第一章第三節、解放
全てが解き放たれた気分だ!最っ高!
「ははは!!」
高らかな笑い声を上げ、家を飛び出た。
アパートの二階に住んでいて、危うく落っこちそうなぐらいの勢いだったが、結局落ちなかったから階段を全力で駆け抜けてやった。
ボロいからあんまり強い衝撃を与えると踏み抜くかも、とか言われてたけど、そんなことだってこれからはどうでも良くなる。
今も着々と拡散されていく彗星の事実に、人々は不安を募らせ、情弱な奴らはパニックを起こしかねない。
僕もツイートしよう。
不安を煽って煽って、そして…!
あぁ、恍惚とは今の僕を表すのにぴったりだ。
「…ん?」
辺りを見回していると、同級生の姿があった。
「あっれー?恵逢架ちゃんじゃんか!」
「…き、木戸…くん、なの?」
「正真正銘、木戸一郎でーっす。いやん」
今更まともに話す必要なんかない。真面目を装う必要もない。
「木戸くん、なんか、いつもと違って、変だよ…。どうしたの?」
なーに言ってんだか。
「後十数日で世界終わんだぜ?今際の際まで自分演じなきゃだなんて、そんなカスみたいな人生はゴメンだね!」
「ところで何の用?」
抑揚も態とらしくつけ、緩急もつけて喋る。
「あ、いや、えっと…、木戸くん今日学校来てなかったから、どうしたのかなー…って」
「…スマホ、見てみなよ」
僕が言ったら、困惑しながらも逢架はスマホを開いた。
きっと、友達からたくさんのLINEが来ていたのだろう。
沙耶、由衣、碧、と女子の名前を呟いている。
「彗星が、落ちるって、本当なの?」
逢架がやっと口を開いた。
「あぁ、本当だよ」
恐怖心から涙が込み上げてきたのか、目を潤わせ、逢架は震えている。
僕は本能的に思った。
そうだ。逢架を利用しよう。
逢架を利用して、さっさと僕らの自由を手に入れるんだ。
「ねぇ、逢架ちゃん。どうせ終わる世界なんだしさ…




