協会の戦闘狂
千尋たちが離島へ向かっている頃、美姫はお酒をこぼしてベタベタになった小さい茉莉を風呂に入れようとしていた。
メイドの久我が美姫の代わりに茉莉を洗うと進言するも、美姫が自分でやると言って聞かなかった。
「さあ茉莉ちゃん、バンザイしようか。バンザーイ」
「ば?ばんざーい?」
既に酔いが回っている幼女茉莉は、美姫の言われるがままに両手を上げて、びしょ濡れの服を脱がされていた。
元々茉莉はお酒にはそこそこ強いのだか、身体が縮んだことによりアルコールの許容量が少なくなったのか、すぐに酔ってしまった。それどころか、もしかしたらお酒を飲んじゃいけない身体なのかもしれないが、まあ年齢は二十歳を超えているので法律ではセーフなのだ。
「ブラつけてないんだね、ぺったんこだし必要ないか」
美姫はまじまじと茉莉の色白の身体を見ていた。
茉莉は美姫の視線を特に気にすることなく、自ら下を脱ぎ始めた。
「ぬいだー!」
全てを脱ぎ捨てた茉莉は、まるで天使のような輝きと柔らかさ、愛おしさを放っていた。
そのまま茉莉は風呂場へと歩いていった。
「私も脱いだ方がいいわよね」
いそいそと脱ぎずらそうなドレスを脱ぎ始めるも、開始数秒でギブアップ。久我を呼んだ。
「久我さーん、脱がせてくれませんかー」
「わかりました」
久我がやってきて、美姫の後ろに立ち、大人のお着替えが始まった。
ドレスの後ろの留め具を外し、美姫の肌があらわになる。
ほどよい大きさの胸は服の締めつけから解放され、ぷるんと音がしそうな感じに揺れていた。
久我はそのまま美姫のショーツに手を伸ばすと、一気に足元まで下ろした。
ショーツのクロッチ部分を見た美姫は、少し恥ずかしそうに久我にお礼をした。
「あっ……その、いえ。ありがとう」
「いえ、別のショーツを用意しておきます」
「……はい」
(まさか私、小さい身体に興奮していたってことかしら。それとも茉莉ちゃんだから?)
美姫は悶々とした気分のまま、茉莉の待つ風呂場へと向かった。
「茉莉ちゃん酔っ払ってるからなるべく早く風呂から出さないとね」
美姫はボディソープを手に数回プッシュして、そのまま茉莉の背中にくっつけた。
「ひゃうぅ!」
ひんやりとしたボディソープにビックリした茉莉は、可愛い悲鳴を上げた。
「茉莉ちゃんのこんな声初めて聞いたかも」
美姫の顔は既ににやけていた。
美姫はボディソープのついた手で、茉莉の身体を撫でるようにして洗う。
「くすぐったい」
美姫の撫でるような洗い方に、茉莉は身をよじって耐えていた。
背中や脇などを洗い終わると、今度は前へと手を伸ばす。
まだ膨らんでいない胸元を、首元からへそにかけて何度も何度も撫でるよう手を這わせた。
「ん……ぁ……ぁぁ……」
酔っているせいだけじゃないだろう、顔を赤らめた茉莉の表情が少し艶めかしく見えた。
(大人の茉莉ちゃんも良いけど、小さい頃から私好みに仕込むのも悪くないわね)
美姫はうっとりとしながら茉莉への執拗な胸責めを続けた。
同刻、離島に着いた千尋たちは謎の女性に絡まれていた。
「戦うって、貴女何者なの!」
この場で一番ランクの高い八千代が二人の前へ出た。
「何者。そうね、私は魔法少女!戦うのが大好きで大好きでたまらないの!」
ジャラン。魔法少女を名乗る女性は自分の身体を抱くようにして身をよじらせると、鎖の音が響いた。
よく見ると、手首、足首、そして首に手錠のような鉄の輪っかがあり、数十センチの鎖が付いていた。
「四反田彩芽!」
中山は表情を変え、リボルバーを構える。
「中山さんは下がってて、ここはBランクの私がやる」
中山を制止させ、八千代は静かに変身をした。
それを見た彩芽は、クスリと笑った。
「Bランク!貴女若そうなのにBランクなのね!楽しみだわ!」
彩芽は狂ったような声を上げると、ただ普通に、なんの警戒をする素振りもなく歩いて近づいてくる。
「貴女、武器は出さないのかしら。それとも素手?」
「そうだ」
八千代はボクシングの選手のように両手を顔の前に構えた。
「なんか弱そうね」
先ほどのテンションから一転、彩芽は興味無さそうに呟いた。
「馬鹿に!するな!!」
八千代は自身に雷の魔力を纏わせ、一瞬にして彩芽との距離を詰め、全力の右ストレートを放った。
「!?」
しかし、放った拳は何も捉えていなかった。
「やっぱり弱いじゃない。まあ、弱者をいたぶるのも、キライじゃないわ!」
何故当たらなかったのか、呆然とする八千代の左肩に、彩芽は八千代と同じように身体に雷の魔力を纏わせ、右ストレートを放った。
八千代は何が起こったのかすらわからず、左肩の激痛に膝から崩れ落ちた。
「今、貴女の右ストレートをマネしてみたの。上手に出来たかしら?」
彩芽は八千代の顔を覗き込むように見て、嘲笑った。
「くそっ!」
八千代は不意打ちのように右のアッパーを繰り出すが、やはりなんの感触もなかった。
いつの間にか八千代の背後に移動していた彩芽は、八千代の背中に鋭いアッパーを放った。
「ガハッ!」
八千代は彩芽のアッパーで身体が浮くと、仰け反ったまま地面に叩きつけられ、動かなくなってしまった。
背中は逆方向に曲がっていて、腹部から出血もしていた。
「お腹破けちゃった?あはは!どんまーい!」
平然と残酷なことを、一瞬のうちに行った彩芽に、千尋は恐怖で身体が震えていた。
「え?嘘……でしょ?」
千尋はただ、立ち尽くすことしか出来なかった。
そんな千尋を見た彩芽は、千尋の言葉に答える為か、動かなくなった八千代の元に行くと腹部の裾を捲りあげて答えた。
「内蔵っぽいのが見えているわよ?やっぱり裂けてたわね。残念ながら、嘘じゃなかったわ」
ぐしゃり。彩芽は裂けた八千代の腹部に手を突っ込むと、赤黒い何かを掴み、千尋たちに見せつけた。
「これなんの部位かしらね?」
そのまま彩芽は赤黒いものを握り潰して地面に捨てた。
「いやぁぁぁぁぁ!!!嘘!嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!あああっ!!」
つい先ほどまで手を繋いで一緒に話していた八千代の臓物が、目の前で握り潰されるという信じられない状況に、千尋は狂ってしまう。
千尋は変身をし、ステッキで彩芽に殴りかかった。
彩芽はそのステッキを素手で受け止め、そのままステッキを折って壊した。
「あらら、壊れてしまいましたわ」
「時野谷千尋、下がれ!」
中山は叫ぶと、リボルバーで彩芽に向かって魔力を込めた銃弾を撃ち込んだ。
その銃弾をバク宙であっさりと避けた彩芽。
「そのリボルバー……。思い出しました、貴女、中山じゃない!ナイフじゃないから気が付かなかったわ」
「……」
中山は無言で、リボルバーを構えた続ける。
「それに時野谷と言ったかしら。もしかして特殊な力でも隠しているのかしら?」
中山の近くまで下がった千尋は、ステッキが壊されて先ほどより正気を取り戻していたが、彩芽の言葉に心当たりはなかった。
「まあいいわ、二人同時に相手して、あげるからぁ!」
彩芽はどこからか取り出した拳銃と刀で、二人の間に飛び込んできた。
彩芽は着地と同時に、中山の方へ拳銃で発砲。その瞬間に千尋の左腕を肩から切り落としていた。
「ちっ!」
中山は弾丸をリボルバーで弾きながら彩芽と距離を取るように後方へ跳躍した。
一方、腕を切り落とされた千尋はそのショックから気を失ってその場に倒れていた。
腕の断面からはおびただしいほどの血が流れ出て、血だまりが出来ていた。
「あら、普通に腕切れちゃいましたね。まあ時野谷って名前聞くだけでイライラしますし、ついでに首も落としておきますか」
彩芽は刀を片手で軽く振り下ろして千尋の首を切断した。
刀の先で首を動かし、断面が上を向くようにした。
「うわぁ、いつ見ても気持ち悪いですね、首の断面って」
そういいながら彩芽は断面を刀の先でグチャグチャとかき回していた。
ダンダンッ。
彩芽が千尋の首の断面を弄っている隙を見逃さずに中山は銃弾を彩芽に放つ。
彩芽は先ほど中山がやった銃弾弾きを、銃弾を見ずに弾いてみせた。
「そういえば中山、メイド服着だしてからそのリボルバーを使うようになったわね。もう前みたいにナイフは使わないのかしら?」
彩芽は血で汚れた刀を捨て、刀よりもかなり短いナイフを取り出した。
「使わないならそれでもいいわ。中山、貴女もこの生ゴミみたいに殺してあげるわ!」