ギルドに向かう
ギルドに向かうクダナさんと別れ俺とノアタは神殿前の左側の塔に向かう。
ノーマさんが丁度良く見つかり峰司の精霊の守りの事を聞いた。
すると峰司の先生、ノギアさんに任せて有ると言われ右側の塔二階の教室に直接行ってくれとの事だった。
右側の塔の真ん中に有る階段を登ると沢山の生徒が降りてくる。下校時間の様だ、行儀良く会釈をしてすれ違っていく。
「何か皆頭が良さそうに見えたね?」
「そうか?さてどれだ?」
神官学校に気後れしたのか、こそこそとノアタが話しかけて来た。二階に着くと同じような扉が幾つも階段の周りにぐるりと並んでいる。良く見るとそれぞれ違うレリーフが彫ってある。峰司の使っている教室の扉にはシュタリアの花々が彫られていると言っていた。
「ヒボラ見つけたよ。」
「ああそれだな。」
ノアタが見付けてくれた扉を叩き、声を掛ける。
「すみません、ノギア先生と峰司は居ますか?」
「はい、どうぞお入りください。」
「「お邪魔します。」」
二人は長椅子にテーブルを挟み向かい合って座っていた。
「迎えに来てくれたんですか?ヒダッカさんは一緒じゃないんですか?」
「ちょっと早いが聞きたい事が有ってな。ヒダッカは別行動だ。ノーマさんにここへ行くようにって言われたんだ。」
「ノーマさんに?」
「ノギア先生授業の邪魔をしてすみません。峰司の光の消えた精霊の守りについて何か分かりましたか?」
俺はノギア先生に尋ねた。峰司の表情が俺の質問に真面目な物へと変わる。ノギア先生が調べてくれているんだよな?
「授業は終わった所ですよ。精霊の守りの件ですか……すみません、まだ調べられる者が戻ってきて居なくて。そろそろ戻ってくる予定なのですが。今こちらに残っている者では分からなかったので……」
「そうでしたか。今はどちらに?」
「ロブド国に調べ物が有りまして……」
言いにくそうに話すノギア先生。俺とノアタは顔を見合わせる。ノアタが聞いた。
「あの、もしかしてウルフの件ですか?」
「……ご存知でしたか。向こうで精霊の声を聴いて変異の事を調査しているそうです。お手伝いに行っているのですよ。でも数日中には戻ると連絡が来ています。」
「……ウルフの事何か分かったんですか?」
「それは……どうでしょうかね。詳しい連絡は受けて居ませんし隣国の事なので皆様にお伝え出来るかも分かりません。」
「そうですか……実は僕達は狩人で森の中でウルフの集団に襲われました。もし教えて頂けることが有れば少しでもお願いしたいです。」
「まぁそれは大変でしたね……確約は出来ませんが戻ってきたときに相談してみますね。」
「「宜しくお願いします。」」
するとトーントーンと太鼓の音が聞こえて来た。
「あら、始まってしまいましたね。」
「えっと祈りの時間ですか?」
「ええ。もしかして峰司君は祈りを聞いた事が無いのかしら?」
「はい。精霊を癒すのですよね?」
「話しているのが勿体ないですね。特別席に案内しますよ。」
ノギア先生について急いで塔の真ん中の階段を更に上に登る。屋上に向かうのか?神官以外が塔の上に居るのを見たことは無いが。三階を通りすぎて扉の前に出た。
「開けると段差が有るので足元に気を付けて下さいね。それから扉の外に出たらお話はされないようにお願いします。」
ノギア先生が口の前に人差し指を当てたので俺達も無言でうなずく。
扉を開けると祈りが大きく耳を震わせる。地上から聞くより大きい音がするんだな。夕焼けに染まった白い塔の屋上をぐるりと胸の高さくらいに壁が囲む。その向こう側に木々が空に背を伸ばしているのが見えた。渡り廊下の方には松明が焚かれて明るいがこちらには無い。
ノギア先生に促されて渡り廊下が見える場所へ進む。松明に照らされ楽器を持った神官が湖を向いて並んでいる。ノギア先生が壁の出っ張りを示して座る様に誘導される。峰司は案内に気付かず立ったまま祈りを聞いているので肩に手をかけ一緒に座る様に促す。
峰司は惚けた様に聞き入っている。
太鼓のリズムに合わせ袋笛の低音が響く。近くで聞いているせいか音が腹に響く。竪琴は二人の神官が息を合わせて交互に爪弾き、縦笛がゆったりと旋律を響かせる。横笛が時折混ざり鐘も綺麗な高音を長く伸びやかに鳴らす。
夕刻の祈りは心が浮き立つようなそれでいて眠くなる様な不思議な調べだった。
夕陽が消え暗くなると夜空に余韻を響かせながら祈りは終わった。
「もうお話しされても構いませんよ。」
「僕鳥肌立っちゃったよ。近くで聞くと凄いね。」
「ああ、全身で祈りを浴びたって感じだな。」
「すごかった……です。」
祈りを行っていた神官達は反対の塔へ消えていった。ノギア先生にお礼を言い俺達は宿へ戻った。
三人で今日の成果を話しつつヒダッカを待っていたがいつまでも帰ってこない。心配だが食事を済ませノアタと武器の相談をしたり精霊の力の借り方について話したりした。そのうち峰司が眠そうに何度も欠伸をしているので先に休ませる。
「迎えに行くか?」
「さすがに心配だね。でも行き違いになりそうで怖いからなぁ。」
そんな話をしていたらヒダッカが帰ってきた。
「酒臭いぞ?」
聞くとケットさんとの話は最初に説明した事の確認くらいしか出来なかったらしい。ヒダッカが覚えている事はケットさんの聞きたい事には答えられ無かったらしく話はそんなに時間が掛からなかったと。
「それなら何でこんなに遅くなってお酒の匂いさせてるの?」
「ケットさんにクファルさんの店へ連れていかれてな。クファルさんに話しが有るって言ってたが……何故か三人で酒呑み対決になってな。」
「何やってるんだよ……俺も呼べよ!」
「ええ……」
ヒダッカは珍しく酔って締まりの無い顔をしている。呑み対決は呼ばれなくて良かったかも……こんなに遅くまでかかって臭いも凄いし相当呑んだんだろう。ノアタも引いてるしな。
「とりあえず遅いから寝るぞ。詳しくは明日話すが精霊の守りの件は進展無しだ。」
匂いだけで酔いそうだったので窓を少し開けて俺達は眠りについた。




