出掛ける3人を
出掛ける3人を見送ったあとスープを飲ませて貰った。身体を横たえノアタさんの鍛練を見るともなく眺めていた。身体はすっきりしているせいで眠くはならない。
日記を書いておこうかな。
この部屋にはベッドだけじゃなく机と椅子が一つ有った。
「ノアタさんちょっと起きても良いと思いますか?」
「うん?どうしたの?」
「眠れないし日記でも書こうかなと思って。」
「そうだね、それくらいなら良いと思うよ。疲れそうならまた休むんだよ?」
「はい。」
日記を取り出し机に座る。始めの頁から少しずつ読み返して見る。トラシ町にたどり着いてもう2週間以上も経っていた。簡単にしか書いていないけど父さんや母さんに話す時には充分役に立つと思う。
情けないけど熱を出したことも書いとこうかな。
少し不安は有るけど制御方法も癒す方法も有ると判った。あとはとにかくしっかり覚える。
父さんと相談して魔力病の人が現れたら助けになるように何か書き残そうと思う。魔法についての本とかも有れば買いたい。換金してない鶇村のお金一応持ってきて良かった。報酬は殆どお土産にしちゃったからな……
色々考えを纏めながら数日分を書き足し手帳を閉じた。
集中が解けたらノアタさんがまだ鍛練を続けていたのに驚いて思わず声をかけてしまった。
「ノアタさんずっと身体を動かして疲れないんですか?」
「うん?まぁね。すっかり身体鈍っちゃった。」
「鈍っちゃったって言ってそんなに動けるの?凄いなぁ。」
「まぁほら、それなりに経験積んでるからね。最初は僕だって全然出来なかったよ。」
ノアタさんは鍛練をしながら一つ一つの動作の意味を教えてくれた。
「師匠はさ僕たちが何でこんな事しなきゃ行けないの?って思ってると直ぐ気付いちゃう様な人だったんだ。
そんな時に言われたんだ。狩人の仕事って最後は獲物と一対一になる。その時にあらゆる準備を整えていられるのが一人前だって。道具や武器だけじゃなく身体を調えるのだって仕事のひとつだって。」
「う~んそっか。狩人って大変ですか?」
「大変って思わないから狩人なのかな?はは、色んな事に慣れちゃったよ。でもいつかは師匠を越えるような狩人に成りたい。そこまでにはまだまだだから成長していきたいって思ってるよ。峰司君も狩人になる?」
「行き来が自由に出来るとしたらちょっと興味は有ります。魔法を活かせる仕事とかって考えて見てるけどまだ全然分からないです。もしも狩人になりたいって思ったら相談聞いてください。」
「あっ狩人になるって言うのは半分冗談だけど、魔法は強みだよね。まぁ僕で良ければ話を聞くよ。」
「はい、ありがとうございます。」
そんな事を話していると扉が叩かれ直ぐに開く。
「戻ったぞ。」
「お帰り。」
「お帰りなさい。」
「峰司は寝てなくて良いのか?」
「少し寝たけどずっとは寝れなくて……」
「そうか、無理をするなよ?」
「はい。」
「ノアタに土産だぞ!」
「えっ何?」
ヒボラさんが麻袋を開けて満面の笑みで黒っぽい塊を見えるようにした。
「色々実験して見なきゃだけど、広範囲攻撃の矢尻を造る。的に当たるとどわって火が上がる仕掛けだな。それでだこれはその材料だ!」
「わーありがとう!広範囲攻撃?僕に出来るかな?」
「ノアタが火を纏わせる魔法を覚えなきゃだから特訓だぞ。」
「うん。勿論頑張るよ!ヒボラ先生。」
「……真面目にやれよ?」
「うん?どうした?」
オレは不思議に思った表情が出てしまっていたのだと思う。ヒダッカさんに声をかけられた。
「えっと狩人って広範囲攻撃とか必要なのかなって思って……」
「「あっ」」
オレの疑問にヒボラさんとノアタさんが慌て出す。
「あー、しょうがないか……」
「えっと何ですか?」
「峰司君に心配掛けたくなくてさ。ちょっと内緒にしてた事が有るんだ。」
ヒボラさんが話してくれた内容に驚いた。トラシ町のギルドでウルフのその後について聞いたって。
「驚きました。オレ皆の足を引っ張らないようにします。」
「……どうしたんだ?‘オレも広範囲攻撃魔法を覚えたいです’とか言うと思ったよ。」
ヒボラさんに言われてオレはそんな風だったかなと思い返して恥ずかしくなる。ヒダッカさんも頷いているし。
「まぁ似てない物真似は置いとくとして俺もそう思ったぞ?」
「もちろん一緒に戦えたら良いけど、さっきノアタさんの鍛練を見ていたら凄すぎて。狩人の実力見たら邪魔にならないようにしようって思っちゃって。」
「僕そんな風に見られてたのか恥ずかしいな。身体が鈍っちゃってたからねつい……」
「まぁそこは経験の差ってやつだ!ただノアタの鍛練はけっこう厳しめだぞ。体力じゃ俺は負けるしな。」
「そうだな、俺達も身体を動かした方が良いか……ヒボラ後で鍛練に付き合えるか?剣も替えたばかりで色々やってみたいしな。」
「いやいや実験もしたいしなぁ。ギルドに行くか?魔法を試す場所も訓練場も有るから俺は実験でヒダッカはノアタと手合わせでどうだ?」
「ヒボラも少しは鍛練付き合ってよ。実験も大事だけど基礎は疎かにしちゃダメでしょう?」
「まぁそうなんだが……」
「オレは行っちゃ駄目かな?」
「駄目でしょ。」
「駄目だろ。」
「駄目だな。」
「うっそうだよね……」
「そもそも着いてきてどうするんだよ。」
「フライって魔法有るんでしょ?それを覚えたいかな。あとはクレイロッドの作り方とか習いたいし……」
「「「?」」」
何故か3人とも笑い出してしまった。
「その方が峰司っぽいな。」
「そうだね。」
「だな。」
そんな話をしていると宿の人が食事を二人がかりで運んできてくれた。ヒダッカさんとヒボラさんが買ってきてくれた米入りの粥の鍋と取り皿。それといい匂いをさせて串焼きが山もり皿に載せられている。粥はオレが作るのかなって思ってたけど宿に粥を作れる人がいるって分かって米だけ買いに行ってくれた。さっき戻ってきた時に渡したんだと思う。
「四人分お持ちしましたよ。こちらへ置かせて頂きますね。」
机に料理が置かれ、後で鍋や皿を返して貰えると助かりますと言って出ていった。
「旨そうだな!」
ヒボラさんが早速とばかりに粥をよそいスプーンと共にノアタさんが手際よく皆へ渡していく。
「「「「いただきます!」」」」
遅めの昼食は慣れない米だったのに皆美味しかった見たいで良かった。
まったり食後にのんびりしていると扉が叩かれた。
「すみません、お客様がお見えです。」
誰も約束はしていないけどと戸惑いつつ一番近くにいたヒダッカさんが扉を開ける。
宿の人の後ろに知らない神官様が立っていた。
「突然失礼します。至急のお願いがございまして。」
「何だ?」
「お入りしても宜しいでしょうか?」
たぶん宿の人に聞かれたく無いんだと思う。案内のお礼を伝へ神官様だけ部屋に入ると扉を締めた。挨拶も無く小声でせかせかと話し出した。
「ケット先生クファル先生クダナ神官のご指名で今から塔へ来ていただきたいのです。ヒダッカ様ヒボラ様ノアタ様峰司様の四人でお間違い無いでしょうか?」
「ああ。だが……」
「あの、すみません峰司君は病み上がりで……明日とかでは駄目ですか?」
「すみませんそれも伺っております。無理は承知なのですがこちらの事情も有りまして。」
「あの、オレ大丈夫です。」
「まぁその三人の呼び出しなら受けるしかないだろ、峰司は疲れたら直ぐに休めよ。」
「はい。」
「良かった。では馬車を用意しておりますのでお支度をお願いします。私は表で待っておりますので。」
神官はほっとした表情になり部屋を出ていった。
「塔までの距離で馬車のお迎え?何か有ったのかな?」
「精霊の道に関してか?」
「精霊の守りについて何か判ったのかも?」
「分からんがとりあえず急いでいるらしいな。峰司は本当に無理するなよ。」
「はい。」
そのまま出掛けられるヒダッカさんとヒボラさんが何を持っていくか準備をしてくれている間にオレとノアタさんは身支度を整えた。




