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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第20章

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第594話 歴史編纂のために各地を奔走(青き亜人とマリア、ローゼンの手記)

 今日もゼロ距離ドア付近に居るフリアマギアさんに声をかける。


「フリアマギアさん、今暇ですか?」

「ドアの研究に勤しんでますけど?」

「ちょっと私のお願いを聞いてもらえませんか?」

「珍しいですね、アルトラ殿から私にお願いなんて。何ですか?」

「エルフヴィレッジに行きたいんです。私一人で行っても門前払いされると思うので、フリアマギアさん同行してもらえませんか?」

「ええぇ……」


 露骨に嫌そうな顔になったわ……


「そ、そんなに嫌なんですか!?」

「じい様と顔会わせたくないんで……顔会わせる度にお小言言われるますから」

「お願いします! エルフヴィレッジにちょっと用があるので!」


 手を合わせてお願いする。


「何しに行くんですか~?」


 すげぇ投げやりな態度に変わった……

 顔があさっての方向向いたし……一瞬で死んだ魚のような目に……


「今、この地の歴史の編纂をしてて、どうやらエルフヴィレッジに中立地帯に関する資料があるそうなので」

「あ、ああ……アレか、確かにありますよ。確かブックマンさんが書いた旅行記の一種だと記憶してますが」


 それが何なのか把握してるのがすげぇ……


「殴り書きしたような手記で、紙の束を紐で括ったものなんで本ではないですが」

「そうですそうです! その資料を読みたいんです!」

「…………まあ良いですよ。アルトラ殿には悪巨人強盗団(マリスティターン)逮捕に協力してもらったっていう借りもありますし。ただ、読んだのも何十年も前なんでカビたり、虫食ったりしてるかもしれませんよ?」 (『悪巨人(マリスティターン)強盗団』については第520話から第540話参照)

「それでも読みたいんです!」

「それにあの読み物、どうやら続き物らしくて上巻に当たるものがありませんけど……」

「ああ、上巻は既に読んだので大丈夫です」

「上巻見つけたんですか!? どこに!?」


 途端に食いつきが良くなった。

 雷の国で禁書扱いだから把握してなかったのかな?


「じゃあ、交換条件ってことで。私はその上巻の在り処を教えます。フリアマギアさんは下巻を私が見られるようにお手伝いしてください」

「分かりました。じゃあ行きましょう。クリストくん、パトリックくん、私の研究道具片付けておいて」


「「 了解しました 」」


   ◇


 エルフヴィレッジの門前に転移してきた。


「あれ? ここエルフヴィレッジの門前じゃないですか。空間移動魔法なんですから、わざわざ正門を通らなくても村内に直接出現すれば良いと思うんですけど?」

「が、外交問題になる可能性もありますから」

「そんなこと気にしなくても良いと思いますけど?」


 いやダメでしょ。一応エルフヴィレッジって村規模しかなくても樹の国の属国だって言うし、ただでさえ排他的な場所なのに、そんなことしたら後々どんな騒ぎになるか……


「ちょっと待っててくださいね」


 と言ったと思ったら、門を守るゴーレムに近付いて何かを始め――


「ああ……やっぱり書き換えられてる……面倒だな!」


 ――という独り言の後、すぐにこちらへ戻って来た。


「何したんですか?」

「ゴーレムの命令を書き換えたんですよ。そのままだと私も排除対象なので」

「え!?」

「前に来た時に私が入れるような設定に書き換えたんですが、再度書き換えが行われたみたいでまた排除対象になってたので」

「ここの出身なんじゃないんですか!? 確か族長の孫娘って……」

「ここ出て行ってもう長いので、私もよそ者扱いですよ」

「そ、そうなんですか……」


 デスキラービー騒動があったにも関わらず相変わらず排他的だ…… (『デスキラービー』については第332話から第354話参照)

 果たして、私が行って目当ての本見せてもらえるかな……?


 村に入るための第二の門へ向かって歩を進めると、村の門衛二人がフリアマギアさんに気付いた。


「あ! フリアマギア! またゴーレムの命令を書き換えたのか!?」

「何十年も音沙汰無かったのに最近よく来るな」

「今日は私の用事ではないけどね。さあ、アルトラ殿、さっさと用事済ませて帰りましょう、二人はじじいに報告しないように! またお小言言われるから」


 ビシッと指さして、エルフの門衛二人に伝える。


「「 へいへい 」」


 私は申し訳なさそうに二人に頭を下げながら門を通過。

 村内にある書庫へと案内してもらった。


「あら? フリアマギアちゃん、帰って来たのね。何十年振りかしら?」

「叔母さん、こんにちは。いえ、ちょっとの滞在ですよ。すぐ帰ります」


 『何十年振り』なのに、大して驚いていない……流石長寿命種……


「父さんには会って行かないの? 久しぶりなんでしょ?」

「つい先日帰って来たばかりですよ (第461話参照)。その時に顔も会わせました。あのじじいはお小言うるさいんで、帰って来てること言わないようにしてください」


 敬語で話してるが、あっちもフリアマギアさんも大して年齢に違いが無いように見えるんだが……叔母さんって言ってたから……きっと何十年も年上か?

 このヒトから見てお父さんって言うと……多分族長のシルヴァンさんのことだよね?


「ど、どうも……」

「こんにちは」


 と言いながらニコリとしたが、すぐにちょっと冷たい目に……排他的なのはいまだ変わらないらしい。

 フリアマギアさんと共に訪れたからここまで来れたけど、一人だったらやっぱり無理っぽかったな。


「あの方は?」

「私の叔母で、この書庫の管理人ですよ。一応危ない紋章術とか書かれた書物もあるので、持ち出されないように管理してるんです」

「そんなとこに私が入って良いんですか?」

「まあ、通してくれたんで問題無いでしょう」


 書庫に入るとすぐに本を漁るフリアマギアさん。


「え~と……位置が変わってなければ確かこの辺りだったと思うんですが………………ああ、あったあった。これですね」


 パンパンと被っていた埃を払いながら渡してきたのは、予想通り本ではなく紙の束を紐で留めたもの。

 カビては……いないな。


「じゃあ私も適当に本を読んで時間を潰しますんで、読み終わったら声をかけてください。書庫のどこかに居ますので」

「はい」


 早速読んでみる。

 タイトルは『禁忌の土地で出会った青き亜人』と殴り書きされている。

 冒頭に『前回の赤き亜人と過ごした体験記は雷の国で取り上げられてしまった』と書いてあり、やはり検問で没収されてしまったらしきことが分かった。

 つまり、ここにあるものはその続きということだ。

 日付は『九千四百十九年』。さっきメモした資料を見てみると、上巻に当たるものは『九千三百六十九年』。


「ってことは……え~と……前回から五十年後!? ず、随分時間が開いてるけど、それでも『前回』なんて書き残すんだな……」


 流石エルフ……時間感覚が私たちと違う。

 今回はやはり青き亜人と数日過ごした体験が綴られている。


 この体験記によると、どうやら川のもっともっと上流に集落があるらしい。

 そして、トロル族の例に漏れず、初回は襲撃されたとのこと。そして、やはり『頭が悪い』と書かれている。

 見た目は赤き亜人をそのまま青くしたような感じだが、水辺の生物を食料としていたらしく、手足が水に適した進化をしていて少しだけヒレのようなものがあるとか。

 ただ、人魚のような水棲亜人とは違って水中で呼吸はできないようである。

 主に川、少数は海などの水域に分散して住んでおり、魚などの水棲生物を獲って暮らしているらしい。火は使わず魚を生のまま食べるから、クジロカノンさんの感想では『食生活は生臭くてあまり好ましくない』とも書かれている。

 火魔法を用いて、焼き魚を振る舞ったら喜ばれたというような記述も。


 上巻 (五十年前の体験記)は同異種族とたまに衝突するような描写があったが、この下巻ではそういった描写は出てこない。

 これに描写が出てないことについては、クジロカノンさん自ら周辺調査に行ってるようだ。

 曰く、五十年前は比較的近くに居た三種族が分散しているようで、これが衝突しなくなった理由ではないかと書かれている。


「つまり……グリーントロルはこの五十年の間に赤龍峰の麓へ移ったってわけか。ブルートロルも同様にもっと北の水の国寄りのところへ居を移したのかもしれない」


 この体験記の後半には、赤き亜人について書かれている。

 前回、共に生活した赤き亜人の集落のあったところへ行ってみたところ、村はそこに存在していた。

 しかし、誰一人としてクジロカノンさんのことを知っている者が居なかったそうだ。これはおバカだから忘れたわけではなく、クジロカノンさん側の記憶にある人物も既に存在しなかったとのこと。

 『久しぶりに会うか』という心持ちで行ったものの、既にみんな居なくなっており、挨拶すらできなかったと書いてある。

 クジロカノンさんの記憶にある名前を聞いたところ、知っている者が居たため、どこへ行ったかを尋ねたところ『土の下』という答え。


「既にお亡くなりになってたわけね……」


 確か以前聞いたのは、レッドトロルの寿命は六十歳から六十五歳くらいだったはずだから、彼が滞在してた頃のヒトたちは全員死んでしまっていたのかもしれない。 (第432話参照)

 ここでもエルフとトロルの寿命差が浮き彫りになっている。


 ブルートロルの特徴もメモに書き出す。

 体験記も書き出して――


「――よし! ここの資料はもう良いかな!」


 フリアマギアさんを探すと、書庫内に置かれたロッキングチェアで、本をお腹に乗せたままうたた寝していた。


「フリアマギアさん」

「んあ? 用事は済みましたか?」

「はい、ありがとうございました。じゃあ帰りましょう」


 体験記を元の場所に返して書庫を出る。


「じゃ、叔母さんまた何十年後かに。じじいが死んだら連絡ちょうだい。まあまだまだ当分死なないだろうけどさ」

「全く……あんたは……」


 フリアマギアさんの叔母さんは苦笑いしながらも見送ってくれた。

 【ゲート】でアルトレリアへ帰還する。


   ◇


「それで、上巻はどこにあるんですか?」

「雷の国の国立図書館です。禁書庫にありました」

「なるほど……禁書庫に。それはおいそれと閲覧できませんもんね、盲点でした。今度行った時にお願いして読ませてもらおうと思います」


 『お願いして読ませてもらおうと思います』って……簡単に言うんだな……

 まあフリアマギアさんほどのヒトなら、他国であっても上の階級のヒトに顔が利くってことなのかな?


「ちなみにタイトルは?」

「え~と、ちょっと待ってくださいメモ見るんで――」


 資料から書き起こしてきたメモを確認。


「――『禁忌の土地で出会った赤き亜人』ですね」

「なるほど、上巻に相応しいタイトルですね。上巻は赤き亜人で、下巻は青き亜人か」


「では、私はこれからもう一ヶ所行くところがあるので」

「忙しいですね」

「そうなんです!」


 主に自分のポカ (通貨の肖像画の件)のお蔭でね……

 その足で再びヘパイトスさんのところへ。


   ◇


 ヘパイトスさんが再訪問した私の顔を見て……


「あれ? 何だ、また来たのか?」

「度々すみません」

「何か忘れ物か?」


 昨日の今日で再訪問だったため、気恥ずかしさから薄っすらと笑いながら事情を説明。


「フィンツとフロセルとルドルフの家に資料がある? 本人たちに言えば良いじゃないか」

「彼らは私が通貨の肖像画をどうやって決めたのか、その経緯までは知らないんですよ」

「それも昨日言ってた矛盾に繋がるわけか」

「はい。なので、二つの家に何とか顔が利きませんか?」

「…………仕方ないな……連絡取ってやる。業務終了まで待ってもらうが良いな?」

「もちろんです!」


   ◇


 夕方まで待ち、一緒に二つの家へ。

 ヘパイトスさんの口利きのお蔭で、初対面ながらマリアさんとローゼンさんの手記をお借りすることができた。

 どうやら、この家のヒトたちもこの手記のことを知らなかったらしく、『へぇ~、そんな昔の手記がうちにあったんだねぇ。と言うかうちのご先祖様があんたの国のお金の肖像画になってるのかい!?』というような反応だった。


 内容は、マリアさんの方は女性同士の会話の記録。

 誰々のところの子供が誰々の子供をぶっただとか、誰々の旦那が壁作りサボってぐうたらしてるだとか、狼を狩る時に腕の一部を食いちぎられて痛てぇから働きたくないって言ってるだとか。

 どうやら愚痴聞き役になってしまっていたようだ。

 そしてある日から、毎日のように『お風呂入りたい、身体拭きたい』というようなことが書かれていた。シャワーが出来るまでは本当に我慢の限界に近かったようだ。ヒーナさんの日記には『…………身体拭きたい……』と一言零したと書いてあったが、その一言を零すまでに相当耐え忍んでいたと思われる。

 それと、ある程度の料理の話が綴られている。つくづく何でこれが現代まで繋がらなかったのか……

 別れの時は、本当に惜別の想いだった様子。ちゃんとした友人になっていたようだ。


 ローゼンさんの方は、壁建築の進捗状況の他に、ほぼ毎日出る怪我人に対する愚痴や心配事のようなことが書かれている。

 医療を少しかじっているとヒーナさんの手記にも書いてあったから、大怪我したらとりあえず彼のところだったらしい。

 旅の間に何かあった時のために、再生力を高めるための回復魔法が込められたポーションを複数所持していたらしく、特に大怪我だった場合はこれを傷口にぶっかけてトロルたちの再生力を更に底上げしていたとか。

 そして彼の一番の活躍はこれ。

 『右腕から右あばら骨が潰されたヒト』と『骨盤と左脚が潰れたヒト』の手術。

 折れた骨があちこちに刺さっていたらしく、それを取り除く手術をしたとの記載もあった。この二人は彼のお蔭で命拾いしたと言っても過言ではないかも。


「よし! とりあえず行けるところの資料はまとまった。火の国と氷の国の資料については今は無理だから後回しだ」


   ◇


 この後日、ブルートロルの集落と(おぼ)しきところに行ってみたが、そこは住居跡だった。六百年前の住居跡だけあり、土で作られている住んでいた形跡“らしきもの”があるくらいで、他は何も無かった。


 次にクジロカノンさんの体験記の記述に沿って、もっと北の方を見に行ったところ海に近いところに集落を発見。その辺りはまだ気候変動が無さそうだったため、冬の影響も対して無かった様子。

 水の国からの行商人の流入が増えたため、行商人たちの中継地点のような感じになっているらしい。

 地上に降りて村を散策してみたところ、現在のグリーントロルやレッドトロルとはいかないまでも、かなり考えて行動をしているようである。

 予想でしかないが、外国 (主に水の国)から、行商などで人口の流入が増えたために、急激に頭も良くなったのではないかと考えられる。

 レッドトロルのように、食料不足などで種族大移動させるような緊急性も無さそうだ。


 私から特別何かするってことも必要無い。

 が、通貨制度がアルトレリアから発生したためか、こちらにまでまだ届いておらず、行商人とは主に物々交換で物を手に入れていた。

 中立地帯が国になったからには、村民の代表者を呼ぶか、もしくは私から赴いて、通貨制度に切り替わるように誘導する必要がある。


 今回は何もせずにアルトレリアに帰還。

 マリア、ローゼンの手記については駆け足でしたが、これにて資料集めは終わりってことで。


 次回は2026年4月17日の投稿を予定しています。

  第595話【歴史編纂のために各地を奔走(地獄の門はいつから存在する?)】

 次話は来週の金曜日投稿予定です。投稿時間は21時付近までのいずれかの時間になります。

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