ノアタに付き添いを
ノアタに付き添いを頼んで俺とヒボラ、クダナさんの三人で宿屋を後にした。クダナさんは塔へ戻る為、俺とヒボラは米を買いに行く。
滋養の有るものを食べる様にと言われた峰司の為だ。
フォス国では基本的に米を食べる習慣は無いがロブド国では一般的に食べられているらしく神殿の町では手に入る。
身体が弱っている時は食べ慣れた物が良いだろうと皆で考えての事だ。峰司は自分から何かを欲しいと言ってこないからな。
それにしてもクダナさんが神官姿なのは落ち着かない。一緒に歩いていると通り過ぎる者が皆こちらに向かって会釈をしていく。ヒボラがクダナさんに話しかける。
「クダナさんが神官様だった何て驚きましたよ。」
「お会いしたときはこんな格好してませんでしたしね。神官の仕事以外ではこんな姿はしていないのですよ。」
「そう言われて見れば町中では余り見かけんな。」
「ええ、いつも神官服を着ていては落ち着きませんよ。」
「神官様が何故ケット先生の助手をされているんですか?」
「私は元々研究者に成りたくてですね、魔方陣についてそれなりに詳しかったのですよ。色々有ってケット先生の補佐に着いたのです。」
「色々が気になるがそこは魚人族絡みと云うことか?」
「まぁそんな所と思ってください。お聞きした精霊の道の魔方陣は本当に調べがいが有りそうですよね。もう少し落ち着いたら私も調べに行きたいですね。」
「そうか。先程も言ったが色々と世話になった、改めて礼を言う。」
「いえいえ、将来有望な若者を救うのは神官として当然の事です。と言うのが神官の模範解答でしょうね。何より私はリン様とお逢いできて本当に楽しかったですよ、こちらこそお礼をしたいくらいです。」
今もそこに居るのか分からんがそっと革袋に服の上から触れリンの姿を思い浮かべる。
「確かにびっくりしたな。ヒボラは顔がひきつっていたぞ?」
「そうか?まぁ確かに驚いたが……」
「リン様については詳しくお伺いしたかったのですが、丁度分かれ道ですね。またご連絡差し上げますよ。」
「ああ、もうか。まだ暫くは町にいると思う、いつでも遊びに来てくれ。」
「では遠慮なく。それとノギア先生には体調不良について言付けして措きますので、明日かそれ以降に訓練を再開されると良いでしょう。因みに峰司君は何か楽器を習った事が有るかご存じですか?」
「まずい……連絡するのを忘れてたな……」
「丁度学校が始まる頃でしょうからまぁ少しお待たせしたぐらいでしょうね。そこは心配されなくて良いですよ。」
「……助かる。」
「峰司は横笛が吹けますよ。他には聞いた事有ったか?」
「父親から聞いたのも横笛だけだな……」
「そうですか、それも伝えて措きますので。」
「色々すまんな。助かった。」
「いえ、では。」
足早に去っていくクダナさんと別れて目当ての米を売っている店に向かう。思ったより大きな店で珍しい食品の他にも金属の細工品、武器や鍛冶に使う道具等も幅広く取り扱っている。
「いらっしゃいませ。今日は何をお探しですか?」
店に入ると直ぐに声がかけられた。
「米は有るか?」
「はい、勿論で御座います。最近はロブド国以外の方がお買い求めになる事も多くて。品揃えもこの町一番と自負しております。どうぞこちらに。」
着いていくと確かに沢山の種類が並んでいる。多すぎて何が何だが全く分からない。
「粥にして食べるのはどれだ?」
「それでしたら精米して有りますこちらの物かスープに入れて直ぐに食べられる乾し飯が宜しいかと。」
「乾し飯とは何だ?」
「一度蒸して干した米で御座います。そのまま食べる事も出来る保存食品です。例えるならば堅パンの様な物で御座います。」
「へーそのまま食べれるのか面白いな。で、ヒダッカどっちだ?」
「乾し飯等とは聞いてなかったが帰りの旅に丁度良いか?両方貰って行くか……」
店員は上客と判断したのだろう喜々として並べて有るものを袋に詰めだす。
「そのくらいで充分だ。余り多いと荷物になるしな。それともしかして緑の茶は有るか?」
「ありがとうございます。ロブド国のお茶をご存じとは流石で御座います。こちらにどうぞ。」
茶の並べて有る場所は更に種類が多い。
「私どもではこちらの特製の木筒に入れて運んで来ておりますので味は保証付きで御座います。薄くて軽い金属を内側に入れる加工をしておりまして湿度に強い入れ物で御座います。」
「ああ。」
ぐいぐい来る接客に気圧されつつ小さめの木筒入りの茶を選ぶ。ヒボラに助けを求めたかったが他に気になった物が有ったようでいつの間にか離れてしまっていた。お茶の淹れ方を説明してくれるのは助かったが、お茶と一緒にどうぞとお薦めの甘味と言う干しイモを買わされ何とか会計を済ます。ヒボラを探すと別の店員と何やら話している。
「こっちは終わったぞ。それは何だ?」
「無煙炭って言うんだって石炭の貴重な種類だってよ、普通の物より熱が高く燃える物らしいぞ。」
「そんなの何に使うんだ?」
「ノアタの武器にちょっとな。」
意味ありげに一瞬にやっと笑って店員と交渉を始める。武器も気になるがまた店員に捕まると既にこの町で買い換えたばかりの剣をまた勧められそうだしな。手持ち無沙汰に思いながらもやり取りを聞いている。
どうやらヒボラが欲しい無煙炭は硬い金属の加工に必要で高級品なのだが生憎ここら辺の鍛冶ではそこまで高火力の炉は無いらしい。また、日常生活では高火力過ぎるのと着火に時間がかかる等の理由で使いにくく売れ残っていると。そこまで分かると値切り交渉が始り通常の石炭と余り変わらない値段で手に入れられた様だ。ヒボラは上機嫌で店を出て宿に向かう。
「これは凄いぞ!」
「何がだ?」
「ノアタは二本打ちの矢を作って欲しいって言ってたんだがこっちの方がずっと良いぞ。広範囲攻撃の奥の手だな。」
「無煙炭がか?」
「お前のアイスアロー見たいに矢尻を特別製に作ってさ、着地したら火がぼっと燃え広がる感じにして……」
「そう聞くと凄いが、森が燃えない様にな?」
「……そこは何とか考えるよ。」
そのまま武器の製作について考えながら何やら呟くヒボラと共に宿に戻った。




