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露程も知らない幻想組曲  作者: 熱帯長草草原地帯
第五章 護りたいもの
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ベアー討伐④

 夜間の警備を終えて休んでいた時だった。

 ユイムさんの声が家に響いた。


「ベアーが出ました!」


 罠に引っ掛かったベアーを追いかけてノアタさんが一人で森の奥に入っていったと言う。


「分かった。」


 既に出掛ける準備をしていたヒボラさんが後を追うと言う。

 オレも装備を整えようと起き出したが、ヒダッカさんに止められた。


「ベアーはノアタが倒せるだろう。峰司(ホウジ)は休め。」

「でも!」

「あの、ノアタさんは一人で倒せるからベアーを運ぶ手伝いをって言ってました。」


 ユイムさんは心配そうにしながらもそう言った。


「そうだな、峰司(ホウジ)は心配しなくて良いぞ。ノアタはベアーに遭遇してラッキーだったって事だな。」

「うん……」

「まぁ俺も一応着いていくか。峰司(ホウジ)は装備をして念のため柵の内側から他のベアーが来ないか警戒してくれ、それで良いか?」

「……分かりました。」


 オレは複雑な気持ちで装備を整え二人より遅れて養蜂場へ向かう。

 ベアーが討伐されればそれで良いんだけど……まぁ良かったのかな?

 養蜂場では巣箱の近くでユイムさんとテノンさんが何か作業をしていた。

 柵の中に入るのは初めてだった。どこに居たら良いのか分からず香りに誘われて金木犀の所に行く。


「ふぅ。」


 何回もベアーと遭遇したらって考えた。

 今も精霊の力を纏わせたクレイロッドがポケットに入っている。戦いに参加出来なかったからもやもやしてるのかな。

 そもそも蜂を守れれば依頼は成功なんだ……良かったに決まってる。

 あとは金木犀が咲いて花の密が集まるのを待つだけだし。


「はぁ。」


 なんか一気に気が抜けちゃったな。

 金木犀には蕾がぎっしりついて微かに香りを放ち始めている。あと少しで咲きそうだ。

 オレは思い立って金木犀の根元に座る。木魔法で花を咲かせてみよう。

 花が咲きたくなる栄養、栄養と口の中でつぶやきながら金木犀の幹に触れ魔力を流す。

 目を閉じて木の欲しいものを感じ取ろうとしてみる。精霊の力も借りて金木犀の根元に有る土から枝先まで栄養を届ける。

 どれくらい繰り返したか、突然ぶわっっと香りが強くなり目を開けると橙色の可愛い花がたくさん咲いていた。


「わぁ。」


 座った姿勢のまま金木犀を見上げる。満開の花で彩られた金木犀を見ていたら思い出した。


 ……凄く小さい頃、たぶん学校に入る前かな?近所で沙葉ちゃんと遊んでいた時。ふわって金木犀の香りがしてきた。くんくんと沙葉ちゃんが香りを追いかけはじめた。オレも香りがどこから来ているのか気になってわくわくしながら一緒に進んだ。

 どこをどう歩いたか覚えて無いけど濃い香りを放つ満開の金木犀に辿り着いた。オレ達は金木犀を見上げてその大きさと香りの強さに圧倒された。

 しばらくして帰り道が分からないのに気付いてしまった。沙葉ちゃんが不安そうにしてて、オレがなんとかしなくちゃって。

 沙葉ちゃんの手を握り帰りたいって強く思ったんだ。

 そしたら金木犀の周りが少し歪んでポウッって金色の光が幾つも浮かんでた。暖かくて優しい光だった。

 沙葉ちゃんは見えないって言ってた。ふわりって動き出した光を、手を握りあったまま追いかけた。金色の光は見覚えの有る村の入り口にオレ達を連れ帰ってくれた。

 どうして今まで忘れてたんだろう。その後に熱を出したからかな?

 コノカちゃんと読んだ絵本にも描かれていたな、あれが精霊か……


「きゃぁー」


 慌てて声をした方を振り向く。巣箱の近くでユイムさんとテノンさんがベアーと対峙していた。


「えっ何で……」


 どこからか入り込んだベアーが巣箱に向かっていく。テノンさんはへたり込んでしまっているようだ。ユイムさんは勇敢にもベアーに向かい手に持った鎌を構えている。

 オレは何度も思い描いた通りクレイロッドに風を纏わせてベアーに向かって投げた。


「アサシンチェイサー!」


 ベアーに当たったが距離が遠すぎて掠めただけみたいだ。ベアーはこちらを一瞬向いてなんだ?と言いたげに睨んだ気がした。けど直ぐに蜂の巣箱へ向って悠々と歩き出した。


「ふうぅ」


 このままじゃ蜂もユイムさん達も危ない。


「精霊助けてくれ!」


 すると視界が歪みポウッと金の光がオレの周りを飛んでいるのが視えた。クレイロッドに風を纏わせると幾つかの精霊も一緒にくるくると回る。魔力を籠めて力いっぱい投げつけた。


「アサシンチェイサー!!」


 飛んでいく間に精霊が次々吸い込まれギュルンッ!ギュルンッ!と加速していく。途中精霊がさらに吸い込まれ光の帯のようにギュルルンッ!!!と飛んでいく。


「ズドンッ」


 クレイロッドがカーブを描きつつベアーを貫いた。ベアーは歩みを止めどさりと地面に崩れ落ち倒れた。


「はぁ。」


 オレはがっくりと膝をついた。


峰司(ホウジ)!大丈夫か!」


 遠くでヒダッカさんの声が聞こえた。

 力を使いすぎて声の出ないオレは膝に力を入れて立ち上りユイムさんとテノンさんの元に向かう。


「「ヒダッカさん!助けてください!」」


 ユイムさんとテノンさんが大きく叫ぶ。

 ヒダッカさんは自分の背丈程もある柵を足蹴りひとつで飛び越して俺達の所に来てくれた。

 ベアーを見ると剣を引き抜き近付いて行く。ベアーが死んでいるのが確認出来たんだと思う。剣を鞘に納めベアーを仰向けにさせてた。おそるおそる3人で近寄ると地面に深く刺さっているクレイロッドを見せられた。


「もう大丈夫だ。峰司(ホウジ)良く頑張ったな。」

「うん。」

「なぜベアーが……」

「ああ、こいつはどこから入ったんだ?ノアタが倒したベアーだが魔法で出来た傷が無くてな。柵に触れたら魔法の傷が有るはずだろう?」


 そう言ってオレが倒したベアーの手を見せてくれた。爪の周りが焼け焦げた様になっていた。


「柵の傷はこいつの仕業だろうな。大きさも柵の傷の位置と合う。ノアタの倒したのは別のベアーだって気付いてな。俺だけ急いで戻ってきたんだ。」

「そ、そうでしたか。」

「こ、こ、怖かったです。」


 ユイムさんとテノンさんはショックを隠し切れない様だった。とりあえず蜂が怖がるからと巣箱から離れた所へベアーを運ぶ事にする。ユイムさんは青ざめた顔をしていたけどベアーの腕をヒダッカさんと一緒に引っ張っている。

 オレは情けないけど力が出ずテノンさんと一緒にただ二人に着いて行った。


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