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憑いてる。  作者: 受験孔明
影
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45/82

第45話 分類



# 第45話 王の警告


 翌日。


 将太は朝から何度も窓を見た。


 教室の窓。


 廊下のガラス。


 校舎の鏡。


 どこにも異常はない。


 それなのに。


 見られている感覚だけが残っていた。


     *


 放課後。


 塾。


 授業前の教室。


 天堂はいつものように窓際に立っていた。


 将太が席へ座ると。


「昨日。」


 天堂が口を開く。


「何かあったな。」


 将太は顔を上げる。


「何で分かる。」


「顔。」


「顔?」


「普通じゃない。」


 将太は苦笑した。


「それだけで分かるのかよ。」


「分かる。」


 天堂は即答する。


「人を見るのは得意だ。」


     *


「鏡か。」


 天堂の一言に、将太の手が止まる。


「……何で。」


「やっぱりか。」


 天堂は窓の外を見る。


「昔、一度だけ見た。」


「何を。」


「同じようなものを。」


 将太は黙った。


「その人は。」


 天堂は少し間を置く。


「最初は影だった。」


「次に鏡。」


「最後に。」


 言葉が止まる。


「最後に?」


「自分が自分なのか、分からなくなった。」


 将太の背中に寒気が走る。


     *


「その人はどうなった。」


 天堂は答えなかった。


 代わりに。


「お前はまだ違う。」


 と言った。


「何が。」


「まだ、自分を疑ってない。」


 将太は眉をひそめる。


「疑う?」


「鏡に映ったものを見て。」


 一拍。


「本物はどちらだと思うようになる。」


     *


 三成が静かに口を開く。


『経験者か。』


 天堂は三成を見る。


「やはりいたか。」


『知っていたのか。』


「存在だけ。」


 天堂は将太を見る。


「だから警告している。」


「何を。」


「追うな。」


「近づくな。」


「確かめようとするな。」


 将太は反論する。


「でも、向こうが見てくる。」


「分かってる。」


 天堂の声が低くなる。


「だから怖い。」


     *


 その時。


 悠真が問題集を閉じた。


「話は終わった?」


 二人が振り返る。


「聞いてたのか。」


「全部ではない。」


 悠真は淡々と言う。


「でも。」


 将太を見る。


「綾小路の周囲で、条件が変化している。」


「条件?」


「今まで。」


 悠真は指を一本立てる。


「見る側だった。」


「今は。」


 もう一本、指を立てる。


「見られる側になっている。」


 教室が静まる。


     *


 夜。


 停止世界。


 白い駅。


 将太は三成へ聞いた。


「俺は、もう戻れないのか。」


 三成はすぐには答えなかった。


『戻れる。』


「本当に?」


『ああ。』


『だが。』


 三成は白い線路を見る。


『知ってしまった者は、知らなかった頃には戻れぬ。』


 将太は黙った。


     *


 遠くで。


 駅の時計が一度だけ鳴った。


 白いホームの奥。


 一瞬だけ。


 誰かの影が見えた。


 将太は目を細める。


「誰だ。」


 三成が止める。


『見るな。』


 しかし。


 もう遅かった。


 影はゆっくり手を上げていた。


 一本の指。


 一。


 黒いコートの人物と同じ仕草。


 将太は息を止める。


 その瞬間。


 影は消えた。


     *


 三成が低く呟く。


『数えている。』


「何を。」


 三成は答えなかった。


『まだ早い。』


 だが。


 将太には分かった。


 何かが。


 近づいている。



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