教室に入ると
教室に入ると正面の高い位置に明かりとりの窓が有りその下の壁一面が本棚になっていた。本の多さに少し気後れしてしまう。
まさかあれ全部覚えなきゃいけないんじゃないよね?
「えっとノギア先生あの本全部覚えるんですか?」
「もちろんよ。」
えっ何年もかかるよ……
「ふふ、冗談ですよ。」
「そうですか……」
真面目そうなノギア先生が言うと冗談に聞こえなかった。鶇村に帰らずフォス国で仕事を探すってちょっと考えた事は有った。けどあんなに覚えることが有るなら神官にはなりたくないな……
「神官になるには色々な知識が要るのよ。でもそれは今は考えなくて良いですよ?」
「はい……」
あれ?考えていることが分かっちゃったみたい、恥ずかしい。ノギア先生に促されて先生と向い合わせに椅子に座る。広い長机を挟む様に長椅子が置かれていて6人くらいが一緒に座れそう。それが4つ程有る。
「今日は魔力の制御について勉強しましょう。峰司君は精霊が視えるのですよね?」
「はい。」
「他の魔力の属性は何をお持ちですか?」
「5つ全てです。」
「5つ、そうですか……どの属性が得意ですか?」
「得意、と言うのは考えたことが無かったです。」
「では苦手と感じる属性も無いのですね?」
「えっとはい。でも教わった魔法が少ないので、もしかしたら苦手が出てくるかも知れません。」
「そこはたぶん心配は要りません。峰司君は魔力が多いとか器用とか言われませんでしたか?」
「はい。言われました。」
「魔力には五つの属性が有りますが、他に無属性と言われる種類の魔力が有ります。それが精霊の護り手には有るのです。」
「無属性?」
「はい。どの魔法にも変えることが出来る魔力です。例えば水と火の属性が有るとして水の属性の魔力を使いきるともう水の魔法は使えません。そのあと火の属性の魔力が残っていれば火の魔法は使えます。しかし無属性の魔力が有れば水も火も使えます。」
「えっとただ全部の魔力が多いのとは違うのですか?」
「勿論個人差が有ります。人には保てる魔力の限界が有ります。無くなれば所謂魔力切れですね。私達の様に無属性が有ると使える魔力量が多い様に感じます。何故かと言うと無属性を使うと少しの魔力でもたくさんの結果を生むからです。峰司君に苦手が無いと言うことは無属性の魔力の割合が多いと言うことでしょう。」
「無属性の魔力の割合が多い?」
「はい。無属性は魔法に対して親和性が高いと言われ、イメージした魔法と使う魔力量の間に無駄が少ないと考えられています。」
「はい。」
「無属性は親和性が高いので純粋な魔力、精霊が視えたりするわけです。それと親和性が高い故の危険が有ります。今日はそこをしっかり覚えましょう。」
「はい。」
オレはノギア先生の言葉にうなずく。危険って何だろう?
「命に危険が有ります。」
「えっ!」
「心配しなくても良いですよ。きちんと制御を覚えたら私の様に長生き出来ますからね。」
「……はい。」
制御方法をしっかり覚えなきゃ。魔力を使うときに無属性の魔力がある人は自分の生命力を一緒に使ってしまうことが良く有るらしい。自分の生命力って良くは分からないけど生き物全てが持っている。生命力が無くなれば死んでしまうって事だよね……魔力を練り込む時に魔力の道をしっかり作り自分の生命力を持って行かれない様にしなければならないそうだ。
「これを差し上げますね。」
そう言ってノギア先生は5枚のカードを取り出して渡してくれた。
それぞれに違う色がついている。
「先ずは属性毎に魔力を練り上げる練習をしましょう。意識しやすいように、色を着けて有ります。」
「はい。」
火属性 赤
水属性 青
風属性 白
土属性 茶
木属性 緑
無属性 透明(これにはカードは無い)
先ずは赤いカードを持つ。
火の魔力、火の魔力……
「あっ……出来ました。」
「良かったです。それをいつも意識してください。」
「はい。」
ノギア先生はにっこり笑ってくれた。続けて他のカードに持ち替え魔力を練り上げて見る。
それぞれ別けて練り上げる事が出来た。
「練り上げが難しい属性は有りましたか?魔力量の違いが分かった筈ですが……?」
「たぶん風属性が一番多いです。火属性と水属性と木属性が同じくらいで土属性が少ない見たいです。」
「そうですか。無属性が全ての魔力に変換出来るとはいえ、それぞれの魔力がどのくらい残っているか常に分かっているようにしてくださいね。」
「はい。」
「では無属性の魔力を練り上げて見てください。透明だと意識しにくいかも知れませんが……」
「やってみます。」
透明な魔力、透明な魔力、ちょっと難しいかも……えっとそうだ!試練の泉の水みたいな澄んだ綺麗な魔力……
「出来ました!」
「魔力量は分かりますか?」
「えっと風属性の3倍か4倍くらいです。」
「その感覚を良く覚えてくださいね。」
「はい。」
一旦休憩にしましょうと言われた。集中し過ぎて気付かなかったけど教室の外からざわざわと人の気配がする。神官学校の人も休憩時間になったのかな?オレは宿で作って貰った昼食を食べてから続きを始める。
「魔力の練り上げは続けられそうですか?」
「はい。」
「では白いカードを手に取ってください。」
言われるままカードを手に持つ
「風属性の魔力を練りあげつつ無属性の魔力を混ぜて見てください。白が輝く感じにすると上手く行くと思いますよ。」
ふぅ、目を閉じて白い魔力を練り上げる。そこに少しずつ輝く様に意識して無属性の魔力を混ぜていく。少しづつ、少しづつ。
風属性と無属性が同じくらいに混ざってる。
「出来ました。」
「それでは今度は茶色のカードを持ってください。土属性に無属性を混ぜて行きます。今度は無属性を先程より多く混ぜて見てください。」
「はい。やってみます。」
先ず土属性の魔力を練り先程と同じように無属性を混ぜて行く。茶色が輝く様に……?
「どうしましたか?」
「えっと混ぜるのは出来ました。あの、たくさん混ぜると茶色が薄くなるのかなって思ってたんですけど濃さは変わらず輝きました。」
「そうですね、イメージが上手に出来ている様ですね。無属性を他の属性と混ぜると無属性では無くなります。なので色の濃さは変わらない様に見えるのでしょう。一旦他の属性に変えてしまったら無属性には戻りません。同じように最初から属性が有る魔力は無属性には変わりません。これは大事なことなのでしっかり覚えてくださいね。」
えっと例えば水属性の魔力と無属性の魔力を全部使いきってしまったら他の魔力が有ってもウォータークリエイト出来ないって事だよね。
「だから残りの魔力が属性毎にどれくらい残っているかが重要ってことですか?」
「そうです。あとは繰り返し練習を重ねて見てください。それと最近魔法を使って体の具合が悪くなった事は有りますか?」
「えっと有ります。」
「どう言う風に?」
「精霊を視ようとした後で少し頭が痛くなってたくさん寝てしまいました。」
ノギア先生は心配そうな表情を浮かべた。
「そうですか……精霊の護り手には精霊を癒す力が有ると聞いた事は有りますか?」
「はい。聞きました。」
「自分にもその力を使う事が出来ます。それを覚えた方が良いですね。」
「はい。」
「今日はそろそろ祈りの時間になりますので終わりにしましょう。続きはまた明日頑張りましょうね?」
「はい。ありがとうございました。明日も宜しくお願いします。」




