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バツイチ男✗異世界で都合良くコキ使われる  作者: からす
2章 王国内戦

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33_城壁湾港都市ハクシーラン その5(偵察-洞窟)

――基盤歴639年10月31日(夜)――


「本気でこんな真っ暗な海に出る気なの?」


「本気も本気、大(おお)マジだ。」


「おおま…何ですって?」


ファルミから話を聞いた翌日、早速俺達は現場の偵察に向かった。場所はハクシーラン城壁を出て東に進み、ファルミが言っていたトンネル普請の現場を過ぎた更に先の、哨戒する兵士の姿も見えなくなったとある小さな砂浜(ビーチ)だ。


陽もすっかり落ち、辺りは暗闇に包まれている。打ち寄せる波の音と、独特の潮の匂いが世界の全てと言っても差し支えないような、元世界での日本でもなかなかお目にかかれないような波打ち際である。


領主館と海蝕洞窟、調査場所は明確であるものの、問題はどうやって近づくか、ということが目下の課題だった。だがユーナによると、海蝕洞窟と領主館はつながっており、まさにその道こそがオーマチ領主館への抜け道だという。


だったらとっとと海蝕洞窟を偵察しに行こうということになり、今ここに至る。


領主館と海蝕洞窟。全く別の場所ではあるが、ある意味同じ場所。いざ潜入、となれば二箇所一気に調査できるので一石二鳥と言えなくもないが、失敗すれば両方しくじることになる。


当然、万全を期すために下見をすることになるのだが…。


「本気なのは分かったけど、どうやってこの暗い海の中を移動する気?」


「これだよ。」


そう言ってナイトビジョンを2つ、元世界から召喚する。銃や戦車は無理だが、こういうのは召喚できるラインナップに入っているらしい。かなり高価だが俺は胡椒長者なので痛くも痒くもない。


(まぁ、一般人でも通販とかで普通に入手可能だからな。)


「なに…これ。」


「こうやって着ける。」と、先ずは俺が装着してみせる。


「なんとも形容しがたいわね。鎧や甲冑とも違う? ようだけど…」


「まぁいいから、今俺がやったようにつけてみろ。」


俺がそう言うと、ユーナがおずおずとナイトビジョンを装着する。


「できたか? であればここの突起を回してみろ。」


「ここ?」と言ってユーナがぎこちなくIRスイッチを回す。その途端「なにこれ…!?」と驚愕の声が漏れ出た。


「な? よく見えるだろ?」


「あんたこれ…こんなもの…。どうなってるの、これ…。」


着ているローブには全く似合わない、現代科学の粋を集めたナイトビジョンを装着したユーナが、キョロキョロと辺りを見ている。


「真っ暗だと思うだろうが、星の輝きなど、光源はあるもんだ。そういう光を増幅させて映像として投射してるんだよ。まぁ、詳しいことは俺も知らんけどな。」


「あんた、前から思ってたけどたまに無責任ね…。まぁ、これであれば暗くても平気ね。で、よく見えるのは分かったけど、これからどうするの?」


「後はこれだよ。」


黒い軍用ゴムボートを召喚して砂浜に召喚する。静粛性を考慮して、動力は電動船外機だ。


「これは…短艇(カッター)? だとしても小さいけど…。」と言ってユーナが恐る恐るゴムボートに触れる。


「なんか、柔らかいわね…。素材は木材…では無いわよね…? ていうか、櫂(かい)もなしにどうやって進むの…?」


「まぁ、詳しいことは後だ。取り敢えず乗ってくれ。あと、いつものことながら他言無用だぞ。特にポーラにはな。」


ユーナがぎこちない動きでゴムボートに乗り込む。ポヨポヨした座面に慣れないのか、尻を位置を何度も確かめている。


「言えるわけないでしょう、こんなもの。そもそも、信じてもらえないだろうし、第一、どうにも説明出来ないわよ…。あんた、こんなものどっから持ってきてるの?」


「故郷だ。」


「…あんたの故郷とは、絶対に争いたくないわね…。」


「安心しろ。そんな可能性は万に一つも無い。」


ユーナを乗せたボートを押し、海面に浮かべる。そこに俺も乗り込み、電動船外機の準備を整える。


「なんか、お尻がポヨポヨして落ち着かないけど、ちゃんと浮いたわね…。」


「ケツがポヨポヨしてるのはユーナも同じだろう…痛(い)って!!」


ユーナの前蹴りが脛に炸裂する。


「次言ったら海に叩き落とすわよ。」


ナイトビジョン越しのユーナの口角が上がっている。そしてゴーグルで見えないが、目は笑っていないはずだ。


「はい…。」


(あー、怖い怖い。)


「ほら、動かすぞ。その取っ手に捕まってろ。」


そう言って、電動船外機を稼働させる。


おお、無音とまではいかないがかなり静かだ。エンジン式とは全然違うな。夜の海だって波の音で結構煩いもんだ。この程度の稼働音であれば、海蝕洞窟に近づいても哨戒中の兵士に音でバレることは無いはずだ。


船外機を操作し航行を始める。と、ユーナが落ち着かない様子で周囲をキョロキョロと見回し始めた。


「うそ…。動いてる。どうやって…」


「企業秘密だ。まぁ、櫂で漕ぐより簡単で、かつ速い。ポーラには絶対言うなよ。」


「言わないわよ。というか、こんなの売り出したら大変なことになるからポーラだって売ろうなんて言い出さないわよ…。」


「どうだかな。ポーラは売れると判断したら何でも売っちまうような女だ。」


「それは、確かに否定はしないけれど…。」


そんな話をしながら、6ノット程度の速度で海蝕洞窟に向かって進む。夜の潮風が心地良い。ユーナの金髪が正風で振り乱れている。俺は今はカツラを外しているから問題は無い。


―◇―◇―◇―


波が崖を叩く海岸線をしばらく航行すると、崖が少し奥まった地形の場所に辿り着く。


「ここよ。」


ユーナがそういうので、スクリューを止める。奥まった崖の最奥に、ぽっかりと開く洞窟の入り口が見える。まるで巨大な岩の化け物が口を開けているような錯覚に陥る。


「あの、奥に見える洞窟か?」


「そうよ。ここから見る限り、洞窟の中にも崖の上にも兵士の姿は見えないわね。ゆっくり慎重に、少しづつ、洞窟に近づける?」


「了解だ。」と微速でゴムボートを洞窟に近づけていく。


「なぁユーナ、夜間に船が出入りすることはあるのか?」


「いいえ、座礁や衝突の危険があるから、翌朝まで沖合で錨泊するのが普通ね。特にこんな狭い洞窟なんかには、夜間の出入りなんて絶対に無いわ。」


正面、上、左、右、そしてまた正面の洞窟。ユーナがせわしなく首を動かして兵士の姿を探している。が、今のところ誰の姿も見えない。


「だ、ろうな。とはいえ、哨戒の兵士の姿が一人もないっていうのは…まぁ、ないこともないのか…。」


「どうでしょうね…なんとも言えないけど、誰もいないのは好機ね。少し、洞窟内に進入してみましょう。」


「分かった。だけど今日は偵察だけだ。あまり奥までは進むなよ。」


「分かってるわ。」


そのまま進み、化物の口にゆっくりと進入する。遠くからは小さく見えたが、いざ現地に到着するとそれなりにでかい。


洞窟内に声が反響してはまずいので、ユーナの耳元に口を近づけて小声で囁く。


「なぁユーナ、この規模の洞窟だと、何隻くらいの船が入れるんだ?」


「ひっ! ばか、ビックリするじゃない!」


耳に息を吹きかけれ、驚くユーナの声が洞窟に響く。


「ばか! 声が反響するだろ!」


「…! ごめん。」


スクリューを止めて、辺りを警戒する。しばらく待ったが、何の異常もないようだった。


(あー、緊迫するなぁ。メタ○ギアのス○ークになった気分だぜ…。)


再びスクリューを稼働させ、中へ進む。


「で、何隻くらいの船が入れるんだ?」


「そうね…。小型の商船が2隻が限界ってところかしらね。」


(小型とはいえ商船が2隻も入れる洞窟か。やましい関係の相手と武器のやりとりをするにはうってつけの場所だな。)


しばらく進むと、陸、というより砂浜が見えてきた。こんな神秘的な洞窟の中の、穏やかな波が押し寄せる砂浜。こんな状況でなければ、最高のマリンアクティビティだ。きっと遠い将来、ここは観光スポットになること間違いない。


ゴムボートを砂浜に進め、そのままの勢いで乗り上げる。

周りをよく見ると、梯子やロープ、木箱など、人工物がそこここに放置されている。ここで何かが行われているのは間違いない。


「ユーナ、こんなところに人工物がある。ここでなにかしらの活動が行われているのは確かだ。」


「そうね。」


ユーナの相槌が緊張を帯びる。


「どうする? 誰もいないが、もう少し先まで進むか? それとも今日はここまでにするか?」


「…もう少し、行きましょう。あんたはここで待ってて。実働は私の仕事よ。」


「何言ってるんだ。もうここまできたら、一緒に行くさ。」


「ここを警備しているのは恐らくサイレル家正規軍の兵士。やつらは殺しの玄人、死ぬわよ?」


「だとしても、だ。」


ユーナが反射的に何かを口にしかけたが、逡巡し「…ありがとう。」と言った。


「そうと決まれば、ほら、さっさと行くぞ。」とわざと明るく促す俺に、ユーナがこくりと頷いた。


―◇―◇―◇―


砂浜に降り、ゴムボートを収納する。そしてユーナと共に慎重に洞窟の奥に歩みを進める。


緩やかなカーブが続く洞窟をしばらく進んでいくと、ナイトビジョン越しに見える映像が全体的に白みがかってきた。この先に、光源となるなにかがある証拠だ。


ナイトビジョンのゴーグル部分を跳ね上げる。裸眼で見た洞窟には、オレンジがかった光が奥から差し込んでいた。差し込む光が不規則に揺れているので、この先に松明か何かが焚かれているのだろう。


ユーナの肩をツンツンし、ジェスチャーで『ゴーグル部分を跳ね上げろ』と指示する。慣れない動きでゴーグルを跳ね上げた先に、ユーナの紫の瞳が露になる。当然だが、今は金色カラコンは着けてない。


「ユーナ、この先には何がある?」


「この先はすぐ行き止まりのはず…。」


慎重に、警戒しながらゆっくりと進む。光源、松明が見えてきた。その先には…。


ユーナがはっと息を飲む。


松明の先には、大きなドーム型の広間が広がっていた。広間には、木箱が堆(うずたか)く積まれている。


「こんな場所…知らないわ…!」


「わざわざ掘って作ったんだろう。物資を格納しておくためにな。」


そのとき、積まれた木箱の陰から松明を手にした兵士らしき人間が姿を現した。ユーナの手をぐっと引いて素早く後退する。


「ユーナ、奥に兵士が巡回している。ここで提案なんだが、あの堆(うずたか)く積まれた木箱を俺が回収してくるというのはどうだ? あれだけあれば、一つや二つ無くなっても問題ないだろう。」


ユーナが、興奮気味に頷く。


「了解だ。ここで待っててくれ。」


ユーナを残し、再度広場に進む。松明を過ぎ、広場に堆(うずたか)く積まれた木箱が見える。巡回の兵士がいないことを確認しつつ、さっと木箱まで走り寄る。


視界に入る限りでは、積まれた木箱は1辺が腰くらいまでのもの、やたらと縦に長いもの、両手で持てる程度のものの3種類程度だったが、整然とサイズ別に積まれている。


それらを1つずつ道具箱に収納した。


収納後、辺りを警戒してさっと広間を出る。そのまま急ぎユーナが待機しているところまで戻る。


「できたの?」


「あぁ、3箱くらい拝借してきた。」


「あんたの道具箱(それ)、規格外の便利さよ、まったく…。」


「長居は無用だ。さっさと戻るぞ。」


ナイトビジョンのゴーグル部分を再度倒し、暗視モードに入る。そのまま俺たちは急ぎ足で砂浜まで戻っていった。


―◇―◇―◇―


「偵察に来たけど、思った以上の収穫ね。ここで物資の取引をしていたのは確実だし、ファルミが掘ってたトンネルは、恐らくさっきの広間に繋がるはずよ。」


「別にトンネルなんて掘らなくても、この洞窟からハクシーランに船で運べばいいんじゃないのか?」


「保険よ。搬入ルートは複数あったほうがいいから。」


ゴムボートを召喚して砂浜に置く。


「…なるほど。というか前から疑問だったんだが、こんな手の込んだことなんてせずに、普通にラガン港で取引すればいいんじゃないか? 仕切ってるのはどうぜガーク商会なんだし。」


俺の疑問に、ゴムボートに乗り込むユーナが呆れた溜息をつく。


「そんなことして、王国中央にどう報告するの? どこの国の船舶が何隻入ってきて、何をどれだけ運んできたのか、記録を付けて中央に報告しないといけないのよ。ヤーライルだって馬鹿じゃない。ハクシーランに王家の諜報員がいることくらい分かってるわ。記録と諜報員の報告が合わない状態が続いて、もし王家の調査員が乗り込んできたら、現場を抑えられて終わりなのよ。」


「…」


「何よ?」


「いや、割としっかり管理してるんだなと思っただけだ。全てがザルだと思ってたよ。」


「あんたね…。」と呆れで二の句が続かないらしい。


仮に、サイレル家が本気で王家に進軍するとしたら、果たしてあのトンネルはただの保険なんだろうかという疑問はあるが、まぁ、今はなんの確証もないので黙っておく。


「まぁいいわ。それで、これからどうする? 私としては、このままついでに抜け道の確認もしたいんだけど。」


「あぁ、抜け道か。まだまだ夜は長いから、偵察は続けられるぞ。それで、どこにそんな道があるんだ?」


「そう。だったら、洞窟の出口まで向かってちょうだい。途中に横穴があるから。」


(そんな横穴あったかな…?)


何も言わず、ユーナの言う通り洞窟出口に向かってにゴムボートを推進させる。しばらく進むと、「止めて」とユーナが言うので、スクリューを止める。


「ここよ。」


「…横穴なんて、どこにも見当たらないが?」


「違うわよ。横穴は海の中。いったん潜れば、入ることができるわ。」


「その恰好で海に潜るのか?」と俺が言い終わらないうちに、ユーナがローブを脱ぎ始める。


「ちょ、ちょちょ、待て待て…! ここで裸になる気か!?」


「…ばか! ちゃんと下着はつけてるわよ! 変な気起こしたら承知しないからね!」


「そ、そうか…。変な気は起こすが何もしない。だから安心しろ…痛(い)って!」


再び脛を蹴られる。


「まったく、そうやってすぐ手が出るクセはどうにかした方がいいと思うぞ。」と水着に着替えながら諭すと「手じゃない。足よ。」と既にローブを脱いでサラシ一枚のユーナが屁理屈をこねてきた。ユーナがローブをこちらに渡してくるので、道具箱に収納する。これで濡れることはない。ついでに自分の衣服も収納しておく。


「男って、本当に胸が平らなのね。あと、腹も筋肉で割れてるわね…。」


ユーナが水着姿で半裸の俺をまじまじと見てくる。


「ほら、下らないことを言ってないで行くぞ。これから船を収納する。そうすると俺たちは海にざぶんなわけだが、準備はいいか?」


「えぇ、大丈夫よ。」


「了解だ。3,2,1。収納。」


―――ざぶんっ!


(冷てぇ! 死ぬ!!)


「さすがに冷たいわね。ツカサ、私の後に着いてきて。」


そう言うやいなや、ユーナは息を思いっきり吸い込んで潜水していった。


(なんっであいつあんな余裕なんだよ!?)


気合を入れて息を吸い込み、後に続く。


海中で、ナイトビジョン越しに見えるユーナの豊満な身体を追う。


(女のケツを追うっていうのは、まさにこのことだな。)


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