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『ETERNAL』  作者: 千筆拓
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第15話:『言葉の温もりと、独占の理由』

「悪夢からもちゃんと守るからね」——その一言が二人の夜をより一層甘く、深く染めていく。

杏菜から明かされたのは、胸の奥に秘められていた一途で切ない独占欲と、彼を想うが故の真摯な理由。

指名客への営業ではなく、一人の女としての本音をぶつけてくる彼女の愛おしさに、昇吾は圧倒的な包容力で応えていく——。


悪夢から守るという約束を残したその夜、杏菜からの返信は二人の心の距離をさらに一歩、深く縮めるものだった。


『昇吾さんからもらったハンカチ使って頑張ったよ』


画面に浮かぶその文字を見た瞬間、昇吾の口元が自然と緩む。


彼が贈ったささやかなハンカチは、いまや夜の不夜城で戦う彼女にとって、何よりの心の支えであり、特別な「お守り」へと変わっていた。


そして、彼女のメッセージは続いていく。


『昇吾さんには悪夢なんて見て欲しくないな。楽しい夢だけずっと見てほしい』


自身も日常的に悪夢にうなされがちだと言っていた彼女が、真っ先に願ったのは昇吾の安らぎだった。自分を守ろうとしてくれる男へ向ける、溢れんばかりの純粋な慈愛。


『私が夢にでてくるの!? 嬉しいな MISIAの「眠れぬ夜は君のせい」って曲で、今夜夢の中どうか逢いにきて、って歌詞があるんだけど、素直で切ない願いが可愛くて好きなんだ』


ロマンチックな歌詞を引き合いに出しながら、遠回しに「逢いにきてほしい」と甘えてくる彼女。その愛くるしさに胸を撫で下ろしたのも束の間、彼女は前回の店での出来事について、ずっと胸に溜め込んでいた本音を明かし始めた。


『ヘルプの子が昇吾さんに頂いたお酒を残す事にむっとしてしまうのは、確かにプロ意識なのかも知れないけれど……自分はシャンパン目の前にお茶吸ってるのに!って感じだよね』


『でもなんて言ったらいいのかな、私以外の女の子が、私の大切な昇吾さんがくれた親切に対して誠意がないのは嫌なんだ。ワガママだけど、許してね。』


夜の街のルールやプロ意識という言葉で誤魔化していたものの本質。


それは、「大切な昇吾さんが見せた優しさや誠意を、他の誰かに無駄にされたくない」という、どこまでも純粋で強烈な彼女の独占欲だった。


他のお客の前では決して見せることのない、一人の女としての剥き出しの執着と本音。それを「ワガママ」と捉えて恐る恐る明かしてくる健気さに、昇吾の胸の奥が熱く焦がされる。




翌日の午後、慌ただしい仕事の合間を縫って、昇吾は指先を滑らせた。


インフルエンザによる欠員で急遽現場が極度に多忙を極めたこと、そんな怒涛の状況すらも楽しんで予算を達成させたという、男としての頼もしい実績を静かに添えながら。


「夢によく出てきていつも可愛いよ MISIAの『眠れぬ夜はきみのせい』聞いてみよう」


彼女の甘いおねだりを余裕たっぷりに受け止め、続けて彼女の青く切ない本音を丸ごと包み込む言葉を紡ぐ。


「杏菜のプロ意識を尊敬してるよ、いつも大切に思ってくれてありがとう ワガママなんて思ってないから安心してね」


彼女が抱く嫉妬も、独占欲も、すべては自分を「特別」だと認めているからこそ。


「 予算達成出来たのも杏菜の応援のおかげだね、ありがとう」


自分のフィールドで圧倒的な結果を出しつつ、その成果を彼女の存在へと還元してみせる。


甘やかすだけではなく、己の格を示し続けながら彼女の居場所を確固たるものにする——それこそが、一途に追いかけてくる杏菜の誇りを守り、引きつけ続けるための昇吾の流儀だった。


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