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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第20章

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第589話 手記発見(壁の建築開始)

「でも、まだ壁作りには着手しないみたいだ」


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9481年11月3日


 少し考えが甘かった……素材集めも壁建築組に任せれば良いと考えていたが、

 素材を集めに行っ()しまうと、壁の製作が疎かになる。

 俺としたことが、こんな単純な見落としをするとは……

 最近怒りっぽいし暑いから、頭に血が上って()()のかもしれないな……

 原因は……まあ『オラたち』なんだろうな……

 ウォルニールのような理解力のある者がもう少し多ければ良かったのだが……


 そして()う一つ見落としをしていた。

 水を汲んで来るものが無い。

 俺たちの環境には当たり前に存在するような木桶がここには無いのだ。

 この村は随分暑い。肌感覚では五十度くらいありそうだ……

 壁作りには水が大量に必要だ。『オラたち』が必要な水は少量で良いようだが

 俺たちはそ()はいかんから、飲み()も確保しにゃならん。

 彼らが汲んで来た水と土の国から持参()た水を使って喉を潤していたが

 持参した水も底を尽きか()ている。

 マリアの水魔法は、本当にヤバい時まで取っておきたい。俺たちは魔力が潤沢

 にある種族じゃないからな……


 まずは水を大量に汲んで来る必要がある。

 そのために、木を切り出してくるよう壁建築組に頼んで、その木を使って木桶

 を沢山作った。

 これは水汲みに使うだけでなく、別の用途にも使う。


 さて、()()で新たに素材収集組を作るため、組を再編することにする。半々に

 分けていた組をそれぞれ三分の一ずつ三組に分けた。

 壁建築組に頭の良いヤツを一番多く配置する。ここが要だからな。

 ここからは素材集()と壁建築を並行して進める。

 食料調達は防衛組。調理は女()供担当。

 コイツら、狼を主な食糧にして()たようだから、狼から防衛できて、食料も調

 達できてと理に適っている。

 この布陣で進めれば良いだろう。


└───────────────────────────────────┘


「五十度……常時五十度があるのか……ドワーフだから大丈夫だったのかもしれないけど、人間なら生きていられる環境じゃないな……」


 もっとも……六十六度なんて気温のところを昔テレビで見たことはあるが……

 七つの火山の影響により、地獄の門付近が三百度ほどあったから五十キロ離れていてもこれだけ暑いわけか。

 次を読もう。


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9481年11月6日


 さて、今日は壁作りの下準備だ。

 この村は気温が高す()()から、通常の方法で攪拌(かくはん)すると、凄い勢いで土が乾い

 ていってしまう。

 試しに練ってみ()が、あっという間に乾いて使い物にならない。


 そこで考え出したのが、大量の素材を大穴にぶち込んで練り上げる方法だ。

 土と石灰と藁クズ、そして水をぶち込み、男どもに踏ませて練り上げる。

 そして練り上()った土を、木桶リレーで建築現場まで運ぶ。大量の木桶はこの

 ために作った。乾く前に使わにゃならん。


 それと、石灰を焼く窯も用意しないといかん。

 レンガなんてもんは無いから、土に穴掘った穴窯を使う。

 村の周囲を見て回って、石灰の必要量も計算した。一度に作ってしまえばその

 後に窯は必要無い。

 燃料としてくべる木も『オラたち』に取りに行かせよう。


 今日はとりあえず、俺の土魔法で大穴を開けた。深さは五十センチ程度。大き

 さは直径七、八メートルってところだ。これをガイドに更に穴を深くしてもらう。

 この穴を水分の蒸発を抑制で()る二.五メートルから三メートルくらいまで掘

 り進めなければならない。

 それと穴から出入りするための木のハシゴを複数作る。

 ().五メートルから三メートルに達したら壁作りを本格的に開始する。

 明日から『オラたち』には、穴掘りをしてもらうことになるだろう。

 それと、狼が中に入らんように、防衛組には()()んと守ってもらわんとな。

 おっと、穴にも光を出す石(ライトストーン)も点けておこう。真っ暗闇でも彼らには見えるらし

 いが俺たちはそうは行かない。


 疲弊した俺を()ォルニールが心配してくれた。こ()つは思いやりもあって、本

 当にこの村の癒しだよ……


└───────────────────────────────────┘


「すっごい苦労してるわね……私の苦労なんて比較にならないわ……」


 私はほぼ最初の接触で創成魔法によって、かなり知性を上げた状態だったから普通のやり取りができてたしな。

 もし、創成魔法を持ってなかったらと考えるとゾッとする。


 次のページを見ると……


「あ、ここも随分日にちが飛んでるわ」


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9481年11月11日


 ああぁ~~~~!

 コイツら本当にサボり癖が酷い!

 想定より、穴掘りに時間がかかりそうだ……


 仕方ないから、全員で競争させて、各グ()ープで一番働いた者から三人に俺が

 持参した酒を振る舞うと約束した。

 監督役を七人指名して、彼らに監視させた。もちろん彼らは真面目にやってい

 れば酒を確実に飲める立場だ。

 この七人の監視はローゼンに任せた。

 俺は壁の型枠作るっつう作業がある()らな。十から十二セットってところか。


 ただ……酒を振る舞ったは良いが、コイツら飲み慣なれて無いからか「まずい」

 って言いやがったよ……

 次の日からはマリアが特別に作ったスープを頑張ったヤツ全員に振る舞うこと

 になった。水と肉焼いて食ってただけのヤツらには、このスープというものが

 特別良い物に見えるらしい。


 クソッ! せっか()くれてやったってのに。まあ考えようによっては、それ以

 上減らなくなって良いか。


 全く、なぜ俺はここに残る決断をしてしまった()かと今更ながら後悔している。


└───────────────────────────────────┘


 ああ……遂に後悔まで出てきたらしい……

 ヒーナさん、頑張ったのね……

 あのスプーン一杯をスライムに入れようとした時にヘパイトスさんは文句言ってたのに、そのご先祖様が酒まで振る舞うって…… (第158話参照)

 トロルたち、余程話を聞かなかったのかもな……

 でも、やる気出させようと、いざ秘蔵の品を出したら「まずい」って言われる始末……


 あと……トロルたちはほとんど酔わないため、酒好きな者は少ない印象。体質によってはほろ酔いくらいはあるかもしれないが、私は彼らが酔ってるところをまだ見たことが無い。

 猛毒すら分解する身体のため、アルコールの分解も早いってことなんだろう。それこそ嗜好品として飲むに留まる。


 ヒーナさんがここまでストレス抱えてることを考えると、ここには手記が無いから推し量るしかないけどきっとマリアさんとローゼンさんも似たような心境だったんだろう……

 そう考えると、ヒーナさんがアルトレリアの神社に降り立った時はどういう心境だったのか聞いてみたい感じもするわ(第579話、第581話参照)。

 彼の頃より発展してて感慨深いのか、それとも別の感情なのか。


 次のページを見ると……


「あら? また日にちが飛んでる! もう穴掘り終わってるわ。まあ日記だしそりゃそうか」


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9481年11月16日


 よし。ここまで十日も()()ったが、土を練るための大穴ができた。

 型枠も無事完成した。


 明日から壁作り開始だ。

 まず、土と石灰と藁クズと水を大()に入れて男衆を大穴に押し込む。

 踏んだり、手でかき回したり()ながらムラが無いように混ぜさせる。


 次に水だ。と言っても気温が高()()てお湯になってしまっているが、これを俺

 が慎重に見極めて注ぐ。ここは他の者に任せるわけにはいかない。

 木枠作りの最中に、普段通りの調子で壁が出来るか実験しておいたんだが、こ

 の暑さで普段通りの土の状態にすると、収縮した時にバキバキと亀裂が入って

 しまった。これでは、壁はすぐに()ロボロと砕け散ってしまう。

 この環境下では『少し湿った砂場の砂』くらいのパサパサ具合が良いらしい。

 ()の状態になるまで、男衆に踏んづけて練り上げてもらう。


 そして出来た材料を、木桶リレーで穴の上へ上げ、用意しておいた型枠に流()

 込み、突き固める作業。

 木枠はセパレーターで止めて固定。

 まあこんなところだろう。


└───────────────────────────────────┘


「お? 遂に壁作りに取り掛かるわけね」


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9481年11月17日


 壁作りが開始され()んだが……これは中々厳しそうだ。

 まず統制が取れてない。

 素材を作る奴らがサボれば壁作()が止まり、壁を突く奴らがサボれば練り場の

 土が腐っちまう。

 監視を入れて、その度にどやしつけてるが目を離すとサボってることも多い。


 「お前らぁぁ!! 誰のために()ってると思ってんだ!」


 と、思わず口に出すと一時的に作業に戻るが、またサボる。

 知性の少しあるヤツだけだな、きちんと真面目にやってんのは……


 もう先行きが不安でしかない……

 心折れそうだ……


└───────────────────────────────────┘


「おぉ……過酷……」


 ヒーナさんがね……

 私も創成魔法無かったら、こういう結果になってたのかな?

 きっと神経すり減らして、途中でコミュニケーションを諦めて投げ出してどこかへ行ってたかもしれない……

 一方で、現代のリーヴァントは創成魔法のお蔭で現在の超優秀な行政官と。


 あの知性バフ効果 (第15話参照)、次世代まで繋がっててくれると良いんだけど……

 私が来てから生まれた者も数多くいるし、その赤ちゃんたちはどれくらいの知性なんだろうか?

 私がここへ来てほぼ二年。その後に生まれた子は最速でも一歳と少しってところ。少なくとも、しゃべれるようになる数年後じゃないと確認はできないしね……


「さて、続き続き」


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9481年11月22日


 割と統制が取れて来た。

 マリアが見かねてスープを作るのを()()た日があって、それに懲りたらしい。

 そのやめた当日はみんな


 「オラたちを (多分餓死で)死なすだか!?」とか「飲ませろ!」だとか、

 「ちゃんと作ってけろ!」だとか


 不満た()たらだったが、マリアの


 「作ってほしかったらきちんと働きなさい! 働かざる者食うべからず!」


 とい()一喝で大人しくなった。

 豪胆な妹で良かったよ……

 そもそもお前ら、俺たちが来る前でも餓死してなかっただろ……

 ちょっと普段と違う食べ物を振る舞ったら、()が肥えてしまって……

 コイツら、俺たちがここを発っ()らどうするつもりなんだ?

 そして最近になって気付いたが、コイツら少しふっくらしてきた。マリアが料

 理作ってることによって、栄養状態が少し改善されたのかもしれない。


 まあ、何はともあれ、この食事取り上げ事件によって、サボるヤツも今までの

 三分の一くらいに減って、かなり楽になった。


 だが、トラブルは付き物で、先日ハシゴ()かけが甘くて倒れて怪我人が出た。

 まあ、すぐ再生してたから大したことはなかったんだが。

 お湯で洗い流して怪我の部分を見ると、再生していく様が目に見えて分かって

 思わず「すげぇ……」と(つぶやい)()まったよ。かすり傷なら一瞬らしい。


 しかし、ここで一つ疑問。

 あの再生するためのエネルギーはどこから得ているのか?

 精霊は大気中に存在してる魔素を使って傷を癒すこともあるらしいが、それと

 ほぼ同じような()とをやっているらしい。

 魔素を使って無意識に再生能力を強化しているのかもしれない。


└───────────────────────────────────┘


 この推論、多分間違ってるな。

 エルフヴィレッジで検査されたところによると、デスキラービーの猛毒すら無効化してる身体だから、多分彼らの身体そのものがそういう構造なのだろう。 (第334話参照)

 アルトレリア(この町)は、電気施設 (第279話、第513話参照)のお蔭で魔素濃度が多少上がったが、私がここへ来た直後はそこまで高いわけではなかったから、この町の人数が精霊方式で再生してるとは考えにくい。


 しかし、サボっても文句は言うんだな……

 予想通り、どうやらマリアさんも相当頭にきてたらしい。

 そして、これらの調理方法は、五百年後の現代までは繋がらなかったようだね……

 それどころか、頭良くする前でも岩塩がある場所は知ってたのに、その使い方は知らなくて塩すら使ってなかったようだし。 (第21話参照)


┌───────────────────────────────────┐


 冥陰暦9481年11月24日


 最近はこちらから狩りに行ってるから、狼たちが警戒して近寄って来なかった

 ようだが、今日久しぶりに近()に現れた。

 身体も腹が凹んでゲッソリしてきている。

 どうやら、俺たち()ここへ来たことで彼らが『オラたち』を食料にすることが

 できなくなってしまい、空腹が限界で襲いに来たようだ。

 が、この数日ですっかり連携が取れた防衛組によって、食材へと成り下がって

 しまった。

 目に見えて減った気がするが、()しかしたらここを離れて別の地域へ食べ物を

 求めに行った狼もいるかもしれない。


└───────────────────────────────────┘


 ああ……ここから彼らの共食いの歴史が始まるわけか……

 群れられないのはちょっと可哀想だが……


 ただ、最近の旧トロル村、現アルトレリアでは、私が気温を無理矢理下げた (第13話から第14話参照)ことにより他の生物も流入してきて (第107話参照)、彼らも食べ物にありつきやすくなったようだ。

 ちょっと前は畑荒らしてたしね…… (第154話から第156話、第185話から第186話参照)

 まあ……引き換えに天敵もやってきたから、死の可能性も高くなったわけだけどね……


「さて、続き」

 投稿が遅くなってしまいすみません。

 この壁作り、素材と手順が中々難しい……


 一つ訂正があります。

 アルトラが魔界に来た頃の地獄の門の気温を450度から300度に修正しました。

 詳しくは修正履歴にて。


 次回は2026年3月13日の投稿を予定しています。

  第590話【手記発見(壁の建築)】

 次話は来週の金曜日投稿予定です。投稿時間は21時付近までのいずれかの時間になります。

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