第一章第五節、爆弾
神様、神様、仏様、罪なき僕たちは今、窮地に立たされています。
こんな時も『実況中継』されてるのか?洋次郎。
「魁!そっち!」
惺葉?何を言って───あ、爆弾だ。
「うおおおおおおお!」
咄嗟に、近くにあった中ぐらいの石をぶん投げた。
当たるはずもないし、逃げようにももう遅い。
死ぬのか。僕は。
最後ぐらいもっと格好つけたかったなぁ。
爆発が直撃したらすぐ死んでしまうのだろうか。
もし、少しだけ時間があるとしたら、そうだな。
渡せるものは懐中時計ぐらいしか持ってないよな。
形見として残すのはどうなんだ?
「…め……魁!早く逃げるよ!」
惺葉!?
あれ、なんで僕は生きてるんだ?
もう一度上を見上げると、飛んできた手榴弾は無くなっていて、破片がパラパラと地面に転がっていた。
当たったのか。
「…ああ!今行くよ」
そうして、二人で少しの間走った。
惺葉がバテて来たようなので立ち止まって後ろを振り返る。
…よかった。テロ集団は追ってきてないようだ。
「ふぅ…。危なかったぁー!」
「あいつら、手榴弾なんて持ってたのか」
「私が言わなかったら魁、危なかったでしょ!」
本当にその通りだ。情けないことを考えてしまった自分を恥ずかしく思う。
「当てたのも、すごかったけど…」
確かに。身体が勝手に動くというのは、あんなことを指すのか。
「…!」
足音が聞こえる。
「惺葉、誰かがこっちに走ってくる。隠れよう」
小声で伝えると、惺葉が崩れかけたパン屋の方へ駆け出したので、僕もついていき二人でカウンターの陰に身を隠す。
暫く様子を窺っていると、その足音は、さっきまで僕らがいた場所で立ち止まった。
それは、小さな女の子だった。
小学四年生ぐらいの身長で、僕らを探しているのか、視線をあちこちに巡らせている。
「さっきの人たち…いなくなっちゃった…」
彼女の呟きは僕らに聞こえていた。
「…ねぇ、惺葉」
「何?」
「あの子、きっと僕らに助けを求めようとしてるんだよ」
「そう思えなくもないけどさぁ…」
「僕、声かけてくるよ」
「ちょっと待ってよ」
確かに、三人になれば、危険と遭遇するリスクも高くなる。
でも、僕はあの子を放っては置けない。
「こんにちは。お嬢ちゃん」
「あ、さっきの人!」
「ひょっとして、僕らのこと探してた?」
「うん」
「パパとママがね、今走っていった二人なら、きっと助けてくれるって言ってたの」
「そうなんだね。きみ、名前は?」
「あすか」
「そっか。いい名前だね。」
「さ、大変だったね。もう大丈夫だよ。ほら」
この子を受け入れるつもりで、僕は腕を広げた。
あやねは、すぐさま僕の胸に飛び込んできた。
彼女の体から機械音が聞こえた。
「魁!その子はやっぱり罠だ!逃げて!」
僕の体は爆発と轟音で包まれた。
惺葉の声が聞こえてすぐ、また僕は投げた。今度ば懐中時計を。
彼女が、最後の刻まで生きてくれるよう、願って。
ありがとう。じゃあな。世界。




