食事の準備の
食事の準備の為にエノールさんが下がり、俺達は改めて自己紹介を済ませた。
「で、儂に聞いてもらいたい事が有ると言っとたろ?」
「あの、先程の話は?」
「うん?ヒダッカ君がエノールにプロポーズしに来たかとな……勘違いだ。」
「「「プロポーズ?」」」
「いやぁ恥ずかしい話しでな。まぁ簡単に説明すると儂がここの女主人に惚れてな。けどこんなむさ苦しい男じゃから相手にされとんかった。儂は毎日通ってプロポーズを続けとったんじゃ。その、まぁその時に言い続けたのが羊と豆のトマトスープが好きだとな……実際絶品でな。エノールはあの通り綺麗な子じゃが求婚者は儂を恐がって皆逃げてしまった。ヒダッカ君の事を儂の前でプロポーズする強者かと驚いとった。」
「はぁ……」
「そうか……」
「あの、素敵なお話ですね。」
「まぁな。食事を楽しみにしとれ。お前たちの話を聞こう。」
俺達は顔を見合わせてノアタが口を開く。
「精霊の道について何か知っていますか?」
「精霊の道か?久しぶりに聞いたな。専門じゃないが光の女王の謎だろ?」
「良かったぁ!クファルさん知ってたんですね。その話を詳しく教えて欲しいです!」
「「お願いします。」」
「そんな話どうして……大事な事なのか?そうだな間違った知識を儂が教えるより……詳しい者を紹介する方が良かろうて。」
「そうですか……宜しくお願いします。」
「…………精霊の道を見つけたのか?」
不意打ちを喰らって俺達はハッと顔を見合わせてしまった。誤魔化すのは無理だと思った俺は話をした。
「先日木のうろを通って槐国と言う所に行ってきた。それが精霊の道だと思う。」
「ほう。」
「俺達はうろを通って行き来するのに危険が無いか知りたい。」
「ふむ。」
峰司の事を言うべきか迷った俺はヒボラとノアタを見る。
「もう全部話そう?」
「そうだな。ヒダッカ説明しろよ。」
「あぁ。」
俺は森でウルフに襲われた事から槐国でフォス国の男の子孫に出逢い連れて帰ってきた事。峰司が試練の泉に行っていること、神官や研究者に横槍を入れられ帰れない事の懸念など全て話した。
幾つか質問を受け、分かる範囲で答えた。
「聞き捨て成らん所も有ったが……何とかしよう。」
「宜しくお願いします。」
「儂はちょっと手紙を書いてくる。飯を食って待っとれ。エノール!もういいぞ!」
「はーい!」
呼ばれたエノールさんにクファルさんは儂の分は後でと伝え席を外す。エノールさんが細い腕で大きな鍋をテーブルに置く。好きなだけ食べて良いと言われた。
何となく目を合わせるのを避けられているような気がした。スープをそれぞれ皿によそい食べ始めると、パンやハム、イモや豆、卵の料理等が次々に運ばれて来てテーブルがいっぱいになった。
「あの、僕たちだけでこんなに?」
「張りきり過ぎちゃったかしら?狩人さんはいっぱい食べるのかと思って。多かったら残して下さいね。」
「食べきれないと思うよ。エノールさんも一緒に食べる?」
「……ご一緒して良いのですか?」
「旨いもんは大勢で食べると更に旨いぞ!」
「そうだな。迷惑じゃなければ。」
「じゃぁお言葉に甘えて。」
俺達は四人でトラシ町の事やモーリット先生の事を話し賑やかに食事をした。クファルさんとモーリット先生は昔一緒に研究をしていたらしい。ノアタとエノールさんはクファルさんのプロポーズの話しで盛り上がっていた。
「何度も断られてもプロポーズを続けるなんてクファルさん凄いな。」
ヒボラがぼそっと呟いていた。
クファルさんが戻ってきて手紙を預かる。紹介状と言うことだった。
「一緒に行ってやれんですまんな。」
「いえ、紹介して貰えて助かります。」
「ありがとうございます。クファルさん。」
「助かった。」
俺達が突然来たので仕事を中途半端にしたままらしい。
食事を終え代金を払おうとすると開店前だしモーリット先生のお弟子さんからお金は受け取れないと言われた。
「じゃぁ今度はお店が開いてる時に食べに来るね。」
「そうだな、今度は峰司も連れて来るよ。」
「旨かった。」
「いつでもお待ちしてますよ。」
「困った事が有ったらすぐに頼れ、遠慮はいらん。無くても遊びに来い。」
俺達はクファルさん親子に見送られ紹介先へ向かう。そろそろ峰司は試練の泉に辿り着いただろうか?
「思ってたより普通の人だったぞ。」
「普通と言うか凄く好い人だったよ!」
「まぁモーリット師匠の知り合いだからな。次はどうか知らんぞ。」
これから魔法を研究していると言うケットさんの所へ向かう。気は急いたが大事な手がかりが得られた。光の女王の謎とは何だろうか?
教えられた場所は二棟の大きな屋敷だった。国立の魔法研究施設でこの中にケットさんの研究室も有ると言う。
「俺ここに来たこと有るんだ。」
ヒボラが嫌そうに言う。
「精霊の守りの件か?」
「あぁ。」
「えっとここ大丈夫かな?」
「まぁ紹介状も有るし何とかなるんじゃないか?」
「俺は隠れていたいな……」
敷地に入って直ぐの看板に左の棟に受付が有ると書かれていたのでそちらに向かう。ケットさんに会いたいと紹介状を見せると差出人を確認された。
「クファル先生のご紹介ですね。ケット先生の研究室は2階に有ります。黄色の扉が目印ですよ。」
「はい、ありがとうございます。」
俺達は受付横の広い階段を登り黄色の扉を探す。大分色褪せていたが黄色の扉を見つけた。
「すみません、ケット先生はいらっしゃいますか?」
扉の外から声をかけると、中から俺達と同じ年頃の男が顔を出す。
「本日はどういったご用件でしょうか?」
「ケット先生ですか?」
「いえ、助手のクダナと言います。」
「ケット先生に直接お話をしたいのですが。紹介状も有ります。」
俺はクダナさんに紹介状を渡す。
「しばらくお待ちください。」
俺達は部屋に通され趣味の良い長椅子に座る。
クダナさんは更に奥の扉に入って行ってしまった。
「ヒボラ大丈夫?顔色悪いよ?」
「うん?あぁ。嫌なこと思い出したせいだな。」
「無理そうなら先に帰っても良いぞ。」
「大丈夫だ。」
俺達はケット先生が現れるのをじっと待つ。奥の部屋からは何か話しているだろう声が聞こえて来るが内容はわからない。しばらくしてクダナさんが一人で戻って来た。
「申し訳ありませんが明日また出直して来て頂けませんか?」
「はい、分かりました。宜しくお願いします。」
ヒボラが答える。少しお待ちくださいと言われ待っているとクダナさんが本棚から一冊の本を取り出した。
「紹介状は私も読ませて頂きました。精霊の道についてこちらを先にお読みください。明日先生と話すのにも参考になると思います。それは私が複写したものですが、貴重な本なので汚したり無くされない様にお願いしますね。」
「ありがとうございます。お借りします。」
俺達はケットさんに会うことが出来ずに建物を後にした。




