歴史の本を
「ふぅ。」
歴史の本を読んでいた峰司君が大きく息を吐いた。僕とヒボラは会話を止めて峰司君を振り返った。
「峰司どこまで進んだ?」
「えっと3つの国が興った所までです。」
「そうか、何か質問は有るか?」
「戦が続いてた時は精霊はどうしてたんですか?」
「はい!僕も知りたいです、ヒボラ先生!」
「はぁ、そう言うの良いから……」
ちょっとからかっただけなのにヒボラに溜め息を吐かれた。
「え~僕も知りたいよ?」
「ノアタは習っただろう。俺が間違ってたら教えてくれ。」
「うん。良いよ先生。」
ヒボラが諦めたように話しはじめた。
「精霊は今も昔も変わらないって考えられてる。」
「えっと、今と変わらない?どういう事ですか?」
「当時も魔法は使われていた。力を使いたい奴が居れば力を貸してくれた。それで大地が傷付いても、何人が死のうとも。」
「……」
「100年の戦争が続けられたのも有る意味精霊が居たからって研究も有るくらいだ。休めば回復する魔力は強力な攻撃手段となり、武器や食料も魔法を使って短時間で作りあげる事が出来た。延々と続く戦い。殺し合いが100年って恐ろしいよな……」
「何で力を貸すのをやめなかったんですか?」
「それは分からん。ただ力を貸し続けてくれた。しかしその力はだんだん弱まっていったらしい。魔法の威力は落ち、植物は育たなくなっていった。」
「精霊が居なくなったらこの世界はどうなっちゃうんですか?」
「……滅びるかもな。100年戦争でも精霊は居なくなったんじゃなくて、弱まっただけだって話だ。精霊の護り手以外には見えないし、本当の事は分かんないけどな。」
「はい……」
「ヒボラ、精霊の守りの事話してあげてよ。」
「うん?ああ。戦争前精霊の守りはただ綺麗な石って思われてた。だが精霊の護り手が精霊の守りの事を精霊の力が宿っていると解き明かした。解き明かしたで合ってるか?」
「うん、そうだね。」
「えっとどういう事?ですか?」
「精霊の守りは精霊の力が何年もかけて蓄積された石って事だな。持っていると魔力の制御がしやすくなるし、威力も上がるみたいだ。」
「うん、それはヒダッカさんからも教わりました。」
「ああそうか。それとな、精霊の守りは人が精霊に守られてるってのともうひとつ意味が有る。」
「もう1つの意味ですか?」
「戦争が終って何年も精霊の護り手は精霊を癒し続けた。すると精霊の力が強く戻ってきた。その精霊の力を今度は人が守りますって意味だ。もう精霊を傷つけませんと言う誓いの印として渡される。」
「そうなんですね。えっとでもどうしたら良いんですか?オレ何度か力を借りてますけど……」
「そうだな、そこは難しい所だな。ノアタなんか良い例え有るか?」
「う~ん、難しいよね。僕なんか持っている魔力だけで過ごしちゃってるけど。一生精霊の力を借りませんって主義の人もいるし、攻撃魔法使いは殆んど借りてるんだよね。まぁ助けて貰うって思っていれば良いと言うか……」
「そうなんだよな……」
いつの間にか馬車が止まっていた。ヒダッカが御者台から声をかけてきた。
「人と自然が上手く共存するってのと同じ事だろう?木ノ実を採るとき俺達は全部は採らない。鳥や動物に残すって意味と種を残し増やすためだ。薬草を採るときも同じだ。ある程度の数は残し全部は採らない。根まで必要な時も全て掘らず残った根がいきられるように土を埋め戻す。どうだ?」
ヒダッカにも僕らの話しは聞こえてたみたい。
「凄く良い例えでなんかちょっと驚いたぞ。」
「うん?ヒボラ先生俺の事見直したか?」
「はぁ、それは本当に要らないからな!」
「えっと、ありがとうございます……ヒボラ先生?」
「良いね峰司君なかなかわかってきたね!」
「はぁ……で、ヒダッカ何で止まったんだ?」
「うん?ああ、町に着いたぞ。」
僕らは馬車から顔を出し道の先に見える川沿いの町。今日の宿泊地、トバリ町を眺めた。
「俺は宿屋を知らん。御者を変わってくれ。」
「俺が飯が旨い所に連れてってやるよ!」
「お腹すいた!」
「お腹空きました!」
僕と峰司君が同時に声をあげて顔を見合せて笑った。




