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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第20章

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【EX】第582.3話 二回目のお正月(動き出す影)

 アルトラたちが神社から帰路に着くと動き出す影があった――


「みなさん……」

「どうしたのナナトス?」

「ちょっと前から思ってたんスけど、アルトラ様とクリューさんって普通の関係じゃないッスよね?」

「そうだよね……クリューさん、毎日毎日夕方に|ゼロ距離ドアくぐってくの《アルトラ邸へ入ってくの》見るしね」


 というナナトスとカンナーのやり取りに、フレアハルトとレイアが反応を示す。


「なに? そうなのか? それはただならぬ予感がするな」

「えー、そんな関係だったの!? でも確かにアルトラ様ファミリーに混じって、クリューさんが初詣に来てたね! くぅー!! 私たちだってまだ(つがい)を見つけられてないのに、たった二十八歳で!」

「俺っちたちからすれば、もうとっくに結婚してる年ッス……あ! そう言えば、さっき参拝した後、小声でヒソヒソ話してるのを見たッスよ」

「あ、僕も見たよ。何を密談してたんだろうね」


 密談していたのは、本殿に神様が御座(おわ)すかどうかをクリューに確認していただけなのだが、そんなことを彼ら彼女らが知る由もない。


「み、皆様、勘繰るのはやめましょう。お相手がアルトラ様かも分かりませんし」


 興味のあるフレアハルトとレイア、少しだけ興味のあるカンナー、そして、それを諫めようとするアリサ。

 しかし、噂好き(スピーカー)ナナトスはここにも反応を示す。


「それもそうじゃないッスか! 何もアルトラ様が本命ってわけじゃないってことじゃないッスか! カイベルさんだっているんだし! リディアとネッココだっているじゃないッスか! クリューさん、誰がが本命なんスかね!?」

「流石にリディアちゃんとネッココちゃんは無いでしょ……種族考えても年齢考えても……」


 ここでフレアハルトが顎に手を当てて考えを口にする。


「ところで、クリューはいつからこの町に()るのだ?」

「そう言えばそうですねぇ……」

「いつの間にか町に馴染んでたッスね」

「確かフレハルさんたちより後ですよ。クリューさんが何でも屋を手伝ってるのを見て町のみんなに認識されるようになったから、町に来たのはフレハルさんたちが何でも屋を始めてすぐ後、多分ほぼ同時期くらいだと思いますよ」


 カンナーが思い起こしたところ、すっかり忘れていたナナトスとフレアハルトがそれに反応。


「そう言えば、アルトラ様がどこからともなく連れて来たんじゃなかったッスかね?」

「なに? そう言えばそうだな。我がヤツを雇うようになったんだった。きっかけはアルトラだった (第281話参照)。クリューを突然連れて来て『雇ってやってほしい』と言ったんだった。そうか、あやつら元々知り合いか!」

「でも、アルトラ様って地球で死んでこっちへ来たんスよね?」

「クリューさんは『人間』って言ってなかった?」

「ってことは、やっぱり地球で知り合いだったってわけか~」

「魔界で再会するって凄い偶然なんじゃ……」

「まさか元々恋人だったりとか?」

「今まではそこまで親密には見えてなかったけど……」

「じゃあ知り合いッスかね?」


 アリサ、ロミネルを除いた全員の憶測が飛ぶ飛ぶ。

 ここまで行ってしまうと先ほど諫めていたアリサも口が出せず……


「あのままアルトラ様んち行くんスかね?」

「付いて行ってみるか?」


 そう提案するフレアハルトだったが、大人たちの会話に大いに退屈していたロミネルの一言でその考えも吹き飛ぶ。


「ふあぁぁ……お兄しゃま、もうはやくかえろ? 私ねむくなってきまちた……」

「おお、そうか! では我らは帰る」

「え!? ノリ悪いッスよ?」

「妹がもう限界だ、仕方なかろう。午後のお昼寝の時間だ」

「フレハルさん、ロミネルちゃんが居ると別人みたいッスね」

「まだ二歳だからな。きちんと見ててやらねばいかん。レッドドラゴンの幼体は思いのほか弱い。すまぬな」


「じゃあ私が同行します!」


 『シュバッ』と音が聞こえそうな勢いで手を上げ、意気揚々と立候補するレイア。


「では、何か分かったら後で教えよ! 我らは先に帰るからな。ナナトスにカンナー、ではな!」

「みなしゃま、ごきげんよう……」


 ロミネルが眠い目を擦りながら挨拶。

 ここでナナトス、カンナー、レイアのアルトラ尾行組とフレアハルト、ロミネル、アリサの帰宅組に分かれた。


「あまり近付くとリディアちゃんとカイベルさんに気付かれそうだから、少し距離を取って尾行しようか」


 というレイアの提案に、鋭く切り返すカンナー。


「リディアちゃんは魔力感知が鋭くて、カイベルさんは勘が鋭いんですよね? カイベルさんはもう気付いてるんじゃ?」

「そ、それは私にも分からないけど……」

「気付かれたら尾行をやめたら良いじゃないッスか」

「そうだね~、気付かれたらあっちの方に用事があったってことで誤魔化そう」


 こうして三人は距離を取りながらアルトラたちの後ろを追う。


   ◇


 一方、視点は戻って尾行されているアルトラたち――


「アルトラ、気付いてますよね?」


 クリューも一定の距離を保って付いて来る三人の挙動が気になっているらしい。

 たまに物陰に隠れたりするからなお怪しい。


「まあ……『暴食(グラトニー)』の大罪を継承して魔力感知能力鋭くなったからね、後ろを見なくても挙動が丸見えだよ……三人とも何のつもりなのかしら?」


 付いて来ているのはナナトス、カンナー、レイアか。

 フレアハルトとロミネルちゃん、アリサは帰ったか別動隊かな? ロミネルちゃんが一緒だったから帰った可能性が高そうだ。


 私が尾行される要素って何だ?

 それとも尾行されてるのはクリューの方?


 ……

 …………

 ………………

 あ! もしかして……


「クリュー、毎日ゼロ距離ドアくぐって来る時、周りに誰も居ないのを確認してから入って来てる?」

「いいえ? なぜそんなことをしなければならないのですか?」


 と、無頓着。


 ああ……尾行されている原因が何なのかある程度分かってしまった気がする。

 ナナトスとレイアは噂好きだからな……カンナーは多分二人に付き合ってると考えられる。

 恐らく、クリューが頻繁に私の家を訪れるから何かあるかと疑っているんだろう。具体的に言うと男女の関係とかを期待している可能性が濃厚。


 今日は、クリューの意味深な一言と言い、ウィンダルシアの勘繰りと言い、ナナトスとレイアの尾行と言い……何か急に恋愛フラグが立ち始めたな……そんな気無いのに……

 そもそもクリューが頻繁に私の家を訪れるって時点で、周囲に勘繰られてもおかしくなかったわけではあるのだが、それにしても今更感が強い。

 今更と言うか、“今まさに『私の家に連日 (夕飯食べに)通ってる』”ってことが認知され始めたってことだろうか?

 それのトドメとなったのが、今日私たち一家とクリューとでおめかしした上で初詣に行ったから、更に疑惑を深められたって感じかしら?


 でも残念、その尾行は失敗に終わる。


「クリュー、一旦自分の家に戻って」

「え? 着物と袴はどうするんですか?」

「それ、私が創成魔法で創ったものだし、あげるわ」

「良いんですか? でも多分クローゼットの肥やしですよ?」

「着物って新年に着るくらいで一年に一回くらいしか出番が無いから別に良いよ。で、今日はうちにご飯食べに来る時は自宅から【闇の道(ダーク・ロード)】で直接うちに来て」

「ま、まあ良いですけど……彼らが尾行してる理由が分かったってことですか?」

「うん、まあ……恐らくね」

「私が【闇の道(ダーク・ロード)】を使ってまで尾行を撒くのもその理由なんですか?」

「まあ、今更感はあるけど、このまま一緒にうちに来るよりはまだマシかなと……」


 別れて後で家で合流って言っても、焼け石に水程度しか意味が無いと思うが……

 そしてクリューはハテナ顔。人の心の機微に疎いようだし、多分まだ分かってないんだろう。


「分かりました。理由は後で教えてください」


 クリューと別れ、私たちはそのまま帰路に着く。


   ◇


 アルトラたちとクリューが別れ、それを見ていた三人は――


「あ! クリューさん別れたッスよ?」

「普通に家に帰るみたいですね」

「な~んだ、何も無いじゃん」


 ガッカリするナナトスとレイアに対して――


「二人とも、もう尾行も良いんじゃない? 寒いし」


 ――カンナーが二人を諫める。


「いや! もしかしたら今日もゼロ距離ドアを通ってアルトラ様の家に行くかもしれないッスから!」

「そうだよ! そこまで目撃しなきゃ、フレハル様に報告できないじゃん!」

「じゃあどうするんですか?」


 悔しがるナナトス、レイアにカンナーがどうするのか聞いたところ……


「よし! クリューさんの家を監視するッス! すぐ出てきてアルトラ様んち行くかもしれないし」

「えぇ~……この寒空の下で?」

「俺っちの【温め(ウォーム)】なら、少しだけ暖かくできるから」


 ナナトスの火魔法【温め(ウォーム)】により、彼の周囲だけ少し暖かくなる。


「全く……言っても聞かないんだから……でも、今十三時半過ぎたところだよ? クリューさんがゼロ距離ドア付近で目撃されるのって夕方じゃないか。そこまで待ってるつもりかい?」

「もちろん! 真相は究明しないと!」

「いつも通りゼロ距離ドアからアルトラ様の家に行くことのどこが真相究明なんだよ……」


 呆れるカンナー。


「それでも良いんだよ! 今日来たら何らかの関係があるって俺っちの中で確定とする!」

「いつもと何も変わらないじゃん」


 しかし、“待たなければならない”という事実を突きつけられ、申し訳なさそうに二人にそれを伝えるレイア。


「わ、私はこの寒空の下、夕方まで待つのはちょっと厳しいかなぁ……レッドドラゴンは寒さに弱いんだよ」


「「 知ってますよ(知ってるッスよ) 」」


「…………だよね~! じゃあナナトスくんとカンナーくんに見張りお願いして良い?」

「良いッスよ」

「えっ!? 僕も!?」

「あ、無理強いはしないけど……」

「う~ん……」


 全く乗り気ではないカンナー。


「じゃあ補給物資を所望するッス」

「良いよ、何が良い?」

「あんぱんと牛乳で」

「何その組み合わせ?」

「図書館で見た『名探偵メイタン』とかいう漫画にあったんスよ。尾行の定番だそうッス」

「へぇ~、ナナトスくん“でも”図書館行くんだね~」

「実は俺っち知性派ッスから」


 レイアの発した“でも”という言葉には気にも留めないナナトス。

 『“でも”って言われたの気付いてないのかな?』と内心思うカンナー。


「分かった、じゃあ用意してあげるよ」

「でも今日ゴトスさんのお店休みですよ? 元日だから他のパン屋さんも大抵お休みだと思いますけど……? レイアさんが用意するんですか?」


 というカンナーの冷静な一言に、『しまった!』という表情をするレイア。


「別にゴト(にー)のじゃなくても良いんスけど……」

「…………アリサが作れると思うから作ってもらって持ってくるよ! 牛乳なら買い置きあるし! じゃあクリューさんの家だね?」


 と言う言葉を残して一旦自宅に走り帰って行った。


「ナナトス、本当に待ってるつもり? まだ四、五時間くらいあるけど……一旦ここを離れて、三時間後くらいに来れば良いんじゃない?」

「いつ出て来るか分かんないし、目を離さないようにしないと!」

「じゃあ僕は寒いから帰るよ?」

「は、白状者!」

「……はぁ……仕方ないなぁ」


 何だかんだ友達想いのカンナーである。


   ◇


 二時間半後、十六時――


 レイアが二人のところへ戻って来た。


「二人ともお待たせ~」

「ず、随分着こんで来ましたね……」

「長丁場と予想されるからね」


 服を着過ぎてレイアのフォルムは丸くなっていた。去年の正月の再来である。 (第206話参照)


「はい、あんぱんと牛乳だよ~」

「ありがたいッス!」

「ありがとうございます」

「冷たッ! この牛乳冷たいッス!」

「寒空の下だからね。温めてあげようか?」


 ビンに入った牛乳に火魔法を使う。


「はい」

「いや……沸騰してるじゃないッスか……俺っちたちじゃ流石に持てないッスよ……」

「あれ? やり過ぎだった? ごめんね~、私たちこれぐらいが好きなもんだから。まあ少しすれば冷えるでしょ」


 そのまま路上に置かれるビン入りの牛乳。


「ぼ、僕のは少~しだけ温めてください」

「ほいきた」


 カンナーの分を温める。


「ありがとうございます」

「で、クリューさんは?」

「まだ家から出てこないッスね」

「と言うか薄暗くなってきたんで少し前からもう誰も通りませんよ。まだ明るかった時は初詣行くヒトが通過して行きましたけど……」


   ◇


 更に一時間が経過、十七時――


「出てこないッスね……」


 あんぱんと冷えた牛乳を口にしながらそうつぶやくナナトス。


「今日仕事休みだし、一度家へ帰ったらどこかへ行くこともないってことなんじゃない?」

「待ちの三時間って長いね~」

「そう言えば、レイアさんは火魔法で暖を取ったりしないんですか?」

「私が暖を取ろうとすると、キミたち火傷しちゃうくらい熱いからね。ナナトスくんの火魔法で周囲をほんのり温めるくらいでないと」

「そうすると、レイアさんは寒いのでは?」

「まあナナトスくんの火魔法の範囲内にも居るし、着こんでるから今のところ大丈夫大丈夫!」


 その時後ろから声をかけられる。


「三人とモ、何やってんダ?」


 三時間前、既に一度アルトラ邸に帰って友達の家に遊びに行き、帰りの時間になって帰路に着いていたリディアである。

 三人がクリューの家を見張ってるのを見て近付いて来たようだ。


「な、何でもないッスよ」

「クリューの家に何かあるのカ?」

「いやいや何も無いよ! ちょ、ちょっと三人で立ち話になっただけで、これから帰るところ」

「ふ~ん、面白いものがあるんじゃないのカ。じゃあリディア帰るナ」


 リディアは帰路に着く。


「……誤魔化す必要あったッスか?」

「……尾行してたなんて言えないでしょ?」

「二人共……もうそろそろ帰らない? 僕疲れてきちゃったよ……」


   ◇


 更に一時間経過、十八時――


「二人とも……」


 レイアが一言切り出す。


「はいッス……」

「何ですか?」

「もう大分暗くなってきちゃったね……」

「そうッスね……」

「いつもならゼロ距離ドアくぐってる時間なんですけど……クリューさん、一向に家から出て来ませんね」

「電灯も点かないッスね」

「まさか家に居ないとか……?」

「ずっと俺っちたちが見張ってたのに?」

「別に出入口があるとか、もしくは空間転移魔法を使えることを隠してるとか」


 カンナーの考えをレイアが否定する。


「それは無いかな~。アルトラ様と転移する時、あの魔法は空間に揺らぎが発生してるからこれくらいの距離なら私には分かるよ」

「そう言えばそうッスね」

「何とも言えない感覚だよね、アレ……うにうにうに!みたいな感じの……」


 全員が空間転移経験済みである。


「じゃあ、何で出てこないんスかね?」

「玄関叩いてみる?」

「理由が無いッスよ……尾行してたなんて言えないッスし……」

「今何時?」


 レイアの一言に、町に建てられた時計を見てカンナーが答える。


「十八時ですね。これ以上遅くなると親も心配するでしょうし、あと三十分をリミットにしましょう」


   ◇


 で、三十分後――


「くぅ~……何で今日に限って出てこないんスか!?」

「もう帰ろうよ。ナナトスも断続的に【温め(ウォーム)】使ってたしもう魔力無いでしょ?」

「私ももうお腹空いてきちゃったよぉ……」

「そうッスね……もう帰ることにするッス……」


 こうして、何の収穫も無く三人の尾行は終わったのだった。


 一方で時は少し(さかのぼ)り――

 すみません、少々考えることがあって投稿日を間違てしまいましたm(__)m


 次回は2026年1月19日の投稿を予定しています。

  【EX】第582.7話【二回目のお正月(休みのアルトラ邸)】

 次話も【EX】話。少し早い来週の月曜日投稿予定です。投稿時間は二十一時付近までのいずれかの時間になります。

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