誰かに呼ばれて
誰かに呼ばれているような気がして慌てて涙を拭いた。入口の方を振り返ったけど辺りにはオレしか居ない、気のせいかな?
精霊の守りをスコットさんとロイ君に造って貰った革袋にしまう。革袋の中で一瞬精霊の守りが光ってベアーの手形が浮かび上がる。革袋が気に入ったって言われたみたいだ。何か嬉しいな。
そのまま帰るのが名残り惜しくて泉に近付く。そっと両手を泉に浸す。ひんやりして気持ち良かった。もう先程の様に精霊の守りが光り出すことは無かった。 もう一度見たかったな。思いたって精霊を視てみようと立ちあがり魔力を込めた。
「あれ?」
意外な事に精霊は飛んで居なかった。そのまま視線を泉に落とす。
「えっ?」
精霊の守りは見えず水鏡の様に青い空が写し出されていた。空高く飛んでいる鳥の視線の様に青い空とずっと下に見える緑色なのは森?そのまま眺めているとずんずんと森に近付いていく。高い木々の梢には雪が積もっている。木々を通り越し地面が近付くと池が現れた。だけどなんか変だ。黒い水?ポコポコと黒い水が湧き出して泡立っている。黒い泉?周りの雪も黒く染まっている。
「何これ?」
見ているだけでも気持ちが悪い。禍禍しいってこう言う事かな。視るのを止めようかなと思っていたら金色の精霊が黒い泉の近くに現れた。何故か泉に近づいて欲しくなくて止めようとした。
「そっちに行かないで!」
だけどオレの声は届かない。精霊が泉の上を飛ぶと黒い水が下から延び上がり精霊を絡めとってしまった。黒い泉の水面は平らに戻り最初に見たようにポコポコと泡立っている。……精霊を食べた?
驚いて魔力が途切れてしまった。試練の泉は綺麗な水にフローライトを揺らめかせ先程と何も変わっていなかった。今のは何だったのかな?
何かどっと疲れた。もう帰ろう。黒い泉は気になったけどもう一度視る気にはなれなかった。
葦原までどう歩いたか覚えて無いけど辿り着いた。オレを送り出した場所で神官様が待っていてくれた。
「フローライトは拾えましたか?」
「はい。」
「具合が良くないようですが?」
何と答えて良いか分からずオレは大丈夫ですと告げる。
「そうですか?では帰りましょう。」
「はい。」
神官様に着いて歩いて行き船に乗る。体が重い。船の揺れに体を預けオレは知らない間に眠ってしまった。
「峰司君、着きましたよ?大丈夫ですか?」
「あっはい。」
オレはぼうっとした頭を何とか起こし船を降りる。
「お迎えはまだいらして無い様ですね。着いて来て下さい。」
「はい。」
昨日受付をしたのと反対側の塔へ向かう。一階に待ち合い室が在った。お茶を出してもらいほっと落ち着く。少し頭が痛い。魔力の使いすぎかな?思い返せばあんなに長く精霊を視ていたことは無かった。
「ふぅ。」
しばらくすると神官様が戻って来た。先生が見つかったので明日またここへ来るようにとのことだった。
迎えが来るまでの間に2階は神官学校になっているので自由に見学をしても構わないと言われた。その後神官様はどこかへ行ってしまった。
どうしようかな……せっかくだから行こうかな?
そのまましばらくどうしようかと悩みつつ休んでいるとヒダッカさん達が迎えに来てくれた。
「峰司!格好良いの見つけたか?」
「はい!」
「わぁ見せてくれる?」
オレは革袋から精霊の守り取りを出して三人に見せた。
「綺麗だな。」
「俺の程じゃないが格好いいな。」
「紫かぁ綺麗だね。」
「うん。えっとクファルさんには会えたの?」
「うん?ああ、明日はケットさんって言う別の人に会うことになった。」
「そうなんだ?オレも明日は先生に会うんだ。」
「先生が見つかったのか。良かったじゃないか。」
「はい。」
「峰司君、お腹は空いてない?」
「えっと大丈夫そうです。」
「宿に帰るか?」
「うん。オレ疲れちゃった。」
「そうか、宿で休めば良いぞ。」
神官学校も気になったけど疲れていたので今日は宿に帰る事にした。




