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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第20章

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第590話 手記発見(壁の建築)

 あれ? 今度はまた随分日にちが飛んでるな。

 二十日分くらい飛んでる。

 まさか……諦めて水の国に行ったって日記じゃ……ないか。そんなことになってるなら旧トロル村の壁は存在してないし。


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9481年12月27日


 や~っと出来た…………一段目がな……

 一ヶ月かかって、()うやく村全体を囲む壁の一段目が出来た。

 これを後、五回繰り返さないと、この村を守れるよう()壁にはならない。


└───────────────────────────────────┘


 まだ四回もあるのか……

 一ヶ月かかったってことは、単純計算で五ヶ月?

 でも、壁って上に行くほど作るのが大変になるよね?

 この暑い場所にまだあと最低でも四ヶ月以上も滞在しないといけないのか……


「すっごい苦労したのね、ヒーナさん……土の国(地元)みたいに、壁作る専用の道具とか機器とか揃ってれば労力は遥かに少ないだろうに……」


 日にちは頻繁に飛ぶから、飛んだとか考えない方が良いかもな。


┌───────────────────────────────────┐


 そしてここに来て、マリアの心身が参っている……

 大分前に


 「…………身体拭きたい……」


 と一言零したのを聞き逃さなかった。

 そこで、新たに大穴掘って、そこ()石を並べて壁素材で底を固めて、四.五メ

 ートル四方程度の簡易的な水浴び場を作ってやった。

 ここを水で満たせば水浴び場の完成だ。


 …………と、考えたまでは良かったんだが、喜んでくれると思ってマリアに話したら、


 「…………兄さん……誰がお風呂溜まるような大量の水持って来るの……? 

  これって木桶何杯分……?

  私の魔力じゃ到底溜められるほどの水は出せないよ……?

  『オラたち』の中に水魔法使えるヒトがいるの……?

  川から運んで来なきゃ()()ないんじゃないの……?」


 と言われて、現実に引き戻されてしまった……

 ザッと計算してみたところ、()こを風呂のように満たすには木桶で四百五十杯

 分くらいの水が必要なようだ。

 男衆全員使っても川に行って帰って来る六時間を二往復以上しなければならない……

 これはダメだな……


 ああ……

 俺たちが住んでたところは()の国でも特別水が使えるところだったからな……

 今はすぐに水使えるような環境じゃないんだった……


 仕方ないから作った水浴び場はそのまま放置。

 急遽、木材を使って木桶に穴を複数開けて雨のように浴びる仕組みを作ってや

 った。水を外部から足すことで、その下の者が水を浴びられる仕組みだ。

 これなら少ない水でも、多少さっぱりできる。

 土魔法で、近くに持って来た水を溜め置くための巨大石桶を作る。これで少し

 の間ならここに水()溜めておける。

 とは言え、あまり頻繁に川まで行くわけにはいかないから、使えるのは数日に

 一回とか、一ヶ月に一回とか、その程度の頻度になってしまうがな。


 木材で目隠しを作り、水浴び場の完成だ。


 男衆に頼んで、水を運んでもらった。

 排水設備も一応作ってある。()をどかせば流れて行く仕組み。その後は高温も

 手伝って短時間で蒸発してくれるだろう。


 たった一日の水浴びだが、()んなさっぱりしてやがったぜ。

 マリアも満足して英気を養えたようで良かった。


└───────────────────────────────────┘


 『木桶に穴を複数開けて雨のように』ってのは、多分シャワーみたな仕組みってことだな。

 これなら確かに水を節約できる。


 それにしてもこの話どこかで聞いた気が……


 ……

 …………

 ………………


「あ! あの水浴び場! まさかアレの基礎ってこれか!?」


 私が魔界に転生してすぐくらいの頃、潤いの木がまだ村内にあった時期。潤いの木の水源から勝手に水を引いて水浴び場を作ったトロルの女の子たちが居たことを思い出した。 (第36話参照)

 あまりに短い期間に水浴び場が出来てたから不思議に思っていたが、アレはこの時作られた水浴び場を基礎として、土魔法が得意な子が更にきちんとした形に形成したってところか。

 私が訪れた頃のトロル族は水を溜めておくような習慣は無かったように思うが、潤いの木が村内に植えられたことにより、そこから水を引っ張ることを思いついたんだろう。


「こんなところであの出来事に繋がるとは……読み解いていくと色々と現代に繋がることが出てくるな」


 きっと現代までに五百年もあるから、その間に使い方が廃れてしまったんだろう。

 何せ、いちいち数時間かけて大勢の男たちが川まで水汲みに行かなければならないわけだし。

 それに木桶やシャワーも必要だ。

 シャワーは木で作ったって言うし、私がトロル村を訪れた時にそういったものがあった記憶が無い。これらも五百年の間に朽ちていったと予想される。

 残ってたの棍棒だけか……これだけは武器だから、食料確保のためにその後も伝えられていったってところかな? (第2話参照)


 ちなみに、件の水浴び場は現在町の中に数ある銭湯の一つになっており、あの頃杜撰(ずさん)だった排水機能もきちんと整えられている。


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9481年12月30日


 今日からやっと壁の二段目が開始されたわけだが……ここからは足場が必要だ

 から、また少し大変になるな……『オラたち』が理解してくれれば良いが……


 ああ…………気付け()もう年末じゃないか。

 こんな時期は、鍛冶組合の忘年会で酒盛りの時期だったってのに……

 あれから一ヶ月以上か……親方たちは元気だろうか?


 それに、先に水の国に行かせたパラディスも……

 ここには長く滞在しているし、も()()したら心配しているかもしれな()な……

 一旦水の国行くべきか?


 いや、中断して途中で行くのはまずいな。

 水の国に挨拶に向かって次に戻っ()来た時には、アイツらもう作業工程忘れて

 しまっているかもしれない。

 ()れに、この状態で俺たちがここを離れたら、狼たちが襲撃を再開するかもし

 れないし、中立地帯だからまたここへ戻ろうとしたら、止められる可能性も高

 い。やはり全部終わらせてからここを出るのが最善か。


 あまりに長い間水の国に着かないと、あちらから心配で様子を見に来るかもし

 れないが……

 まあ、パラディスから中立地帯に居ること()伝わっているだろうし。そうなっ

 た場合は、その時に説明してやったら良いことだろ。


└───────────────────────────────────┘


 ここからまだ四ヶ月かかるわけだしね……流石にそんな長い期間音沙汰無かったら、招聘(しょうへい)した手前、様子を見に来る可能性は高いかもしれない。

 もしかしたら、この続きに「『水の国の使者』が訪れた」なんて記述もあるかも?


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9482年1月1日


 新年開けてしまったな。

 まさかこんな寒村で年末年始を過ご()ことになるとは思わなったが……

 兄のエゴで道連れにしてしまって、マリアとローゼンにはすまないことをした

 な……


 だが、まあ壁一段目だけとは言え、村を一周できたことを考えると先も見える

 ようになった。

 ()こに来た当初は、不可能なんじゃないかってくらい『オラたち』が言うこと

 を聞いてくれなかったが、最近はその傾向も薄れてきて指示も聞いてくれるよ

 うになったしな。

 少し俺たちのことを認めてく()()のかもしれないな。

 まあ、大体ウォルニールが間を取り持ってくれたお蔭だ。


 さて、新年だ。

 普段の労いとして何か『オラたち』に特別なものを振る舞いたいと思ったが、

 酒は既に「まずい」と言われてるんだった……

 そんな折、丁度良いことに水の補充に行った川の水辺ででかい豚の親子を見

 つけた。コイツは暑いところが苦手らしく、『()()たち村』には寄り付かな

 い。


 フッ……魔法の使えない『オラたち』には、コイツを倒すのは骨が折れるだろ

 うが、土魔法が使える俺の敵ではない。


 石()トゲによって弱らせた後、集団で囲って狩った。ロープでくくって引きず

 って村まで持って来た。

 親豚と子豚五匹の肉ゲットだ!


 今日はコイツを焼いて村民たちに振る舞い、新年の祝杯とした。

 メシが美味いのはマリア様様だ。


 新年開けたし、休みとしたいところだが、狼たちは待っては()れない。

 早いところ壁を完成させて、きっちり休める環境にしてやらねばな。


└───────────────────────────────────┘


「ヒーナさんは、トロルが『魔法を使えない』って思い込んでるけど、この頃のトロルたちはまだ『魔法を使う』という概念が無くて、使うまでの魔力を練られなかったってことなのかな? 現在のアルトレリアでは魔法使うトロルは大勢いるし」


 つまり、魔法使うにはある程度知性が必要だったことになるな。

 ただ…………獣でも使ってるヤツは居るってのに何で使おうという発想に至らないのか……

 いや、そもそも概念を知らなければ、その発想も出てこないわけか。ここは禁忌の土地でほとんど他国からのヒトが訪れない。他の種族との交流も無いし、使えなかったのは無理もない?


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9482年1月10日


 今日、壁の二段目が落下して、下敷きになりかけたヤツが居た。

 ふ()けてぶつかったようだから、どやしつけたが反省しねぇ……

 どうやら、もう一ヶ月も同じことやってるから慣れてきて気が緩んできている

 いるようだ。

 大きい事故に繋がらなけれ()良いが……


└───────────────────────────────────┘


 何だかちょっと不穏だな。

 慣れて来た時が危ないって言うし。


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9482年2月15日


 今日から三段目に突入だ。

 足場を作って、登って作業する必要がある。

 ここからは本当にキ()イし危ない。

 ふざけたヤツはメシ抜きくらいにしないとな。


└───────────────────────────────────┘


 大分日にちが飛んだ。あまり日記を付ける余裕も無いのかもしれない。

 しかし、この日の日記、トラブル発生前のフラグにしか見えないな……


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9482年2月14日


 何()ことだ……三段目の壁が崩れて二人下敷きになった……

 一人は右腕から右あばら骨が潰されてぐちゃぐちゃ、もう一人は骨盤と左脚が

 潰れてしまっている……


 医療を少しかじってるローゼンに任せたが、いくら再生力が高い『オラたち』

 であっても、こんな設備が無いところでは流石に助からないだろう……

 俺の監督不行き届きか……


└───────────────────────────────────┘


 ああ……案の定、下敷きフラグだった……

 またふざけて壁を倒したんだろうか……?

 右あばら骨がぐちゃぐちゃって、致命傷にも程がある……


 あ、でもリーヴァントって、右肩吹っ飛んだけど生きてたのよね…… (第2話、第15話参照)

 もしかして……?


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9482年2月19日


 ホ()トに何なんだコイツら……

 数日前、どう見ても致命傷だと思っていた怪我が、回復してきてやがる!

 事故初日こそ、生死の境をさまよっていたようだが、二日を過ぎると安定、四

 日を過ぎると身体を起こせこそしないが、()うしゃべれるようにまで回復して

 やがった!


 まあ一安心だが、やはり『オラたち』の特徴は他国に秘密にした方が良いな。

 この群雄割拠の時代だ、これほどの再生力を持ってるヤツらが居ると知られた

 ら村単位で大量に誘拐()()て、人体実験なんてことは想像に難くない。

 俺たちからは他言しないようにしよう。マリアとローゼンにも釘を刺しておか

 ないとな。


 ()が、この二人が大怪我をしたお蔭で、全体に緊張感が戻った。

 少し真面目になって、建築スピードも上がったから、ある意味ではコイツらの

 お蔭ってことになるな。

 まあ、死ななくて良かったよ。


└───────────────────────────────────┘


 トロル族、すっげぇ……

 人間なら即日死ぬような怪我なのに……


 今は群雄割拠の時代ではなくなったとは言え、この特徴は間違い無く研究対象になり得るんだよなぁ……

 そうできないように、七大国会談に出て不可侵条約を締結してるから五大国については手を出してくる可能性は低いだろうけど…… (第261話参照)

【裏話】

 作中に出てくる水浴び場。

 実は風呂として使いたかったんですが、その水量をAIに計算してもらったら、トンデモなかったという……

 軽い感じで風呂相当の水浴び場という描写にしてみたら、全く現実的ではなかったという話。


 次回は2026年3月20日の投稿を予定しています。

  第591話【手記発見(壁完成、そして別れ)】

 次話は来週の金曜日投稿予定です。投稿時間は21時付近までのいずれかの時間になります。

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