34_城壁湾港都市ハクシーラン その6(偵察-領主館)
潜水してユーナに着いていき、海中の隙間から横穴に潜り込んだ。穴は直ぐに斜め上方に伸びており、そのまま進むと狭い岩場に顔を出すことが出来た。潜水時間はだいたい30秒といったところか。たしかにこんな横穴、見つけろという方が無理な話だ。
ユーナとともに岩場に上がる。奥には、人がひとり通るのがやっとという細穴が先に続いている。
「濡れたサラシのままだと気持ちが悪いだろう。後ろを向いておいてやるから、これで身体を拭いた後にこれを着ろ。」
そう言って、バスタオルと女性用水着をユーナに渡す。
「これは身体を拭く…浴巾? それから、これは何?」
「水に入るときに着用するものだ。綿のサラシと違って乾きやすい。」
「あんた、そんなものがあるなら先に言ってよね。」
ユーナは身体を拭きながらぶつぶつ文句を垂れてれいる。
「まさか海中に潜るなんて思わないだろ。」
「まぁいいわ。着替えるからあっち向いてて。見たら殺すわよ。」
「殺されても見たい。だが仕方がない、後ろを向いててやる…って!!」
相変わらず前蹴りが脛に炸裂する。
「冗談だって。少しは加減してくれ…。」
「なに可愛いこと言ってんのよ。というか、これ、どうやって着るのかしら…?」
「ん? 着せてやろうか?」
「もう一回蹴られたい?」
「勘弁してくれ。」
水着を着るのに四苦八苦しているユーナを放置し、俺も身体を拭いて着替えることとする。ここはいつもの服ではなく、元世界の私服に着替える。岩場だからミリタリーブーツが役に立つ。
「これ、で、良いのかしら…?」
「着れたか? 振り返るぞ。」
「え、えぇ、大丈夫よ。」
振り返ると、ビキニ姿のユーナが豊かな肢体を晒して立っている。暗視ゴーグル越しであることが残念でならないが、まったくもってエクセレントだ。
「なにジロジロ見てんのよ…? これで合ってるわけ?」
「間違いない。ユーナ、最高だ。」
サムアップ。間髪入れずにユーナから前蹴りが繰り出される。
「痛って! 待て待て! 今ローブを渡すから着ろって! まったく油断も隙も無いやつだ。ほらよ。」
収納していたローブを召喚してユーナに渡してやる。
「油断も隙もないのはあんたの方でしょ。ほんっと、男ってのは神話通りの生き物ね。」
「その通りだ。確認できて良かったじゃないか。」
「蹴り飛ばして海に沈めるわよ。」
ニコニコ顔がかえって怖い。
「怖い魔導師様だ。さて、この奥に進むと領主館に繋がっているのか?」
奥の方を見ると、ひたすらに横穴が続いているように見える。
「ええ、そうよ。領主館までは一本道。ある程度直線的につながってるけど、まぁ、結構な距離ね。」
「だろうな。そういえば、よくこの海蝕洞窟に来ていたと言っていたが、この通路を通ってきていたのか? 海側から来るのは無理だろう?」
ユーナを先頭に進む。特に変わったこともなければ、巡回の兵士がこちらに歩いてくる様子も無い。
「そうよ。私の我儘でここまで船を出してもらうわけにもいかないし、勝手にここを通ってきてたのよ。」
「かなりのじゃじゃ馬娘だったんだな。」
「まぁ確かに、屋敷に籠り切りになるのは性に合わなかったのは事実よ。お母様の娘だもの。」
少し、昔を懐かしむような声だ。この洞窟に来た時のような緊張はもう解けているようだった。
「それで? この先は領主館のどこに繋がってるんだ?」
「領主館の地下倉庫よ。飽くまで当時は、だけど。ガーク商会がどんな風に部屋を使ってるか分からないし、それは行ってからのお楽しみね。」
「この通路、デクマルシアに気付かれてないと思うか?」
「どうかしらね。でも気付かれてないと思うわ。ダミーの抜け道があるから。」
「ダミーの抜け道?」
「見たほうが早いわよ。さ、着いてきて。」
そう言って狭い洞窟の中を進むユーナに付いていく。かなり狭い。閉所恐怖症の人間には絶対に無理な空間だ。
「ところでユーナ、全然話は変わるが、なぜウィネ共和国は『共和国』なんだ?」
「本当に唐突ね…。でも、それどういう意味?」
「いや、別に『王国』でも『帝国』でもいいんじゃないか? どうしてわざわざ『共和国』なんだろうと思ってな。前々から他の国と色合いが違うなと思ってたんだ。まぁ、また『あんた本当に常識ないのね』とか言われそうだが…。」
「先に言われたら言えなくなるじゃない。まぁいいわ、領主館まで長いし、暇潰しに教えてあげる。」
洞窟を進む歩調はそのまま、ユーナが答えてくれる。
「何百年も前の話らしいだけど、メリディ大陸には小国が各地に点在してたらしいわ。そこでは民衆なり民衆の代表なりが一堂に会し議論を交わして国の方針を決めてたようなの。」
「つまり民主制か。」
「そうよ、よく知ってるわね。だけど、メリディ大陸の南部には魔凶山を始め、凶悪な魔物が出没する『魔境』の山脈が広がってる。ある時、魔物湧出が起きて周辺の国々は対応を迫られたの。」
「魔物湧出か。確かユーナが定期的にやっている威力偵察も魔物湧出の兆候を把握するための活動だったな。」
「そうよ。覚えてることにびっくりしたわ。」
ユーナが振り向き、からかうように口角を上げる。
「俺をアホだと思ってるだろ…。」
「あら、違ったの? まぁそれで、各国個別で対応してたら全滅するから、国々は団結した。でもいちいち話し合いで決めていては手遅れになる。だから一人の女傑『モーシモ・エクオース』という人物を指導者に立て、バラバラだった国々をひとつにまとめたの。軍も一本化して戦い、結果、辛うじて魔力湧出を抑えることができた。もう二百年も前の話ね。私だって貴族教育を受けることがなければ興味すら無かった話よ。」
「なるほどな。だがめでたしめでたし、とはならないだろう。共通の敵が消えれば内輪揉めが始まる。」
「なにあんた、今日は冴えてるじゃない。」
またユーナが振り向き、口をホっと突き出し軽く拍手する。ナイトビジョンを装着してるのでシュールな絵面だ。てか、完全に舐めてやがる。
「『今日は』は余計だ。」
「それでまぁ、あんたの予想通り内戦が起きた。けれどやっぱり魔物湧出を止めたモーシモへの支持は厚く、結局彼女が周辺国を統合してグラーパ共和国を樹立したのよ。本質は王国なんだけど、各国が民主制だったときの名残で共和国にしたんだって。少なくとも、母様からはそう教わったわ。」
「そうか、なるほどな。名残、か。よく分かった。それで? 名前の似てるモーリン・フェアウはモーシモの末裔か? 姓と国名が違うが…?」
「まさか、モーリンがモーシモの子孫なわけないじゃない。歴史のお勉強ついでに教えてあげる。フェアウ家は代々、グラーパ共和国の軍部を掌握していた一家よ。それがモーリンの先代、カダリン・フェアウが軍を率いて反逆を起こしたの。それ以降、フェアウ一家が頂点に立つ国となったのよ。国名も今のウィネ共和国に改名して、暴力と圧政による支配を確立したってわけ。そういう意味だと、民衆にとってはまだサイレル領の方がマシでしょうね。」
「ということは、だいたいここ百年くらいの話か。反逆を起こされたモーシモはどうなったんだ?」
「60年くらい前って話ね。モーシモは反逆で死んだらしいけど、家族は不明。死んだとも言われてるし、他国に落ち延びたとも言われてるわ。死体が無かったらしいから。」
信長かよ! 延々と延びる洞窟にいい加減飽きてきて突っ込みたくなる衝動を抑える。
「なるほどな。どこの世界も…いや、どこの地域も同じようなもんだな。」
女性社会でも魔法があっても魔物がいても、人間のやることは同じってことだな。
―◇―◇―◇―
そこから約1時間かけて歩みを進める。暗視ゴーグルで見続けるのもなかなか辛くなってきたが、兵士が哨戒している可能性を考えると、おいそれと光を使うこともできない。
と、ずっと一本道だった狭い洞窟の先が行き止まりになっている。洞窟の終端に辿り着いたのだ。
「ここね。」
前を行くユーナが止まる。
「着いたのか?」
「ええ、ここの地上はもう領主館よ。」
そう言ってユーナはしゃがみ込み、何かを確かめるように地面に転がる岩を調べ始めた。かなり大きな岩だが、何かあるのだろうか。
「バレてないみたいね。」
ユーナは一通り岩を調べ、ほっと肩を落としてそう告げた。
「どうしてそう言える?」
「この岩が動かされた形跡が無いからよ。岩の周り、見て見なさい。うっすら砂埃が積もってるけど、私たちのもの以外、足跡も手形も無いわ。」
言われてみると確かに、岩の周りばかりか岩そのもの、そしてこれまで通ってきた通路にも、俺とユーナの痕跡以外は皆無だ。
「この岩をどけると、下に隠し部屋がある。さすがにその隠し部屋はバレてるでしょうけど、ちょっと覗いてみるわね。」
「危険ではないのか?」
「危険よ。でもこの蓋を開けない限り、領主館へは入れないわ。」
「道理だな。頼んだ。」
ユーナが岩に向き直り、手を翳す。そして、岩を抱えたかと思うと、まるで体積だけ巨大な発泡スチロールを持ち上げるように、巨岩を脇にどけた。
(浮遊魔法すげぇな。ユーナに掛かれば、あの巨岩も発砲スチロールかよ。投石機を運搬したときは、陸軍の魔導兵が2人がかりで掛けてやっと運べる重さになったってのに…。)
巨岩をどけた下に、ぽっかりと穴が開いている。覗いてみると、エレベーターの箱程度の空間があった。もちろん、壁や地面は岩や土がむき出しだったが。
ユーナが箱に飛び降り、続いて俺も飛び降りる。ゴーグルの映像が白みがからないので、相変わらず近くに光源はないのだろう。
とんとん、とユーナに肩を叩かれる。見ると、ユーナが人差し指を唇に当て、もう片方の手の人差し指で奥を指差す。よく見ると、腰までくらいの高さの空間が奥に続いている。なるほど、ここを通り抜けると地下倉庫というわけか。
ユーナに頷く。
次いでユーナが反対側の壁の下を指差す。見てみると、下の方にダクトほどの、人がひとり這いつくばって通れるような隙間が空いている。ユーナを見ると口パクで『ダミー』と言っているのが分かる。つまりこれが、ダミーの抜け道ということか。
再びユーナにこくりと頷く。
そんな俺にユーナも頷き、奥に続く通路に中腰で入っていく。しばらく進むとゴーグルの映像が白みがかってきた。ユーナにもジェスチャーで指示し、先ほどと同じようにゴーグルを跳ね上げる。裸眼で見ると、不規則に揺れるオレンジがかった光が奥から差し込んでいた。
ユーナとアイコンタクトを交わし、慎重に進む。着いた先の部屋は――
「誰もいないわね。」
「いつ誰が来るか分からん。油断するなよ。」
部屋は石壁の、20畳ほどの空間だった。葡萄酒の樽にチーズ、干し肉などがところ狭しと整然と配置されている。どっからどう見ても食糧保管庫だ。その他には使われなくなった執務机や椅子などが雑然と配置され、また一角に木製の本棚が置いてあり、いくつかの書類が格納されている。
「完全に物置兼、食糧保管庫ってところだな。」
ユーナが廃棄された執務机に近付き、複雑な顔をしている。
「どうした?」
「これ、この机と椅子、お母様が使われてたものよ。」
確かに、立派で頑丈そうな執務机と椅子だ。長い歳月を経てなお光沢を放つその家具は、元世界のアンティークショップに売れば相当な額になるに違いない逸品だろう。
そのとき、外から話し声が聞こえたかと思うと、この地下倉庫のドアの鍵が外される気配がする。
俺とユーナに緊張が走り、急いで元来た通路に中腰になって隠れた。
ギイィィィと扉を開く、重く軋む音が地下室に反響し、続いて何者かが入室してきた気配がする。
「あー眠ぃ。いっつも思うんだけどよぉ、なんだってこんなところを夜中に巡回しなくちゃいけないわけ?」
「知らないわよそんなこと。巡回なんて、命令されたことを命令された通りにやってりゃいいのよ。」
「んだよ真面目かよ。」
「違うわよ。この程度の簡単な夜間巡回で割り増しの給金が貰えるなんて、楽勝だと思わない? ってこと。」
「確かに、違ぇねぇ。」
かちゃんかちゃんと、彼女たちが歩くたび、金属プレートが触れ合う独特の音が聞こえる。どうやら、巡回の兵士が2名入ってきたようだ。
「なぁリーファ、このチーズ食っていいと思う?」
「ばか、いいわけないでしょ。」
「ちぇー、ちょっとくらいくすねたってバレねぇって。」
「ヤバスあんたね、ここの食糧在庫がそこの帳簿に記帳されてるってこと、知らないの?」
「ったく、そうだったぜ。つまんねーの。」
二人がこちらに来る気配はない。ユーナと頷き合い、しばらく巡回兵士――リーファとヤバスの会話に耳を傾けることにする。
「でもまぁ確かに、こんな地下倉庫をこんなに神経質に巡回する意味ってなんなのかしらね?」
「あ? そんなのウチが知るわけねぇじゃん。ここの食糧をネズミに喰われたくないからだったりしてな。巡回を強化して食糧を齧るネズミを退治せよってな。だったらウケる。」
ヤバスと呼ばれた女性兵士の軽薄な笑い声が反響する。
「ネズミ、ね。そのネズミとは違うけど、侵入者って意味ならここから入ってこれるわけないのにね。」
「あー、あれか? この奥に隠し通路があるんだろ? 確かラガン港に繋がってるって聞いたぜ。」
「そうよ。でも、ラガン港側の入り口は、常に衛兵が重点監視してるから、そこから入って来れるわけはないのよ。」
(なるほどな。そういう意味で『ダミー』か。抜け道を1つ発見すれば、心理的に安心して2つ目を探すことなんてしないだろうからな。)
「じゃぁやっぱりネズミなんだろうぜ。あのデカ女が食い物にがめついだけだって。ぶくぶく太ってやがるしな。」
「ばか! デクマルシア様はたまにご自身でもここにいらっしゃるのよ。聞かれたらただじゃ済まないでしょ…!」
「ほんとかよ…。リーファお前、そういうことは先に言っておいてくれよ…。あーおっかねぇ。」
「ヤバスあんたは普段から言葉遣いが悪いのよ。少しは改めなさいよね。」
「へいへい。で、なんだってデクマルシア様はこんなところに来られるんだ?」
「さぁ、それは私にも分からないわ。だけど、2ヶ月くらい前からね、やたらここに行かれるようになったのは。」
「2ヶ月前、かぁ。なんかあったっけ?」
「そうねぇ…。2ヶ月前といえば、丁度あの洞窟で共和国と密輸が始まった時期ね。それくらいしか思い浮かばないわ。」
思わずユーナと顔を見合わす。
「あー、あれな。さすがのウチも作業員の連中には同情するぜ。あのデカい保管場所を作るために何人くたばったか。」
「そう思うんだったらもうちょっと真面目に仕事なさいよね。軍隊に所属している限り、無駄に使い潰されることも食いっぱぐれることも無いんだから。」
「違ぇねぇ。長い者には巻かれろってな。それにしてもリーファ、あの木箱の中身って何か知ってるか?」
「知るわけないじゃない。開封厳禁と下令されてるんだもの。」
「だよなぁ。誰か開けてくれねぇかな。」
「そうなったら、犯人が見つかるまで全員取り調べを受ける羽目になるわね。」
「そりゃ勘弁だな。」
ユーナと頷き合う。後で回収した木箱を開けてやろう。
「そういえば昨日、デクマルシア様に石を投げつけた不届き者がいたって聞いたわ。なんか、痩せ細った子供だって話だけど。」
それを聞いたヤバスという女兵士がぶはっと吹き出して笑う。
「ほんとかよ。ガッツあるねぇ。嫌いじゃねぇぜ、そういう頭悪いやつ。で、今日あたり死刑か?」
「いいえ、その少女の知り合いっていう女がその場でそいつを滅多打ちにして場を収めたって話よ。」
「おぉ、いいねぇ。大好物だぜ、そういう話。」
俺たち、というかユーナのことだ。
「この街にもまだ良心ある人がいるのね、とちょっと感動しちゃったわ。」
「は? なんだそりゃ。」
「別に何でもないわ。ほら、少しは時間潰せたんだからさっさと戻るわよ。」
「葡萄酒はちょっと飲んだってばれねぇだろ?」
「だから止めなさいって言ってるでしょ。」
「ちぇー、リーファはそんな固ぇから恋人のひとりもできねぇ…痛って!!」
「ヤバス、あんた、ぶっ飛ばされたいの? 徒手格闘は私の方が強いんだからね。」
「ぶっ飛ばされたいの?って、ぶっ飛ばしてから言うんじゃねぇよ…いてて。」
(おぉ、お仲間がいる。)
リーファ、ヤバスが地下倉庫から出ていき、再び静寂が訪れる。
「ユーナ、さすがにもう戻ろう。帰って状況を整理するぞ。」
「分かったわ。そうしましょう。」
―◇―◇―◇―
「良かったな。」
「ふわぁ…。何がよ。」
欠伸をしながら、ユーナが眠そうな目を向けてくる。
あの後、俺たちは再び狭い通路を1時間掛けて戻り、潜水して洞窟に出た後、ボートで元の砂浜に戻った。もちろん、あの岩はちゃんと元に戻しておいた。
そして眠さと疲労に耐えながら、ハクシーランまでとぼとぼと歩いている。既に東の空は、ほんのり明るくなってきていた。
「『良心ある人』だと言われていたな。あの口ぶりからすると、あのリーファという兵士はオーマチ領で生まれ育ったのかもな。」
「そうね、そうだと思うわ。まぁ良心云々の話は、それだけハクシーランが荒んでるってことね。街は発展したのかもしれないけど、人心は見る影もないわ。」
(経済的に発展したからといって民度が上がるとは限らない。いや、悪くなる方が多い、か。)
「王都に比べて、兵士たちの態度も悪いしな。」
「領主が腐ってるんだもの。そりゃ良いはずがないわ。」
「なるほどな。ところでさっきの兵士たちの話だが、デクマルシアもよくあの地下倉庫に来ているという。何か心当たりはあるか?」
ユーナが気だるそうに首を横に振る。
「それ、私もさっきから考えてたけど、よく分からない。普通、あんな場所にこないわよ。よしんば本当につまみ食いをするためだとしても、そんなのは従者に持って来させればいい。わざわざデブ自らが行く理由はないわ。」
「だ、ろうな。」
「でも、あのデブが来る程度には重要な何かがあるはずよ。それが何かは、分からないけどね。」
「たしかにな。まぁとはいえ、初回にしては実入りの多い偵察だった。取り敢えず、今日は帰って寝よう。」
「ふわぁ…。賛成。」
ユーナが力なく、何度目かの欠伸をした。




