ヒダッカ(ひだっか)
「ヒダッカさんは何で狩人になったの?」
「さっきの話の続きか?」
俺と峰司はヒボラと別れ家に向かって通りを歩いていた。
俺の家からは養蜂場迄は徒歩で二時間以上かかる。
依頼中はユイムさん達の家で寝泊まりすることになる。
モーリット先生の家に泊まってしまった峰司は準備がまだだ。夜間警備に備え準備と仮眠をとる為一旦帰る。
「うん。ロイ君はスコットさんの跡を継いで靴職人になろうと思うって言ってたよ。」
「そうだな、ロイはそう言ってるな。峰司は果樹園で働くのか?木魔法を習ってるだろう?」
「まだ決めて無くて。木魔法はフォス国の大男に憧れたからだよ。」
「そうか、俺も狩人に憧れたな。」
「どうして?」
「うん?まぁ子供の頃の話だな。」
話をせがむ峰司に促されて久し振りに思い出しながら話し出した。
母さんが亡くなって少しした頃
俺が14歳ロイが2歳の時だと思う。
ロイがお母さんに会いたいって泣きやまなくて俺は困ってな。靴を買いにお客さんも来てたし俺が何とかしなくちゃって焦ってた。
森に母さんの好きな花が咲いている場所が有ってな。ワックスフラワーって言うんだ。知ってるか?小さな木で枝の先にピンクとか白のツヤツヤした可愛い花が咲くんだ。花を摘んでお墓に行こうと思ったんだ。母さんは眠ってもう起きないんだよってな。
今考えると小さい弟を連れて行くには森の奥過ぎたんだが、俺は森で良く遊んでいたし良い案に思えたんだ。
最初はロイも元気に歩いてたんだけど直ぐに疲れちゃって、帰ろうか?って聞いてもお母さんに会いたいって。しょうがないからロイを背負って花の所まで辿り着いた。
花を摘んだは良いけどロイを背負って帰る体力は無かった。
飲むものとかも何も持って来てなかったしな。
花を見てロイの機嫌が良かったのがせめてもの救いだったな。
俺は泣きたい様な気持ちで座って休んでた。
そしたら森の奥から人が出てきたんだ。
その日は良く晴れて居たのになんかずぶ濡れでな。通り雨に追いかけられてここに着いたって言ってた。
その人はクイードって名乗った、狩人だった。
濡れたマントを脱ぎながらこんな所でどうしたんだって言うから素直に話したんだよ。
親切な人でな、飲み物をくれて一緒に帰ってくれるって言うんだ。
大きな荷物を背負ってるのにロイを軽々と抱き上げて肩車してくれた。
ロイは肩車されてご機嫌だった。俺もほっとして、ただクイードさんの後を着いて帰った。
母さんが亡くなって俺も色々不安だった。森の中で途方にくれてた時、助けてくれた人を憧れるのは自然な事だった。
その時のクイードさんに弟子入りして俺は狩人になった。因みにヒボラ、ノアタの師匠も同じクイードさんだぞ。
「へー。だから3人仲良しなの?」
「まぁそうか?」
「それとヒダッカさん雨に良く降られるね?」
「ん?あぁ木のうろに閉じ込められた事を言ってるのか?」
「うん。クイードさんも通り雨に追いかけられてヒダッカさんの所に連れて来られたんじゃない?」
「どうかな……」
話をしていたらあっという間に家についてしまった。峰司の持っていくものを相談しそれぞれ夜の警備に備えて寝ることにする。
ベッドに入るが変な時間の為眠くは無い。こう言う時は身体を休め目を閉じていればいい。
先程の雨の話を思い出す。峰司には言わなかったが確かに雨には縁が有るかも知れない。
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子供の頃、森の中を通る川沿いにお気に入りの場所が在った。川を見下ろす少し大きな木に腰掛けるのに丁度良い枝があって。見晴らしも良くそよ風が吹き抜けて気持ち良い場所だ。
何でだかはもう理由は忘れたが俺は父さんと喧嘩して家を飛び出した。
お気に入りの場所に座っても怒りは納まらずもう家には帰るもんかなんて思ってた。
日が傾いてきて腹も減り始めた頃母さんが俺を探しに来てくれた。
母さんは俺を見つけると木の下に座って川の向こう側に沈む夕日を眺めてた。
俺は木の枝から降りて母さんの隣に座った。
母さんは喧嘩の事は何も言わなかった。
膨らんだお腹を触りながらヒダッカはお兄ちゃんになるのよって、守ってあげてねって囁いた。
俺は母さんのお腹にお兄ちゃんだぞ、遊んでやるから早く出ておいでって言った。
母さんは俺の頭を撫でてありがとうねって言ってくれた。
そしたらサァーって急に川の上に雨が降って、直ぐに止んだけど大きな虹が出た。
母さんは虹を見て森の祝福ねって嬉しそうに笑った。
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「さぁ行くか。」
「うん。」
予定の時間になり荷物を背負う。
子供の頃を思いだし弛んだ気持ちを締め直し気合いを入れる。
既にノアタかヒボラがベアーと対峙しているかも知れない。
峰司と二人暗くなった町を早足で進み養蜂場へ向かう。




