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 海の底には人魚の寄り合いがある。

 岩で作られたテーブルと椅子がいくつも置いてあって、近い年頃の女達が集まっておしゃべりに花を咲かせる場だ。


 久しぶりにそこに顔を出せば、途端に声をかけられた。


「フェル! あんた、なによ、その髪は!?」


 幼い頃から仲の良いフレーディアはフェリシアの世話係を自任している。当然のように彼女の厳しい目はフェリシアの乱れた頭に向けられた。


「暴れるにしたって限度があるって。ほら、直したげるからこっち来な」


「ダ、ダメ! これはこのままでいいの!」


「いいわけないでしょう!!」


 落ちた雷から大急ぎで頭を庇ったフェリシアだ。


 タイシと違ってフレーディアは海中を自由自在に泳ぐことができる。あっという間に背後を取られ、大慌てで逃げ回った。


「待ちなさい!」


「やだってば! 触らなくていい! このままがいいの!」


 必死の鬼ごっことなった二人に、少しお姉さんの友人がおっとりと「暴れると解けるわよー」と声をかけてくる。


 すぐ様尾びれを停止させたフェリシアは無情にも捕まってしまった。


「ほら、観念しなさい!」


「ダメだったら!! 外したら、ディアでも怒るから!」


 フレーディアはポカンとフェリシアを見つめて、やっと頭の紐から手を離した。

 この、よく言えば朗らかで悪く言えば呑気な幼馴染みが本当に嫌がっていることをようやく飲み込んだらしい。


「……あんた、急にどうしたわけ?」


「別に……なんでもないけど、これはこのままでいいの!」


「このままでってね、フェル………………あんた、その頭…………本当に酷いわよ……?」


 成り行きを見守っていた友人達が一斉に頷く。そのうちの一人が手鏡をこちらに向けて見せてくれたが、覗き込んだフェリシアは再び『うわぁ』と思った。


 タイシが整えてくれた時もそれは無残な有様だったが、今やフレーディアとの戦闘で更に乱れはひどくなり、ほとんどほつれている。


「…………」


「……ほら、直したげるから。こっち向きな」


 友人からの誘惑にフェリシアは堪え抜いた。


「いい。本当に、その……これはこれで……大丈夫なの。げ、芸術的だし」


 いくつかの白い目が全身に刺さる。


 変わり者だ変わり者だと思ってきたがここまでとは。そういう友人達の心の声がはっきりと聞こえてきそうだった。


 白い目の持ち主その一が呆れて言った。


「フェル。……もしかしてそれ、誰かにしてもらったの?」


「ふぇ!?」


「だって、あんたの顔──真っ赤よ?」


 石の椅子から腰を上げた友人達がゾロゾロとフェリシアを取り囲む。


「男だわ。絶対そう。だって結ぶのヘッタクソだもん」


「これは尋問ね」


「ほら。容疑者はさっさとテーブルにつきなさい」


「わっ わたしは犯罪者じゃない!」


 囲みを抜けて逃げ出すも多勢に無勢だった。


 即座に両脇を抱えられ、連行されたフェリシアが洗いざらいを吐くのは時間の問題だった。

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