陽が少し陰った
「世話になった。」
陽が少し陰った頃、俺達は梢に見送られて出発をした。
何故か旅装の峰司と一緒に……
「オレ、試練の泉に行く。」
峰司の部屋で身支度を整えているときにうっかり話してしまった俺が悪いのか……?
槐国には無い精霊の守りの話から試練の泉の話になってしまった。
試練の泉とはフォス国の有るシュタリア大陸のほぼ全ての人が一度は行く場所だ。
俺もそこに行って精霊の守りを手にいれた。
精霊の加護を受けたお守りには、魔力の制御を助ける働きも有る。
「まいったな……」
峰和もかなり乗り気だったな、自分もと言い出しそうな雰囲気だった。梢に止められてたが。
旅費の足しになりそうなものは有るかと見せられた中に槐国の通貨が有った。
槐国には良質な金山が有るらしく、フォス国へ持ち込めば驚く程の価値が有るものだった。
村の生活では通貨を使う機会があまりなく、峰司の為のわずかばかりの貯蓄だと言うことだ。
十分過ぎる旅費と案内料を渡されてしまった。
「辿りつけるかは分からんぞ。」
「その時は魔法の授業料と言うことにしてください。」
イェローツリーの依頼を失敗したばかりの俺にはありがたい申し出だ。
ウルフについての危険も伝えた。
それでも峰司の決意は堅かった。家から持ち出した光の無い精霊の守りを首から下げた。体と同じくらいの大きな鞄を背負いついてくる。
「もっと魔法を教えてもらいたいし、温泉にも連れて行ってもらうんだ。」
峰司は辿り着けない可能性や戻ってこれない危険等は感じていないようだ。
道を歩きつつ峰司と峰和の質問に答えながら進んだ。
見覚えの有るうろに辿り着いた頃には大分暗くなっていた。
改めて見ると大きな木だ。これが槐の木だそうだ。
国の名前にもなっているが、土地の守り木と言われているらしい。枝がいくつも高く伸びて細長い葉が繁っている。良く見れば白い花も咲いているようだ。
用意してきた2つの行灯に火を灯した。
ひとつはうろの出っ張りに置き、ひとつは峰和の帰り道を照らす。
「ヒダッカさん本当にありがとうございました。もし辿り着けたら峰司の事よろしく頼みます。」
「こちらこそ世話になった。梢やサワにもよろしく伝えてくれ。」
「はい、またいつでも遊びに来てください。」
「そうだな。遊びに来たそうな友人もいるから、そのうち皆で押し掛けるよ。」
「はい!待ってますよ。峰司、朝にまた迎えに来るからな。」
「フォス国に行かれなかったとしても、ひとりで帰れるよ。」
「分かってるが、母さんが心配するからな。」
「そっか。じゃぁ母さんにフォス国のお土産買ってくるって言っといて。」
「ああ。」
暗くなる前にと名残惜しそうにしながら峰和は帰っていった。
渡された弁当を食べうろの中で居心地の良い場所を整えて眠りにつく。
朝には本当にフォス国なのだろうか?




