クダナさんを塔に
「全くお前さん達は肝が座っとるの。」
クダナさんを塔に残し俺達はクファルさんの食堂で夕食をご馳走になることになった。奥の個室のスペースにエノールさんが案内してくれて、奧さんと二人で料理を運んで来てくれた。
「いや、ヒボラの独断だったぞ?」
「僕もなに言い出すんだよって、びっくりしちゃったよ。」
「オレも驚きました。」
「…まぁ良かっただろ?堂々と精霊の道を通れる事になったんだし。」
「有る意味予定通りだがな。」
「僕も鶇村へ行けるのは嬉しいけど責任重大だよ?心配だなぁ。」
先程迄の重苦しい雰囲気は無いものの、責任が有る仕事を受けてしまったのには変りない。ノアタと峰司が頭を抱えている。
「「はぁぁ……」」
「儂らも魚人族から情報が貰えるかも知れんじゃろ?お互いに頑張るしか無いな。」
「ノアタ、峰司、まぁなるようになる。それよりケット先生もクファルさんも魚人族の国へ行った何て凄いじゃないですか。」
「いやぁ喋りたかったんじゃが色々面倒が有るんじゃよ。まぁもうお前さん達に喋っても問題ないがな。」
「ああ、儂らの冒険を話したくてうずうずしとったよ。」
「そうか……どうやって結界を越えたんだ?」
「うむ、良い質問じゃな!潜水艇ってのを造ったんじゃよ。新月の夜に海中に潜って結界を通り抜けた。」
「「「「潜水艇?」」」」
「ああ、モーリット先生にも協力してもらったんじゃよ。水中を航海出来る船じゃ。閉鎖された空間に長く居ても呼吸が苦しくならんのじゃ。その他にも水圧で船が壊れん様にとか海中を探索出来る仕掛けなんかも色々盛り込んでな。」
「流石は俺の師匠だな。」
「モーリット先生、やっぱり凄い人だったんですね。」
「そうじゃよ。儂らも頭が上がらんのじゃ。」
「モーリット先生と縁の有るお前さん達にも魚人族に会わせてやりたいと思っとったがなぁ。今回は無理でも発表がされた後にはこちらへ滞在する魚人も増える予定になっとるしまた遊びに来たら良かろうて。」
「滞在ってどうするの?魚人は陸上でも暮らせるの?」
食事と共に酒を飲んでいる二人は機嫌良さそうに話をしてくれる。俺とヒボラは明日の朝が早いのでノアタに酒を止められたが。
「陸には少しなら上がれるがあやつらはそれを好まんらしい。手は有るんじゃが足は無くてな尾びれで一応は立てるんじゃが。滞在中過ごせる場所として儂の小屋の下にな魚人族用の水中の家を造っとる。」
「……家?」
「ああ、滞在するのに何もいらんとも言ってくれたんじゃが、あいつらの驚く顔が見たかったんじゃろクファル?」
「そうだな、儂らが魚人国を訪れた時の歓待ぶりを越えたいと思ってな。」
「魚人国って海の中でしょう?どうやって話したりしたんですか?」
「都市の一部が空気の有るスペースになっとった。深い海の底に乾いた場所が有るのは不思議だったなぁ。」
魚人国を思い出しているのだろう。クファルさんもケット先生も感慨深げな表情を浮かべている。
「魚人族の暮らしは儂らとは違う。それでも儂らを迎えてくれたあやつらには、感謝しかないんじゃ。不思議な魔法も使うしな。全て分り会える様になるのには何年もかかるじゃろう。だが儂らの友情はどんな壁も越える!」
「魚人族との友情に乾杯!」
「フォス国の未来に乾杯!」
「シュタリアに栄えあれ!」
ガハハと笑い会う二人が乾杯を繰り返し俺達も酒では無いが乾杯に付き合う。二人は影の心配等してないのではと不安に感じるほどの盛り上がり方だった。最後には個室でも騒ぎすぎだとクファルさん自慢の美人の奧さんに怒られてた。
旅に出ればゆっくりと食事をすることも出来ないだろう。騒がしい雰囲気に緊張もほぐれ旨い食事を堪能出来て良かった。それが狙いで騒いでくれたと言う事かもしれんな。
……………………………………………………
翌朝。
「クダナさん!」
「「おはようございます。」」
宿屋を出ると二頭立ての馬車が待っていた。クダナさんとは別にもう一人神官が御者台に座っていた。
「メーイールさん?」
「今日は私もお手伝いに参りました。」
峰司が試練の泉に行くときに連れて行ってくれた神官だ。手伝いも見知った顔が良いだろうと言う気遣いか?
帰路の旅は俺達の乗ってきた馬車に5人乗ることも出来た。しかし急ぐ旅では馬への負担が大きくなりすぎるとの事で旅に馬車も用意してくれた。馬車には旅に必要な食事等も既に詰め込まれている。
トラシ町で借りた馬車の返却は後日トラシ町へ来る王国騎士団か精霊の護り手の護衛部隊が連れて帰ってくれる事になっている。それまで宿屋に置いたままにも出来ないから馬車をメーイールさんが一旦神官の詰め所に運んでくれると言うことだ。
峰司は馴れた馬と別れるのは少し寂しそうだった。
俺達の目的はあくまで影との戦いでは無く対処方法を知る事だ。鶇村で精霊を探し精霊の守りに戻ってもらう。
精霊の守りに精霊を戻せた後にクダナさんが対処方法を聞きだす。それが出来ればトラシ町へ後から来る者へ情報を伝える。
それに基づき影と戦うのは王国騎士団、護衛部隊だ。
影への対策は早ければ速いほど被害が少なく出来ると言われている。魚人族の方から早く情報を貰えれば良いのだが……
精霊を探すのはクダナさんと峰司が主に行うから俺達は護衛兼案内人という立場だ。
峰司は精霊を探す方法と魔力の制御の続きをクダナさんと共に旅の間に訓練する。これは俺達には手伝えない事だから二人が安心して旅が出来るよう努めたい。影を纏ったウルフなんぞが出てきたらどうすれば良いのか分からんが。
色々考えつつも馬車に俺達の荷物を積み込み精霊を探しに出発する。
メーイールさんに見送られて。




