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『ETERNAL』  作者: 千筆拓
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21/30

第21話:『愛の熱量と揺るぎない特別シート』

いつも『ETERNAL』をご覧いただき、誠にありがとうございます。

前話では、雨の月曜日、周年イベント初日に駆けつけた昇吾と、体調不良を押して笑顔を見せる杏菜の切なくも甘い夜を描きました。

第21話となる今回は、昨夜の心配を胸に抱えながらも、再び「ETERNAL」へと足を運ぶ昇吾の物語です。大盛況を極める周年2日目の喧騒の中、体調を回復させた杏菜が見せる「完璧な可愛さの更新」と、昇吾の手を強く引く堂々とした誇らしげな佇まい。

フィクションのドラマや映画を超えた、二人の深く濃厚な熱量をどうぞお楽しみください。

冷たい雨が静かに降り続いていた翌朝、昇吾の胸を締め付けていたのは、体調を崩してトボトボと見送りに来た杏菜の弱々しい表情だった。


病院へ向かった彼女からの報告に一度は胸を撫で下ろしたものの、待ち時間の長さや体の疲労を思えば、心配が消えることはない。「無理はしないで」と言い含めながらも、彼女が周年の重圧と悔しさから、今夜も店に立とうとしていることは分かっていた。


「家に居た方が悔しくて体調悪くなりそうだから」

LINEに躍るその健気で意地っ張りな文字に、昇吾の腹は決まった。

前夜、彼女の体を案じて潔く退店させたことへの埋め合わせでも、営業への義理でもない。ただ、無理をして戦場に立つ彼女の隣に、誰よりも頼もしい味方として居続けるために――昇吾は再び「ETERNAL」の重厚なドアを開けた。

 


初日の閑散とした空気とは打って変わり、周年2日目の店内は熱気と熱狂の渦の中にあった。

飛び交う高額シャンパン、眩い照明の明転、そしてフロアを行き交う黒服たちの慌ただしい足取り。大盛況を極める賑わいの中で、昇吾は奥のテーブルへと案内された。

そこへ現れた杏菜の姿に、昇吾は思わず目を細めた。

体調を崩していたとは思えないほど眩しい笑みを浮かべ、少しメイクの乗った頬を緩ませて駆け寄ってくる。その胸元や髪には、昨日昇吾が彼女のために、あるいは彼女が昇吾のために愛おしく結び直したボトルのリボンが、まるで二人だけの絆の象徴のように揺れていた。


「昇吾さん……! 本当に来てくれたの……? まさか今日も隣に居てくれるなんて思わなかった……」


大盛況のフロアの喧騒を忘れてしまうほど、彼女の瞳は潤み、素直な歓喜で輝いていた。昨夜の申し訳なさや悔しさを一瞬で吹き飛ばすような、完璧な「可愛い」の更新。


「約束しただろ。隣にいるって」


昇吾が静かに微笑むと、杏菜は昨日の強がりが嘘だったかのように、キュッと距離を詰めて体に寄り添ってきた。


「本当に助かった……」

と呟く彼女の声には、大勢の客に囲まれる夜の世界で、昇吾という絶対的な安全地帯を得た安らぎが満ちている。


フロアのあちこちで派手なコールが鳴り響く中、昇吾の席だけは不思議なほど上質で濃厚な空気に包まれていた。周りのキャストやヘルプの女の子たちが通り過ぎるたび、羨望の視線を投げかけてくる。


「ねえ、昨日美羽さんから昇吾さんの男前エピソード聞いちゃったんだから」


「ん? 何聞いたの?」


「内緒! 次会えた時話すね、でもね、私『昇吾さんって本当にカッコいいんだよ!』って、美羽さんに思いっきり自慢しちゃった」


照れくさそうに、けれど最高に誇らしげに胸を張る杏菜。その無邪気な自慢と愛くるしい焦らしに、昇吾は大人の余裕を湛えた笑みで応えた。

 

大盛り上がりの店内、忙しない狂騒の中で、昇吾は営業終了の最後の瞬間まで彼女の隣を守り抜いた。

見送りのために昇吾が席を立つと、杏菜はためらうことなく、周囲の視線も気にせずぎゅっと昇吾の手を引いた。

フロアを通り抜け、入り口へと向かうその足取りは、昨日までの弱々しさが嘘のように力強く、あまりにも誇らしげだった。

店内中の誰もに分かるように「この男の隣にいるのは自分だ」と誇示するかのような、堂々とした凛強い後ろ姿。


……ああ、また1つ恋をしてる


自分を誰よりも引き立て、最高の男として胸を張って歩いてくれる彼女のまっすぐな誇りと強さ。手繰り寄せられた手から伝わる確かな体温を感じながら、昇吾は心の中で静かに呟いた。

こんなにも愛おしく、誇らしい姿を見せつけられて、また一つ、深く彼女に恋をしてしまった。

どんなドラマも映画も遠く及ばない本物の熱量が、二人の夜をどこまでも甘く、深く満たしていた。

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