ずっと黙って
「あの、最後にもうひとつ聞いても良いですか?」
ずっと黙っていた僕はノーマさんに話しかけた。
「はい。お伺いします。」
「精霊の守りを持って木のうろで一晩過ごすと別の国に行けるって信じてくれますか?」
しばらくノーマさんは考え込んでしまった。
「……精霊の道の事でしょうか?」
「「「「精霊の道?」」」」
「あの、実在するかはまだ研究中なのですが……そう言う物がかつて在ったと言われています。何故そんなことを?」
「いえ、何となく聞いてみただけです。な、ノアタ!」
「う、うん?」
「じゃぁ、明日桟橋に行けば良いですか?神殿へは四人で向かいたいです。」
「えっええ、その様に手配しておきますね。」
「宜しくお願いします。さ、帰るぞ。」
きょとんとするノーマさんを残し僕達は塔を出た。
「先ずは作戦会議をするぞ。」
塔を後にして人通りの多い道を抜ける。ヒボラの後ろを歩きながら僕達は困惑していた。作戦会議?先程のノーマさんとのやり取りを思い出す。
「ここにしようか。」
「うん。」
「はい。」
「構わんが……」
少し人通りの少ない場所で見つけた店に入った。
ヒボラに言われるまま席に着きそれぞれ飲み物を注文する。
「えっと急にどうしたの?」
「まぁちょっと待ってくれ。」
飲み物が運ばれて来るまでヒボラは難しい顔をしてた。それぞれに飲み物が運ばれてやっとヒボラが話し始めた。
「面倒に巻き込まれそうな匂いがぷんぷんした。」
「はぁ?難しい顔をして作戦会議なんて言うから何かと思えば……」
「いや、ヒダッカは分かってないぞ。俺は大真面目だ。俺は鶇村に遊びに行きたいんだ!」
「えっとどういう事ですか?」
「ノーマさんは精霊の道について研究中って言ってただろう?」
「うん。」
「はい。」
「ああ、それがどうした?」
「研究者って変り者が多いって知ってるか?俺は子供の時に珍しい精霊の守りを貰ってきたんだ。そしたら二週間も足止めされて入れ替り立ち替わり質問攻めに合ったんだぞ!」
ヒボラは凄く嫌そうに身体を震わせる。本当は見せたく無いんだけどと胸の革袋から精霊の守りを取り出す。
「へー色が変わるの?」
「虹みたい……凄くかっこ良いです!」
「……こんな物も有るのか。」
ヒボラの精霊の守りは沢山の色が順々に鮮やかな光を放つ。僕達に見せたあとはすぐに精霊の守りをしまった。
「あの、ヒダッカさんのお母さんの精霊の守りは桜色だったよね?他にも色んな色が有るの?」
峰司君の質問に僕も自分の精霊の守りを取り出す。
「僕のは黄金色だよ。他の色も沢山有ると思うよ?」
「ノアタさんのも綺麗ですね……オレヒダッカさんもロイ君も翠色だったから1色しか無いのかと思ってました。」
「うん?そうか、父さんのはノアタと一緒だぞ。」
「えっそうかぁ……」
「それはまあ良いとして、俺達が精霊の道を知ってますって言ったら研究者とか神官が出てきて面倒だろう?急いでいるのに何日も足止めされたら困るし。精霊の道を研究の為に封鎖します、とかになったら峰司も直ぐに帰してもらえるかも分からんし俺は鶇村に行けなくなるだろう。」
「う~ん、まぁそうかも知れないけど。結局何も教えてもらえなかったよね?」
「精霊の道って言葉だけでも手がかりが出来たじゃないか。峰司が魔力の勉強をしている間に俺達で調べようぜ。」
「まぁそれで良いが、とりあえず神官に直接聞くってのはしないって事だな?」
「ああ、そうだ。」
「そう言えばモーリット先生の知り合いがこの町に居るって教わりました。分からないことが有ればその人に聞くようにって言われました。」
「おぉそうか?それは頼りになるな。」
ヒボラの話しに驚かされた。いつも珍しい物を見付けて来るヒボラに似合う精霊の守りだけどね。研究者に面倒臭そうに答えてる子供の頃のヒボラが浮かんだ。
「何見てるんだよ。」
「あの、ヒボラっぽくて素敵な精霊の守りだったよ?」
「えっうん、まぁな。そっそれより今日は土産を買おうぜ。明日からは忙しそうだからな!」
「「「了解!」」」
僕達はその後神殿の町を楽しんで過ごした。




