眠った峰司を
眠った峰司を見つめ梢がほっと息を吐く。
起こさないように声をひそめ話す。
「とっても気持ち良さそうね。すごく楽しそうにしてたし。」
「そうだな、もう辛い思いをさせなくて済みそうだ。ヒダッカさん、本当にありがとうございます。」
「ヒダッカ様は峰司の命の恩人です。」
二人が揃って深く頭をさげた。
「いや、出来ることをしただけだ。」
「そうは言っても、峰司はこれから良くなるでしょう。ヒダッカさんのお陰ですから。」
「私達は何もしてあげられなくて……」
「……そうか、良かったな。」
頭を下げ続ける二人に俺はどう言おうか考える。
「俺には年の離れた弟が居てな。母が亡くなってから子育ての様な事もしてきた。二人の気持ちも何となく分かるからな。」
「そうでしたか。」
二人は顔をあげて続けて言った。
「私達でお役にたてる事は無いでしょうか?出来ることなら何でもさせて頂きます。」
「……出来るだけ早く帰りたい。フォス国への道は伝わっていないのか?」
「もう……ですか?」
「母さん、ヒダッカさんのご事情もあるだろう……はい、道と言うか帰る方法は伝わっています。」
「そうか、良かった。」
「フローライトはお持ちでしょうか?」
「これの事か?」
首に下げた革袋を引っ張り出す。
中から精霊の守りを取り出す。
「おぉ」
「まぁ」
川底で長年洗われた石のように表面はなめらかで、白っぽい楕円の石。
その中心で翠の光が揺らめく。
「綺麗ですね!」
「これなら帰れますよ。」
「うん?どう言うことだ?」
「我が家に伝わるフローライトは光っていないのです。フローライトの光が消えたためフォス国へ帰れなくなったと。」
「消えた?」
「はい、なぜ消えたのかは伝わっていないのですが……」
「……他の精霊の守りは?」
「光っているフローライトは見たことが有りません。」
「そうか……光る精霊の守りをどうするのだ?」
「光るフローライトを持って槐のうろで一晩過ごすそうです。通っていらっしゃったのですよね?」
「あぁ……」
何で一晩過ごすと別の場所に……
聞いても訳が分からない、自分で体験してしまったから信じるしかないが。
あれがサイカチか、はじめてみた木だったな。
ごつごつとした暗い灰色の樹皮でうろの中は少し赤みの有る木だったような。
「若いときに何度か試した事が有るので場所も分かります。」
「試したのか?」
「はい、たぶん一族の者はほとんど試した事が有ると思います。」
「そうか……」
峰和は若気の至りですと照れ臭そうに笑う。
「夜までにご案内しましょう。」
「ああ、頼む。」
良かった、時間はかかってしまったが。
不思議な経験だったな。帰れると分かれば楽しかったと言える。
フォス国に戻って話したら、ヒボラは俺も行きたいなんて言い出すだろうな。
峰司が起きるまで三人でとりとめなく話をしたのだった。




