喉が渇いて
喉が渇いて目が覚めた。身体を起こすとノアタの長い髪が目に入る。窓から射し込む光はまだ弱々しい。ヒダッカも峰司もまだ寝ているな。
朧気な記憶をたどる。夕飯の時プロフ国の酒を呑んだ。透明な酒は香草の爽やかな香りがして舌が痺れるように強かった。
水を貰いに行くか。
「ふわぁ……」
あくびをしつつ階段を降りる。誰も居ない食堂に入り宿泊客の為に置かれている水差しを見つける。水をコップに注ぎ近くの席に座る。
去年の今頃はまだ一人で森に居たよな。狩りか採取か依頼を受けてた筈だ。それが今は神殿の町に居る。四人で旅をする何て想像もしてなかったな。新人の頃みたいに毎日ノアタと一緒にいられる。クイード師匠は酒が強くヒダッカと俺が酔いつぶれてノアタに介抱されるのがお決まりだった。今はヒダッカに大分負けている……
厨房から人の気配がしてきた、朝食の準備が始まったようだ。
喉の渇きを思い出し一気に水を飲む。
冷たい水で目が覚めた。
今日もやることは沢山だ。部屋に戻って三人を起こそう。
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峰司君、緊張しているなぁ。いつも美味しそうに食事をするのに今日は味も分かってないんじゃないかな。パンがポロポロこぼれているのに気付いて無さそう。
僕も精霊の守りを貰いに来た時はあんなだったかな?
お姉ちゃんの精霊の守りが羨ましくて僕は八歳になったら直ぐに神殿の町に来た。塔は今よりずっと大きく見えて緊張した。
背が伸びた分、塔を身近に感じるのかな?ヒボラは僕の背が伸びて追い越したとき悔しそうにしてた。ヒダッカはそんなことどうでも良いって感じだったけど。
久し振りに手合わせでもしたいな。ベアー討伐依頼を皆で受けて良かった。二人が頑張って成長しているのが分かった。僕だって成長してない訳じゃないと思うけど。まぁ手合わせは今日の成果次第かな。
精霊の道か……分からない事だらけでも三人で取り組めば何とかなる気がする。
「峰司君そろそろ行こう?」
「うん。」
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塔の間を抜け桟橋に着くと既に神官が待っていた。
「おはようございます。」
「おっおはようございます。」
「「「おはようございます。」」」
「峰司君かね?」
「はっはい!」
「私は神官のメーイールです。今日は宜しくお願いします。」
「よ、宜しくお願いします。」
峰司……緊張し過ぎだな。
桟橋には何艘もの船が並ぶ。神官に乗船する船に誘導された。船上では水夫だろう、男が一人作業をしている。船に渡された板を渡り俺達が船に乗り込むのを手伝ってくれた。俺達四人とメーイールさん、水夫で満員の小さな船だった。それぞれ席に座り水夫の作業を見守る。帆を張り出航の準備は出来た様だ。
「出発しますよー。船縁に掴まって下さいね!」
水夫はにこやかに声をかけてきた。船縁を片手で掴み上半身をしっかり起こす。船の揺れが体に伝わる。俺達を乗せた船はゆっくりと桟橋を離れ湖に滑り出した。
「今日も良い風が吹いてますよ!」
水夫はロープを器用に操りながら船の皆に声をかけてくれる。早朝の風はかなり冷たいがマントを羽織っているので寒いと言うより気持ちが良かった。
昨日買い物途中で見つけたマントを峰司に着せている。鶇村にはマントを着る習慣は無いようで荷物の中には無かった。トラシ町では必要な時だけロイのマントを借り、過ごしてしまったが。寒さが増す帰路にはなにかしら買っておこうとヒボラが言い出しノアタと選んでくれた。
多少の雨や雪ならば大丈夫なフードつきの物だ。峰司の髪の色に合わせて濃い茶色の生地で裾に模様が入っている。俺にはどれも同じように見えたがヒボラとノアタに何度も着せ替えられ納得するまで選んだ。
峰司はまた遠慮していたが決まったあとは少し顔を赤くして嬉しそうに礼を言っていた。
朝日が湖に反射して眩しい。ヒボラは子供見たいにはしゃいでいるな。ノアタも船から手を伸ばして飛沫に触ろうとしている。峰司は緊張した様子で船から神殿の方を見つめている。
神殿は湖に浮かぶ島って言われているが船から見ると小高い丘に木々が繁る森の様だ。
船旅はあっという間に終わり神殿の桟橋が見えてきた。
神官に続いて俺達も船から降りる。
峰司を送り届けたら俺達は精霊の道について調べる為、先に神殿の町に戻るつもりだ。
水夫に先に戻りたいと伝えると何度でも往復するよと頼もしい答えが帰ってきた。
少し坂道を昇ると葦原が見えてきた。10年以上前に来たときと何も変わっていないように見える。
「それでは、付き添いの方はここまでで。お戻りください。」
「峰司君頑張ってね!」
「はい。」
「格好いいフローライト見付けて来い!」
「……はい。」
「神殿の町で待ってるからな?」
「はい。」
メーイールさんの後ろを着いて歩いて行く峰司が見えなくなるまで見送った。
「行くか。」
「うん。峰司君凄い緊張してたね。」
「ああ。大丈夫かな……」
「峰司は心配無い。俺達も行くぞ。」
前に来た時にも有ったのだろうか?船に向かって坂道を降りて行くと小屋が有り、子供たちが帰ってくるまで付き添いがそこで待てる様になっていた。
神官もここで待機するらしい。どうやってか知らんが子供たちの様子が遠くに居ても分かる様になっているとヒボラが言っていた。
町へ戻ったら先ずはモーリット先生の知り合いの所に向かう。手がかりが少しでも見つかると良いが。
まぁ何事もやって見ないと分からん……出来ることから始めよう。




