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憑いてる。  作者: 受験孔明
影
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49/82

第49話 見覚えのない記憶


# 第49話 観測者


 机の上の紙。


 そこに浮かんだ数字。


 **三。**


 将太は何度も見直した。


「三人……?」


 隣に立つ三成は答えない。


「俺以外に二人いるってことか?」


『可能性がある。』


「誰だよ。」


 三成は静かに将太を見る。


『まだ決まっていない。』


「でも三人って書いてある。」


『候補だ。』


 一拍。


『選ばれたわけではない。』


     *


 翌日。


 学校。


 将太はいつも通り授業を受けていた。


 だが。


 頭の片隅には、ずっと数字が残っている。


 三。


 誰なのか。


 なぜ自分なのか。


 考えても答えは出ない。


「綾小路。」


 休み時間。


 悠真が声を掛けてきた。


「最近、何か変だな。」


「……分かるのか。」


「分かる。」


 悠真は即答した。


「君は普段、周囲を見ている。」


「でも最近は違う。」


「探している。」


 将太は黙った。


 悠真は続ける。


「何かを警戒している目だ。」


     *


 放課後。


 塾。


 授業前の教室。


 将太は足元を見る。


 影。


 普通の影。


 もう以前のような違和感はない。


 そのことが逆に怖かった。


「綾小路。」


 悠真が問題集を閉じる。


「聞きたいことがある。」


「何。」


「停止した世界について。」


 将太の手が止まる。


「……何で。」


「僕も見たから。」


 短い言葉だった。


 将太は顔を上げる。


「いつ。」


「最近。」


 悠真はノートを開く。


 そこには細かい記録があった。


 止まった時計。


 誰もいない空間。


 白い場所。


 知らない声。


「最初は夢だと思った。」


 悠真は言う。


「でも。」


 ページをめくる。


「夢では説明できない。」


     *


 その時。


「やはり、お前もか。」


 天堂だった。


 将太と悠真が振り返る。


「天堂。」


 天堂は二人のノートを見る。


「俺も同じだ。」


 悠真が尋ねる。


「君も見たのか。」


「ああ。」


「どこを。」


 天堂は少し考える。


「階段だ。」


「階段?」


「終わりのない階段。」


 三人は黙った。


 場所は違う。


 見えている景色も違う。


 しかし。


 起きていることは同じだった。


     *


「三人。」


 将太が呟く。


 悠真と天堂を見る。


「何が。」


 天堂が聞く。


 将太は迷った。


 だが。


 もう隠しても意味がない気がした。


 紙を取り出す。


 そこには。


 **候補 三**


 の文字。


 悠真はしばらく見つめた。


「観測者候補。」


「知っているのか?」


 悠真は首を振る。


「違う。」


「ただ。」


 一拍。


「この言葉が一番近いと思う。」


     *


 夜。


 停止世界。


 白い駅。


 将太は三成と並んでいた。


「二人に話した。」


『そうか。』


「怒らないのか。」


『必要な時が来た。』


 将太は駅の先を見る。


「三人って。」


『ああ。』


「俺と悠真と天堂なのか。」


 三成はすぐには答えなかった。


『違うかもしれぬ。』


「じゃあ誰だよ。」


『観測者とは。』


 三成は静かに言う。


『自分で名乗るものではない。』


     *


 その時。


 白い駅の奥。


 一つの影が現れた。


 人の形。


 だが。


 顔は見えない。


 将太は息を止める。


「また……。」


 三成が刀へ手を掛ける。


『違う。』


「違う?」


『敵ではない。』


 影はゆっくり歩いてくる。


 そして。


 将太たちの前で止まった。


 白い紙を一枚差し出す。


 そこには。


 新しい文字。


 **観測者候補 三名**


 その下に。


 名前はなかった。


 代わりに。


 空白だけが残っていた。


     *


 三成が小さく呟く。


『まだ、空席だ。』


 将太は白い紙を見る。


 空白。


 何も書かれていない。


 だが。


 それは何もないのではない。


 これから書かれる場所だった。



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