして併せ持つ粘度。どんなに優れた武器でも数合の打ち合いで割れてしまえば用を成さない。
硬さと粘りのバランスが大事なのだ。
そして特筆すべきは精霊の力との融和性。
不思議なことに精霊の力を利用して高温の火力を出す炉にこの鉱石を入れると熱が下がってしまう。
疑問に思った二人が調べたところ魔力を吸い込む性質に気付いた。
恐るべき事にどの属性の魔力も吸い込んでしまう、高き所から低き所へ水が流れるが如く。
二人は試行錯誤の末に様々な素材との配合で魔力を吸収し、また貯めた魔力を魔法として放出する事が出来る金属を造り出した。二人の工房では誰ともなく魔鉱と呼ぶようになった。
魔鉱の発見で至高の武具の製作が加速する。
一振りの剣。
それは白く輝くロングソード。
極限まで研ぎ澄まされた刃。
その攻撃力とは。
切った物の切断面を合わせると再び閉じてしまうほどの鋭利な切れ味。
大岩すら切り裂く事が出来、尚且つ刃こぼれもしない。
剣同士を交えれば相手の剣をまるで小枝の様に斬ってしまう。
更に剣の届かない場所へすら魔法で攻撃可能だった。
一揃いの鎧。
それは光を反射することの無い漆黒。剣よりも更に硬くなるよう素材の配合を代えたことによる魔鉱の色。
頭を全て包み込む兜
継ぎ目の無い胸当てと背当て。
可動部は鱗状に成型された魔鉱を編み込んで全身を覆っている。
その防御力とは。
魔法攻撃を受ければ魔力を吸い込んでかき消してしまう。そして取り込んだ魔力は籠手を通して剣へ送り込まれる。
斬る、突く、叩く、刺す等の直接攻撃も魔鉱の超硬度により傷付ける事すら叶わない。
正に至高の武具。英雄が使うに相応しい出来映え。満足げな二人の親方達を見て工房の弟子たちの中には遣り過ぎでは?と心の内で思った者もいた程だった。
しかし剣を握るのが人と言うのであれば、肉体の弱さを守るにはまだまだ研究が必要だった。
鎧に傷が付かずとも衝撃全てを吸収出来てはいない。
装備する者の生命を守るという意味では不完全だ。
そこがアーヴェとガンテには不満だった。そのための圧倒的な攻撃力なのだ、鎧はあくまでも剣へ魔力を届ける装置なのだった。




