人の気配で
人の気配でふと目が覚めた。
「起こしてしまったか?」
ヒダッカさんがオレの事を心配そうに覗き込む。オレは体を起こそうとした。体が重苦しく腕の力を使ってなんとか起き上がる。たぶん熱が出ちゃってるな。しばらく振りの体調の悪さに気分が落ち込む。
「ヒダッカさんおはようございます。」
「おはよう。水を飲むか?」
「はい。」
ヒダッカさんが用意してくれた水を飲む。口も喉もからからでとても美味しい。一息に飲み干してしまった。
「ありがとうございます。」
「もう一杯飲むか?」
「うん。」
ふたたびコップを受け取り口をつける。今日はどうする予定だったっけ?上手く頭が回らない。
そこでヒボラさんとノアタさんが居ない事に気付いた。
「ヒボラとノアタは朝飯を食べに行ってる。俺は先に食べたぞ。」
「そっか。」
オレの様子に気付いたヒダッカさんが二人の事を教えてくれた。
オレを心配して交代で食事を取ってくれたのかな?
「具合はどうだ?」
「えっと心配かけてすみません。大丈夫です。」
ヒダッカさんがオレの額に触れる。
「熱は下がって無いぞ。それを飲んだらもう少し休め。腹は減ってないか?」
「お腹は空いてないかな。迷惑かけてすみません。」
「はぁ……」
ヒダッカさんがため息を吐いた。
「迷惑なんかかけてない。峰司、お前は何の為にここまで来たんだ?精霊の守りを貰ったのもそもそも魔力病を治す為に魔法を覚えたかったからだろう?それに何か有ったら直ぐに言えと言っただろう?謝れ等と言ったことは無いぞ。」
ヒダッカさんに大きな声では無いけど腹から絞り出したような太い声で言われた。すみませんと言いそうになって口をつぐむ。
「俺も考えが甘かったと反省している。魔力の制御が出来ていれば良いのかと勝手に思ってしまっていた。ヒボラとノアタから聞いたが、精霊の護り手の力は生命力を削ってしまう場合が有るそうじゃないか。後で神官が治療に来てくれる事になっているからそれまでゆっくり休め。」
「はい。」
体を横にして休む。ヒダッカさんにはじめて怒られた気がする。怒ったと言うか心配してるって感じだと思うけど。無理はしてないつもりだったけど精霊の守りを貰った後に具合悪くなったのは言っておくべきだったかな……
「ヒダッカさん話しても良い?」
「峰司が辛く無ければ構わん。」
「あの、精霊の守りを貰った後に試練の泉で精霊を視たの。そのあとちょっと具合悪くなっちゃったけどそれ以外で具合悪くなったことは無かったよ。あの、心配してくれてありがとうございます。」
「そうか……そう言えば夜中にうなされていたぞ。悪い夢を見ていた様だぞ覚えているか?」
ヒダッカさんの言葉に思い返して見ようとしたけど……
「……覚えて居ないや。」
「そうか、まぁ良いか。」
その後、精霊の泉で見た内容を告げると後で一緒に考えて見ようって言ってくれた。
ヒダッカさんの心配事を増やしてしまった気がしてまた落ち込む。
………………………………………………
峰司はふたたび眠ってしまった。試練の泉で見たことは不可解だがこれは神官に相談するしかないだろう。それよりも峰司は寝ている間も魔力をコントロールしなくちゃならんのか?だが神官は短命な者が多いと聞いたことはない。不安な思いで峰司を見守る。
「ヒダッカ?神官が来てくれたぞ。」
「お邪魔しても良いでしょうか?」
「峰司君は起きた?」
扉を叩く音に続きヒボラと違う聞き覚えの有る男の声に不思議に思いながらも扉を開ける。そこにはヒボラとノアタそれに意外な人物が立っていた。
「クダナさん。どうしたんですか?」
「今日は私が当番では無かったのですが、具合の悪い方が峰司君って聞いてもしかしたらと。取り急ぎ患者さんを見させてください。」
クダナさんの神官姿に驚いたが兎に角峰司を診て貰う。
俺達の話し声で峰司は起きていたようだ。
「はじめまして峰司君。私は神官のクダナと申します。早速ですが精霊の守りをお借りしても良いでしょうか?」
「はい。」
峰司はごそごそと精霊の守りを取り出しクダナさんに渡した。
クダナさんは精霊の守りを握り目を閉じる。
「ありがとうございます。峰司君は魔力の練り上げの練習はしているのですね。良かった。これはお返ししますね。」
峰司が精霊の守りを革袋にしまうと今度はクダナさんが小さな縦笛を取り出す。
「私が縦笛を吹きますので無属性の魔力が動くのを感じていてください。」
「魔力を練り上げるのですか?」
「いえ、ちょっと違いますかね。体の中を巡る様にしたいのです。無属性の魔力を私の縦笛に合わせて身体の隅々に行き渡らせる感じです。やってみれば分かる筈ですから緊張せずに先ずは音を聞いてください。」
「はい。」
「それでは皆さん少し峰司君のベッドから離れて居てください。」




