峰和(みねかず)
……驚いた。こんな峰司は見たことがなかった。
峰司の頬に赤みがさして目が輝いている。
希望を持つというのはこう言う事を言うのだ、って感じか?
峰司はいつもはじめる前に諦めていた。
やってみろと言えば素直にやる、それなりに器用にこなす。
が、ただそれだけだ。
反抗的ではない、ただ興味を持てないのだ。
思えば寝込んだときも辛さを訴えず、ただただ衰弱して行くのだ。危機が通り過ぎるのをじっと待つ。
私が最初不安に思っていたのは、
“どうせ死んじゃうんだから何をしてもしょうがない。”
なんて峰司が考えてるんじゃないかって事だ。
だがそう言う意味でも無さそうだった。ほどほどに頑張ろう。
そんな風にいつもどこか遠くから自分を見つめているようだった。
もしかしたら見える力で何かを悟っていたのかもしれない。
力の事を聞いても幼い時は怖いとしか言えず。
大きくなってからは黙ってしまう。
いつか私が頼れる男になれば話してくれるだろうか……
唯一興味を示したのは5歳の頃。
遊びに来た梢の兄が吹いていた横笛。
自分も吹いて見たいと言い出した。
大人用では音を出すことが出来ず、行商人から子供用の小さな物を購入した。
峰司は夢中になった。今も時々峰司の部屋から小鳥が歌っているような横笛の音色が聞こえて来る。
だが横笛を吹いている時でさえあんなに目を輝かせている事はない。
今はヒダッカさんと初めての魔法は何にするか相談中だ。
魔法の種類、名前、効果、発動の仕方を熱心に聞いている。
「クリエイトを覚えたら良いと思うぞ。」
「「クリエイト?」」
私と峰司が同時に訊ねた。
「何も無いところから、魔力で水や火、石等を創るんだ。
俺は魔力が少ないから出来ん、クリエイトは魔力をごっそり使うからな。だが魔力が余っている峰司にぴったりだと思う。」
「魔力は休めば回復する、その度にまた魔力が詰まってしまわないようにって事でしょうか?」
「そうだ。ただどれくらい魔力を練り込めば良いのかわからん。多すぎると危ないしな……」
「じゃぁ風をおこしてみようかな?空に向かって放てば危なく無いよね?」
「そうだな、それが良いかもしれん。」
最初に風魔法を使ってみる事にした。
「ウィンド」
そよ風がおこる魔法だ。
練り上げた魔力を少しづつ風に換えて行くらしい。
峰司は両手を空にあげ呪文を唱えた。
「ヒダッカさんたぶん出来てるけど、これどのくらい出てるか見えないね……」
「……そうだな。」
「人や木に向けるのは危ないですかねぇ……
地面に向けて放ってみたらどうでしょう?草や砂が動くのでは?」
「峰司、魔力はまだ練れそうか?」
「うん、やってみる。」
峰司は両手を地面に向けて魔法を放った。
「ウインド」
私とヒダッカさんは峰司から少し離れて向かいに立っていた。ウインドで巻き上げられた砂や草が勢い良く吹き付けてきた。
慌てて両腕で顔を覆い避ける。
土埃がおさまり顔を出すと、峰司は空を飛んでいた……




