ベアー討伐③
警備は4日目になった。
今日は雲が多い、午後には雨が降りだすかも。昨日も異変は無かった。金木犀は微かに薫っているけど蕾は青くまだ開いていない。このままベアーが出なければ良いけど。
朝になりヒダッカ達と警備を交替して、ユイムさんと一緒に歩いている。テノンさんは蜂の様子を見てくるって。
……ガシャンガシャンと遠くで音がした。ヒダッカの罠だ。
「確認してきます!ユイムさんは念のため柵の中に入ってから着いてきてください。」
「わ、分かりました。」
僕は警戒しながら走り出す。10分ほど進んで、音のした場所に着いた。既にベアーの気配はない。罠を確認すると確かにベアーが通った形跡が有る。匂い玉も上手く割れたようで森の奥から匂いが漂ってくる。
「ノアタさん!はぁっはぁっ……ベアーでしたか?」
「うん、もう森の奥へ逃げたみたい。僕はこのまま追いかけるからヒボラかヒダッカに着いてきてって伝言してもらえる?」
「良いですが……一人じゃ危なく無いですか?」
「大丈夫だよ。雨が降っちゃうと匂いが辿れないからこのまま追いかけるよ。応援は倒したあと重くて運べないからだよ。」
「そうですか……あの、お気を付けて。」
「うん。」
ベアーは大物だけど一人で倒した経験は有る。上手く気付かれずに追い付ければ攻撃を受けずに倒せるはず。
匂いを辿り山に分け入る。音がしてからそんなに時間は経っていない。近くにまだ潜んでいるか、どうかな?走って逃げたとしたらベアーはその巨体からは想像できない速さで進む。
後から追いかけてくれるヒボラかヒダッカが見つけられるよう印を付けながら進む。匂いの濃さから考えると、もう大分離されてしまっているみたいだ。音に驚いて走って逃げたかな。
ベアーが踏みつけて作った道を慎重に追いかける。休んでいるベアーに急に出くわさないとも限らない。
遠距離から弓で射って弱ったところを倒すのが僕のスタイルだ。
30分くらい追いかけた所で風向きが変った。
このまま追いかけると僕の匂いに気づかれてしまう。
ベアーが居るだろう位置の風下に回るように移動する。
「ガサッ」
見つけた。
弓に矢をつがえ慎重に狙う。
「ヒュンッ」
ガサッとベアーがよろめく。続けて矢をつがえたけど木が邪魔して狙えない。弓を構えたままベアーを射てる位置へ移動する。
「ヒュンッ」
もう一発矢を放つとベアーの動きが止まった。深く刺さっただろうか?そのまま数発矢を放つ。
剣を引き抜き構える。すこしづつ距離を詰める。
矢が背中に刺さったままベアーが腕を振り上げて来た。当たったら僕は吹き飛んでしまいそうな一振りだった。
半歩身体をかわす。攻撃を避けつつ踏み込んで通り過ぎざまに剣を振り抜く。距離を取ってもう一度ベアーと相対する。ベアーはもう動けないようだ、僕は痛みが長引かないように近づき止めを刺した。
「ふぅ。」
僕はベアーを見る。
130センチメートルくらいだろうか?若い雄のベアーだった。
背中に刺さった矢を引き抜き即席の橇に載せる。
「うん?」
ベアーを見て何か違和感を感じた。
背中と腹に傷をつけたけどそれ以外は傷もなく良い皮が取れそうだ。
違和感が何かを考えつつ応援が到着するのを待つ。
遠くから話し声が近づいてきた。ヒダッカとヒボラ二人で迎えに来てくれた様だった。
「おーい!ここだよ!」
「今行く!」
「怪我は無いか!」
茂みを掻き分け二人が到着した。
「おう、無事かノアタ!良いとこ取られちゃったな!」
「流石だな。」
「まぁね。」
二人ともベアーを見て安心してくれたみたいだ。
「このベアーなんか変な所有る?僕違和感があった。でもなんだか分からなくてさ。」
二人ともベアーに近づいて調べてくれる。
「若い雄だな。」
「130センチメートルくらいか?」
「ノアタの傷以外は綺麗なもんだが……」
「なんだ?」
二人とも思いつかないみたいだ。
「気のせいなら良いんだけど……」
思い出せそうで思い出せない……そんな感じの違和感だった。
「とりあえず引っ張って帰るか。」
「うん。」




