慣れないベッドの
慣れないベッドの上で目を覚ました。昨日は一日馬車の移動だった。
道は緩い勾配こそ有るが殆ど平坦だった。座っているだけとは言え身体に振動は伝わり思っていたより疲れていたようだ。
ヒボラお薦めの食事を取り四人部屋の自分のベッドに入ると直ぐに眠ってしまった。
身体を起こすと空のベッドが目に入る。
峰司が居ない。トイレにでも行ったのだろうか?
起きて身支度を整える。
「おはよう。」
ノアタが起きた。その声に反応したのかヒボラも目を覚ました。
「ノアタ、ヒダッカおはよう。……峰司は?」
「おはよう。俺が起きたときは居なかった。」
「そうか。食堂か?」
「そうかもしれん、先に行くぞ。」
「ああ。」
「僕もすぐ行くね。」
階下の食堂へ向かう。朝食のパンを焼いているのか良い匂いがしてくる。まだ朝早いためか食事を取っているのは一組だけだ。窓際のテーブルに峰司は居た。何か書いているようだ。
「峰司おはよう。」
「あっヒダッカさんおはようございます。」
峰司は書いていたノートを慌てて膝の上に置いた。
「何書いてたんだ?」
「え~と、日記。」
「うん?そう言えば峰和に言われてたな。」
「昨日は疲れて書けなかったし。それと馬車の中じゃ書くの難しそうだから。」
「そうだな。」
俺達が話していると笑顔で宿屋の主人が食事を持ってきて良いか尋ねて来た。
連れも直ぐに降りて来るからと伝え四人分持ってきてくれるように頼む。
パンとスープが運ばれて来ると、ヒボラとノアタも丁度やって来た。
「おはよう。おっ今日も旨そうだな。」
「峰司君おはよう。」
宿屋の主人から今日のスープは干した魚のミルク煮だと言われた。それと焼いた胡桃の入った皿ををテーブルに置いた。スープに入れても旨いとの事だった。
「あの、少しですけど木魔法で育てた胡桃です。皆で一緒に食べたくて宿屋の方に焼いてくれるようにお願いしました。」
「へー遠慮なく頂くね。」
「胡桃が穣まで育てたのか。」
「知恵の実って言ってたな。」
ヒボラは早速胡桃に手を伸ばしスープに載せている。ノアタに俺、峰司も胡桃を載せる
「「「「いただきます。」」」」
この宿屋は魚の料理が旨いと評判らしい。今日も期待出来そうだ。ほかほかと湯気をあげるスープを口に含む。ミルクの優しい口あたりの奥に魚の旨味が感じられる。続けて胡桃を掬いスープと一緒に味わう。胡桃の香りが芳ばしく噛むとスープのコクを深めた。
「「美味しい!」」
「旨い!」
「旨いな。」
大満足な朝食を終え俺達は宿屋を出発した。
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「今日はこれを読め。」
「はい!」
峰司はやる気充分って感じで本を開く。
精霊の加護・三つの神殿って本を渡した。それぞれの国にひとつの神殿がある。
南のロブド国には火山の麓に神殿がある。火の精霊に愛されし国って云うのもそこから来ている。神殿は良質な鉱山となっていて貴重な金属もそこで取れる。冬の間に金属を掘り出し春から秋にかけては封鎖される。そして冬になるとまた金属を掘り出す。
不思議なことに掘った場所にまた金属が生まれていて掘り出す前の地形に戻っているらしい。また年によって埋まっている金属の種類も微妙に変わる。精霊の泉からは温かな水が湧き出しそこから出る川の流れ沿いの土地は冬でも凍らず人々を助けてるって事だ。
西のロブド国には森の奥深くに神殿がある。木と土の精霊に愛されし国って言うだけ合ってそこには超巨大な樹が生えている。回りを取り囲む森も大きな樹が育ち樹上に町が有るらしい。幻想的な佇まいは別世界に迷いこんだ様な空間らしい。
変わっているのが精霊の泉が樹の中に有ることだ。巨大な樹の根元奥深くに精霊の泉が湧き出しているそうだ。
そして俺達の向かっている水と風の精霊に愛されし国。フォス国の神殿。精霊の泉から湧き出した澄んだ水で大きな湖が出来ている。湖に浮かぶ島全体が神殿だ。神殿までは船で渡るが帆は風を受け止めてすいすいと進む。船に乗れるのを考えるだけでもわくわくする。
「ねぇヒボラ、相談が有るんだけど?」
「うん?なんだ?」
御者台から後ろへ移動してきたノアタが声をかけてきた。今日はヒダッカが御者をしてくれている。
「僕の弓にも魔法を使えないかと思って。アサシンチェイサーみたいに獲物を追いかける事って出来ないかな?」
「弓に仕込みをするのか?」
「どうかな?」
「う~ん、出来なくは無いけど……ノアタは命中率は元々良いし、風を纏わないで方向を変えるとスピードが落ちて威力が下がるんじゃ無いか?」
「そこを何とかヒボラ先生の力で!僕二本の矢を同時射ちする練習してるんだよね。でもそうすると命中率下がっちゃってさぁ。」
「二本同時射ちって……」
ノアタが顔を近付けてきた、声を潜めて話す。
「前みたいにウルフに囲まれちゃった時とかにさ。連射の速度も速めてはいるけど、同時に攻撃出来たら良いんじゃないかと思って。」
峰司に心配させたくなくて声を潜めたんだと分かっているがノアタの顔が急に近くに来て少し焦った。
「うっうん、そうか。何か考えて見るよ。とりあえず精霊の力を借りるのも覚えた方が良いな。」
「そうだね。いつの間にか皆成長しちゃって。僕も成長しなくちゃね。」




