第49話 見覚えのない記憶
# 第49話 観測者
机の上の紙。
そこに浮かんだ数字。
**三。**
将太は何度も見直した。
「三人……?」
隣に立つ三成は答えない。
「俺以外に二人いるってことか?」
『可能性がある。』
「誰だよ。」
三成は静かに将太を見る。
『まだ決まっていない。』
「でも三人って書いてある。」
『候補だ。』
一拍。
『選ばれたわけではない。』
*
翌日。
学校。
将太はいつも通り授業を受けていた。
だが。
頭の片隅には、ずっと数字が残っている。
三。
誰なのか。
なぜ自分なのか。
考えても答えは出ない。
「綾小路。」
休み時間。
悠真が声を掛けてきた。
「最近、何か変だな。」
「……分かるのか。」
「分かる。」
悠真は即答した。
「君は普段、周囲を見ている。」
「でも最近は違う。」
「探している。」
将太は黙った。
悠真は続ける。
「何かを警戒している目だ。」
*
放課後。
塾。
授業前の教室。
将太は足元を見る。
影。
普通の影。
もう以前のような違和感はない。
そのことが逆に怖かった。
「綾小路。」
悠真が問題集を閉じる。
「聞きたいことがある。」
「何。」
「停止した世界について。」
将太の手が止まる。
「……何で。」
「僕も見たから。」
短い言葉だった。
将太は顔を上げる。
「いつ。」
「最近。」
悠真はノートを開く。
そこには細かい記録があった。
止まった時計。
誰もいない空間。
白い場所。
知らない声。
「最初は夢だと思った。」
悠真は言う。
「でも。」
ページをめくる。
「夢では説明できない。」
*
その時。
「やはり、お前もか。」
天堂だった。
将太と悠真が振り返る。
「天堂。」
天堂は二人のノートを見る。
「俺も同じだ。」
悠真が尋ねる。
「君も見たのか。」
「ああ。」
「どこを。」
天堂は少し考える。
「階段だ。」
「階段?」
「終わりのない階段。」
三人は黙った。
場所は違う。
見えている景色も違う。
しかし。
起きていることは同じだった。
*
「三人。」
将太が呟く。
悠真と天堂を見る。
「何が。」
天堂が聞く。
将太は迷った。
だが。
もう隠しても意味がない気がした。
紙を取り出す。
そこには。
**候補 三**
の文字。
悠真はしばらく見つめた。
「観測者候補。」
「知っているのか?」
悠真は首を振る。
「違う。」
「ただ。」
一拍。
「この言葉が一番近いと思う。」
*
夜。
停止世界。
白い駅。
将太は三成と並んでいた。
「二人に話した。」
『そうか。』
「怒らないのか。」
『必要な時が来た。』
将太は駅の先を見る。
「三人って。」
『ああ。』
「俺と悠真と天堂なのか。」
三成はすぐには答えなかった。
『違うかもしれぬ。』
「じゃあ誰だよ。」
『観測者とは。』
三成は静かに言う。
『自分で名乗るものではない。』
*
その時。
白い駅の奥。
一つの影が現れた。
人の形。
だが。
顔は見えない。
将太は息を止める。
「また……。」
三成が刀へ手を掛ける。
『違う。』
「違う?」
『敵ではない。』
影はゆっくり歩いてくる。
そして。
将太たちの前で止まった。
白い紙を一枚差し出す。
そこには。
新しい文字。
**観測者候補 三名**
その下に。
名前はなかった。
代わりに。
空白だけが残っていた。
*
三成が小さく呟く。
『まだ、空席だ。』
将太は白い紙を見る。
空白。
何も書かれていない。
だが。
それは何もないのではない。
これから書かれる場所だった。




