まだ日が昇った
まだ日が昇ったばかりの朝早い出発だったのに、父さんとロイは俺達を見送ってくれた。
「峰司君これ、精霊の守りもらったら使って、僕と父さんで作ったんだ!」
「えっ、ありがとうございます!」
峰司は大事そうに革袋を首から下げた。
俺と同じ革の袋だった。表にはベアーの手形が焼き印で描かれていた。裏には鶫村をイメージしたのか羽の焼き印が施されていた。
「へー格好いいな。」
「羽を作るのが難しかったんだよ、ロイが頑張ってくれてな。」
「へへっ。」
「あの、凄く嬉しいです!大切にします。」
「喜んでもらえて良かったよ。気をつけて行っておいで。」
「行ってらっしゃい!」
「はい!」
「ああ。二人も気をつけてな。」
精霊の神殿迄はタイミングよく馬車を乗り継げて五日程の道のり。しかし今回は馬車を借りられた為宿泊する以外の町には寄らず、三日程で進む予定だ。
往復四日余裕が出来た事になる。それでも峰司が知っておくべき事が学べるのに充分かは分からない。
町の入り口まで向かっていると途中でヒボラとノアタが乗った馬車が追いかけてきた。
「峰司君ヒダッカおはよう。」
「おはよう。乗っていきな!」
「おはようございます!」
「おはよう。良い馬車だな。」
馬車に乗り込み町を進む。力強そうな逞しい馬に幌つきの馬車だ。
ノアタと峰司は御者台に座り俺とヒボラが馬車の中に座る。
四人ぶんの荷物を載せて、更に四人が余裕で座れる広さが有った。
町を抜け道沿いの木立の向こうには収穫が終わった畑が見えた。牧草を苅って集めた物が干してある。遠くに森が見える、こうして見るといつもと何も変わらない森なんだが。その奥の異変を考え不安な気持ちになる。大丈夫だとは思うがなるべく早く帰ってこよう……
……馬車の御者台は凄く見晴らしが良かった。こんな大きな物を牽いているとは思えない速度で馬はずんずんと進んだ。
やっと精霊の守りを貰えるんだ。オレはそっと魔力を込める。どうして今まで見ることを嫌がっていたんだろう?ふわりと金色の暖かい光が目の前を横切っていく。きれいだな。しばらく精霊の飛ぶ世界を楽しんでいた……
「ノアタ御者を変わろうか?」
「うん。頼む。」
「峰司、ヒボラが魔法の授業をするって呼んでるぞ。」
「えっはい。」
…………………………………………
ヒダッカさんと席を替わり馬車に入るとヒボラさんが本を持って待っていた。
「峰司、これから神官と話しをするのに知っておいた方が良いものを探しておいたぞ。」
「はい。ありがとうございます。シュタリア大陸の歴史?」
ノアタさんが御者台から振り返りオレの本を見た。
「へー懐かしいね?学校の授業で読んだ本?」
「あぁ、学校に行って借りてきた。」
「そっかぁまだ知ってる先生居た?」
「ジャイノ先生覚えてるか?」
「もちろん覚えてるよ!歴史のお婆ちゃん先生だよね?」
「ああ、昔と全然変わってなかったよ。本もジャイノ先生から借りたんだ。」
「懐かしいね~」
「まぁな。峰司読んでみろ。読めない所とか意味が分からない所とか聞いてくれな。」
「はい。」
揺れる馬車のなかで本を読むのに少し苦労したけどいつのまにか本に引き込まれていた。
このシュタリア大陸の地図が大きく書かれていた。
海に囲まれた大陸には三つの国が有り北西にプロス国、南にロブド国、そして北東にこのフォス国が有る。
プロス国が一番大きく、高い山が有り木と土の精霊に愛されし国って。主な産業は木を使った加工品、果物、それと貴重な薬草が採れる事で有名だって。
次がフォス国。川が多く水と風の精霊に愛されし国って。主な産業は畑で採れる麦や牧畜が有名。
一番小さいのがロブド国。南の半分ほどが一年中氷に閉ざされた土地で火の精霊に愛されし国って。主な産業は金属の加工品と毛皮が有名。
それぞれ住んでいる人達にも特徴がある。
フォス国には身体の大きな茶色い髪、茶色い瞳の人が多い。
ロブド国は槐国に近いのかな?背は小さめで黒髪に黒い瞳の人が多い。
プロス国には金色の髪、青い瞳の人が多い。
「へー」
「どうだ?分からない所は無いか?」
「うん、今の所大丈夫です。」
「そうか。」
「えっと、南の国が寒いんですね?」
「どういう事だ?」
「槐国は大陸の北に有って南の方が暖かいはずなんです。」
「へーそう言えば季節も逆だったな。」
「はい。不思議です。」
「ああ。俺、絶対鶫村に行くよ。面白そうだからな!」
「はい楽しみです。神官様に聞いてみるんですか?」
「そうだな、何か知っていると良いんだが。」
オレ達が話してると馬車が止りヒダッカさんが声をかけてきた。
「一旦馬を休めるぞ。」
「あー疲れたよ。」
じっと座っているのに疲れたとノアタさんが馬車を降りオレ達も馬車を降りる。
いつの間にか道は川沿を通っていた。
馬車から馬を外し川の浅瀬に向かう。
ノアタさんが馬に水を飲ませ、汗の浮いた馬の身体を拭く。
オレも馬の側に行きたいけど……
「馬に触ってみる?」
「触っても良いんですか?」
「うん、馬の前から少しずつ近づいて来て。」
「はい。」




