表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
露程も知らない幻想組曲  作者: 熱帯長草草原地帯
第三章 旅立ち
PR
16/106

眠った峰司を

 眠った峰司(ホウジ)を見つめ(コズエ)がほっと息を吐く。

 起こさないように声をひそめ話す。


「とっても気持ち良さそうね。すごく楽しそうにしてたし。」

「そうだな、もう辛い思いをさせなくて済みそうだ。ヒダッカさん、本当にありがとうございます。」

「ヒダッカ様は峰司の命の恩人です。」


 二人が揃って深く頭をさげた。


「いや、出来ることをしただけだ。」

「そうは言っても、峰司はこれから良くなるでしょう。ヒダッカさんのお陰ですから。」

「私達は何もしてあげられなくて……」

「……そうか、良かったな。」


 頭を下げ続ける二人に俺はどう言おうか考える。


「俺には年の離れた弟が居てな。母が亡くなってから子育ての様な事もしてきた。二人の気持ちも何となく分かるからな。」

「そうでしたか。」


 二人は顔をあげて続けて言った。


「私達でお役にたてる事は無いでしょうか?出来ることなら何でもさせて頂きます。」

「……出来るだけ早く帰りたい。フォス国への道は伝わっていないのか?」

「もう……ですか?」

「母さん、ヒダッカさんのご事情もあるだろう……はい、道と言うか帰る方法は伝わっています。」

「そうか、良かった。」

「フローライトはお持ちでしょうか?」

「これの事か?」


 首に下げた革袋を引っ張り出す。

 中から精霊の守り(フローライト)を取り出す。


「おぉ」

「まぁ」


 川底で長年洗われた石のように表面はなめらかで、白っぽい楕円の石。

 その中心で翠の光が揺らめく。


「綺麗ですね!」

「これなら帰れますよ。」

「うん?どう言うことだ?」

「我が家に伝わるフローライトは光っていないのです。フローライトの光が消えたためフォス国へ帰れなくなったと。」

「消えた?」

「はい、なぜ消えたのかは伝わっていないのですが……」

「……他の精霊の守り(フローライト)は?」

「光っているフローライトは見たことが有りません。」

「そうか……光る精霊の守り(フローライト)をどうするのだ?」

「光るフローライトを持って(さいかち)のうろで一晩過ごすそうです。通っていらっしゃったのですよね?」

「あぁ……」


 何で一晩過ごすと別の場所に……

 聞いても訳が分からない、自分で体験してしまったから信じるしかないが。

 あれがサイカチ()か、はじめてみた木だったな。

 ごつごつとした暗い灰色の樹皮でうろの中は少し赤みの有る木だったような。


「若いときに何度か試した事が有るので場所も分かります。」

「試したのか?」

「はい、たぶん一族の者はほとんど試した事が有ると思います。」

「そうか……」


 峰和(ミネカズ)は若気の至りですと照れ臭そうに笑う。


「夜までにご案内しましょう。」

「ああ、頼む。」


 良かった、時間はかかってしまったが。

 不思議な経験だったな。帰れると分かれば楽しかったと言える。

 フォス国に戻って話したら、ヒボラは俺も行きたいなんて言い出すだろうな。

 峰司(ホウジ)が起きるまで三人でとりとめなく話をしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ