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露程も知らない幻想組曲  作者: 熱帯長草草原地帯
第五章 護りたいもの
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ノアタ(のあた)

 作戦会議の翌日。僕は朝早く家を出て養蜂場に向かった。ユイムさんテノンさんに自己紹介を済ませて、テノンさんの案内で養蜂場をぐるりと囲む柵の外側の小道を歩いている。

 柵は2メートルくらいの高さまで有る。木の板を横に並べた柵には隙間が有るので圧迫感はそれほどでも無いけど。

 柵にはベアーが触れると痛みを与える魔法が施して有るって言ってた。

 小道の下草は刈られ大人が3人くらい並んで歩けそう。

 ヒダッカが言ってた通り対策をしっかりしてるみたい。

「二人だけで下草を刈っているんですか?」

「ええ、隠れる場所が無いのは動物が嫌うって聞いて。」

「うん、そうですね。でも二人じゃ大変でしょう?」

「夏は特に大変ですよ。刈っても刈っても出てきちゃうから。でも蜂が頑張ってるから私たちも頑張らなくてはと思ってね。蜂蜜を待っててくれる人もいますしね。」


 テノンさんはぐっと拳を握り日に焼けた顔で笑った。

 ユイムさんテノンさんの蜂蜜は人気で予約分で完売しちゃう年も多くて毎年巣箱も増やしてるって。

 歩きながら手元に有るメモと照らし合わせ罠を確認する。

 これは、ヒダッカの罠だね。

 ベアーの通り道になりそうな場所に音が出る鈴と匂い玉が隠してある。ベアーが引っ掛かれば嫌いな音でここの場所から離れるだろうし、音が鳴れば僕たちが駆けつけられる。匂いがつけばベアーを追いやすい。中途半端に傷を付けると暴れたりすることも有るからこの罠は追い払うのが目的だね。

 さらに進んで少し開けた場所にヒボラの罠が有った。

 これは土魔法の魔方陣で中にベアーが入ると土壁が出来て檻になる。

 もしベアーに襲われたらここに逃げ込むとシェルターとしても使えるって。

 二人とも流石だな。

 狩人になりたての頃は罠なんて面倒って言って師匠に怒られてたのに。

 敷地を1周廻り異常がない事が分かった。

 テノンさんはホッとしたみたいだ。

 僕たちは一旦家へと戻ることにする。


「ノアタさんはどうして狩人に?」


 女性の狩人って居なくは無いけど珍しいらしく良く聞かれる質問だった。


「守りたかったから?かな。」

「守りたかった?」

「うん、ちょっと子供の頃にね。」

「良かったら教えてくださいませんか?」

「う~ん、別に良いけど面白くは無いと思うよ?」

「あら、主人とは色んな話をしながら歩くのよ。ご迷惑じゃなければ聞きたいわ。」


 僕は記憶を辿りながら話してみた。


 …………………………………………


 僕が学校に通っていた頃の話だよ。

 9歳の時かな?

 休憩時間に校庭で遊んでたんだ。

 夏の前だったと思う。天気も良くて学校の生徒全員が外に出ていたんじゃないかな?お姉ちゃんも上級生の子と遊んでいた。

 僕は今より体が弱くて、少し疲れて校庭の隅の木陰で一人で休んでたんだ。


 後ろからガサガサって音がしてさ。

 誰かな?って振り返って見たらシマシマノ可愛い動物が居たんだ。

 見てたら校庭の柵を潜ってこっちに来てさ。

 僕は可愛い!って触ろうとしたの。

 今考えるとワイルドボアー()の子供で危ない事なんだけど、その時は分からなくてさ。

 僕が近付いたのにビックリして「ギュヒッ」って鳴いて走って逃げていったの。

 皆が遊んでる校庭の方向に……大騒ぎになったよ。

 小型の犬くらいの大きさだったけど凄い勢いで走っていったから逃げる子、捕まえようとする子が居てさ。

 僕はどうして良いかわかんなくてその場に立って見てたんだ。


 そしたらお姉ちゃんが僕の方に走ってきて「ノアタ逃げなさい!」って叫んだんだ。

 えっ?って思ったら後ろからバキンッって音がして振り返ったの。

 大きな牙の生えたワイルドボアー()が柵に突進してきてさ、今にも柵が壊れそうだった。

 僕はお姉ちゃんの方に逃げた。

 後ろからガキンッとかバキボキッて音がしたけど怖くて振り返らなかった。

 お姉ちゃんが僕に走り寄って、手を引っ張ってくれて二人で走って逃げたんだ。

 怖かったよ。振り返らなかったけど、ドスドスって足音がどんどん近付いて来た。

 必死で走ったけど僕走るの速くなくて、お姉ちゃんのスピードについていくのがやっとで。

 もう追い付かれちゃうって思ったら足音が逸れていったんだ。

 お姉ちゃんがぎゅって握っていた手を弛めて少し走るのがゆっくりになった。

 お姉ちゃんを見るといっぱい走ったのに青ざめた顔をしててね。

 お姉ちゃんも怖かったんだなって。

 振り返ったらヒダッカとヒボラがワイルドボアー()と睨み合ってた。

 後で聞いたら追い付かれそうな僕たちを助けるために、石を投げつけて進行方向を変えてくれたらしいんだ。

 僕はどうすることも出来なくて睨み合いを遠くから見てた。

 そしたら今までどこにいたのか、ワイルドボアー()の子供が牙の生えたワイルドボアー()に近寄っていって体をくっ付け合ってさ。もう僕たちの事なんてどうでもいいって感じで森に帰っていったの。

 そのあと騒ぎの顛末を聞いた先生達が狩人を呼んで特別授業をしてくれた。

 子供の動物を見かけたら側に寄っていっては行けない。近くに親が居るはずだからって。子供を守るために普段は人に危害を加えない動物だって母親は必死に攻撃してくる。

 そんな感じの事を幾つか話してくれた。


 僕はお姉ちゃん、ヒダッカ、ヒボラに助けられたんだ。

 わざとじゃ無かったけど半分くらいは僕のせいで危ない目に合わせちゃったじゃない?

 今度は僕が助けてあげたいって強くなりたいって思ったんだ。

 あと、狩人さんの弓がかっこ良かったって言うのも有るかな?


 僕も久し振りに思い出してなんだか恥ずかしかったけどテノンさんは静かに聞いてくれていた。

 その後蜂の世話から帰ってきたユイムさんと一緒に昼食を食べて午後はユイムさんと見廻りに行く事になった。


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