鶇村とは違う
鶇村とは違う真っ直ぐな広い道、丁度帰宅の時間でたくさんの人が歩いている。一時はどうなるかと思ったが帰って来れたな。
……ここがトラシ町かぁ。
ヒダッカさんみたいに大きな人ばかりだ。
時々ヒダッカさんの家に向かうオレ達を馬車が追い越していく。
平らな地面に広い庭。小さな石を積み上げて作られた四角い家。色とりどりの屋根。嗅いだことの無い匂い。
わくわくする……
ヒボラに俺が居なかった間の事を聞きつつ家までのんびり歩く。峰司は大人しく着いてきているが、町の様子に興味津々な様だ。通りをいくつか曲がり、見慣れた家に着いた。庭の木戸を開けていると音に気付いたのか、家から人が出てきた。
「兄ちゃん!」
弟のロイが飛びついてきた。
「ただいま。どうした?」
「ウルフと戦ったんでしょう?心配してたに決まってるじゃないか!」
「俺はそんなに弱く無いだろう?」
「知ってるけど、何日も帰ってこないから。」
「そうか心配させて悪かったな。」
俺はロイの頭を撫でた。
「ロイ、まずは家に入ってゆっくり休ませておやり。ヒダッカおかえり。怪我は無いかい?」
玄関の入り口で父が声をかけてくれた。
「父さんただいま。怪我は無いよ、心配させてすまなかった。」
「怪我が無ければ良いんだよ。さぁ、入って。」
俺にくっついて離れないロイに続いて、ヒボラ少し後ろから峰司が家に入る。
「ヒボラ君ありがとう。ゆっくりしていっておくれ。」
「ああ、約束した通りだよ。なんかヒダッカが話も有るって言うしね、お邪魔するよ。」
「うん、本当にありがとう。ノアタちゃんは一緒じゃ無いのかい?」
「旨いもん買って来るって。」
「ああそうか、世話をかけるな。それと、どこのお子さんかな?」
「あの、はじめまして。峰司と言います。」
「いらっしゃい、峰司君。」
「父さんしばらく峰司を預かる事になった。客間を使って良いか?」
「うん?良いが少し片付けないとな。」
「兄ちゃん僕が片付けて来るよ!」
「そうか?」
「あの、オレもやります。」
「じゃぁ峰司君一緒においで。僕ロイって言うんだ。」
「ロイ君。宜しくお願いします。」
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ロイ君について暖炉の有った部屋を出た。正面と右に廊下が続いている。
正面へ進み左側がロイ君の部屋。通りすぎて曲がると左の扉が洗面場で右の扉がお手洗いと教えて貰う。
戻ってもうひとつの廊下を進むと突き当たりがヒダッカさんの部屋でその手前の左側の部屋が客間。
客間に入ると見たことのない道具や荷物がいっぱい有った。
「スコット父さんの仕事道具なんだよね。」
そう言ってロイ君は荷物をどんどん廊下に並べ始めた。
「えっと、外に出して良いの?」
「いつもの事なんだ。父さんの靴はね、歩き易くて格好いいんだ。でもたくさんの種類の革とか道具が必要でどんどん増えちゃうんだよね。」
荷物の運びだしを手伝いながら話す。
ロイ君もスコットさんを手伝って道具の整理をしているけど、直ぐにいっぱいになってしまうって。お客さんが来たら廊下に並べるのがいつもの事らしい。
スコットさんは腕の良い靴職人で遠くの町から買い付けに来る人も多いって誇らしそうに話してくれた。町には宿屋も有るけど買い付けに来た人には家に泊まってもらうらしい。
荷物を出し終わってからオレの物を置かせてもらった。ロイ君があちこち整えてくれてスッキリと広い部屋になった。
「あとは好きに使って良いよ。どのくらい居る予定なの?」
「試練を受けてから精霊の神殿に行くまでかな?」
「峰司君これから精霊の守りもらうんだ。楽しみだね。」
「ロイ君はもうもらったの?」
「うん、10歳の時にね。」
首にさげた革袋から精霊の守りを見せてくれた。
ヒダッカさんのと同じ様に翠に揺らめき綺麗だった。
「うゎぁ格好いい!」
「うん。へへっ。もう皆の所に行こっか?」
「うん。」
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ロイと峰司が部屋を出ていくと気まずい空気が流れた。
「お客さんはいつだって歓迎だが、訳ありそうだな?」
「ああ……なんと言うか、護衛依頼を受けたって所かな。説明は後でするよ。」
「何で森の奥であんな小さな子見つけたんだ?」
「いや、それも説明が難しくてな……」
立ち話をしているうちにノアタがやって来た。
「ノアタちゃん、世話になったね。ありがとう。」
「良いよ、おじさんこそ心配で疲れちゃったんじゃない?でもさ、無事を祝して今夜はいっぱい食べようよ!」
ノアタの両手にどっさり抱えた荷物から良い匂いがしてくる。
「良いね宴会にしようぜ!ヒダッカお前のあの酒呑ませろよ。」
「構わんがあれは強いぞ……話を聞く気は有るのか?」
「じゃぁ話をとっとと終わらせてから呑もう!」
「……ああ。」
父さんとノアタの指示のもと食卓が整えられ皆で席に着いた。
峰司とロイは部屋の片付けで直ぐに打ち解けたようだ。戻ってきて隣り合う席につく。テーブルにぎっしり並べられたごちそうがどんな料理か楽しそうに話している。
父さんが手を胸の前で組み、皆も同じように組む。
「ノアタちゃん、ヒボラ君本当にありがとう。ヒダッカおかえり、無事で良かった。峰司君我が家へようこそ。皆お腹がいっぱいになるまで食べよう!精霊の恵みに感謝して……いただきます。」
「「「「いただきます」」」」」
皆それぞれ自分の食べたい料理を皿に取り食べる。
ロイは皿を山盛りにして凄い勢いで食べてる。
峰司も細い割に沢山食べてるな。
俺の前には父さんの料理、羊と豆のトマトスープが置かれていた。
父さんが俺の好きな料理を作り、待っている間何度も温め直したのだろう。羊も豆も柔らかく煮込まれている。
「さぁヒダッカ説明しろよ。」
先程まで食事に夢中だった皆が一斉に俺を見た。




