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バツイチ男✗異世界で都合良くコキ使われる  作者: からす
2章 王国内戦

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23_救助

弩砲の試射から3日後の基盤歴639年10月07日、数日振りに冒険者ギルドを訪れる。


(10月15日に国王へのお披露目会以降は、なんかまた忙しくなる気がするし、さっさと今月分のノルマを達成しなくちゃなぁ。)


相変わらず依頼の紙で埋め尽くされた掲示板を物色する。


ひと月に最低3つは依頼を受けなくてはギルド証が失効してしまうためここに来たのだが、ユーナと関係がこじれてしまったので今日はひとり。なので低難易度の依頼に絞ることにする。


ミラとポーラには、ユーナとのことをついつい言いそびれてしまった。別に隠す気はなかったが、言うタイミングが見つからなかったのだ。


(まぁ、ミラとポーラにはまた今度ちゃんと話そう。別に嘘を吐いてここに来たわけじゃないしな、大丈夫だろ。うん、大丈夫だ。)


しばらく依頼を物色していると、おや?と気になる依頼が目に留まる。


---

「フィオナ」という弓使い冒険者の捜索依頼。

手掛かり:10月05日、ヴェルデの森へ行ったきり行方不明。身軽な革鎧を着用。肩口までの金髪。


発見し、連れて来ていただいた方はギルドか本ギルド所属パーティ『月の雫』のメンバ(エレナ、セレナ、リシア)へ連絡願う。


報酬:金貨10枚

---


(『月の雫』のフィオナ。たしか、だいぶ前に魔化狗討伐に一緒に出掛けて…そうだ、適当に放ったクロスボウの矢が偶然命中して、危ないところを助けたんだったっけか。)


ギルドの扉が開き、複数人の人間が入ってくる気配に顔を上げる。

そこには見覚えのある顔ぶれ―――『月の雫』のエレナ、セレナ、リシア―――が沈んだ様子で歩き、ギルドの一角にあるテーブルに着く。

そしてテーブルに着くや否や、何やら深刻そうに話し合いを始めた。


「どうした? そんな顔をして。皆、顔色が悪いようだが?」


気になって話しかけた俺に「あんたは…ツカサじゃないか。」とエレナが反応する。


「久しぶりだな。そこのリシアには、よく絡まれるんだがな。」


リシアに水を向けても「そうだけど…ゴメン、今はちょっと…。」といつもはユーナのことで根掘り葉掘り聞いてくるのに、今は取り付く島が無い。


「ひょっとしてこれか?」

依頼の紙をテーブルに置く。覿面、3人の顔色が変わる。


「ふむ、やはりお前たちの仲間のフィオナだったか。何があった?」


3人が一様に顔を俯ける。


そんな沈黙を破ったのはセレナだった。


「わたしが悪いんだ…わたしがフィオナを追い込んだせいで、フィオナは一人で…。」


「やめなさいセレナ。そうじゃないって言ってるじゃない。これはパーティ全体の問題なの。ひいてはパーティリーダーである私の責任だわ。」


「なにか訳ありのようだな。微力ながら探しに行くことくらいは俺でもできる。よければ話してくれないか?」


「ほ、本当か!?」とエレナ。


コクリと頷くと「分かった話そう。座ってくれ。」とエレナが椅子を勧める。


俺が着座したのを確認すると、エレナはぽつりぽつりと話し始めた。


―◇―◇―◇―


エレナの話を要約するとこうだ。


前に俺と魔化狗を討伐に行ったとき、近距離での戦闘で咄嗟に短剣での格闘スタイルに切り替えることができなったが、その後の冒険でもたびたびそういうことが起きていたようだ。


その度にインファイト専門のセレナがフィオナに対して助言をしていたようだが、フィオナはだんだん意固地になってしまい、だんだんとセレナと険悪な雰囲気になっていってしまった、と。


エレナとリシアも、セレナとフィオナとの間に流れる不穏な空気は感じていたようだが、もともと同郷のフィオナの肩を持っていると誤解されるのを恐れてセレナに何も言えず、また、フィオナには何を言っても聞く耳を持って貰えなかったらしい。

リシアはというと、剣も弓も持たず戦える魔導師という立場上、自分が何を言えるわけもないと思い、いけないと思いつつも結果的に放置してしまっていたとのこと。


そしてついに3日前、フィオナが魔突猪相手にまた似たような事態に陥てしまったとき、すんでのところでセレナに助けられて事なきを得たが、魔突猪を討伐したその場で遂に二人は衝突してしまう。


いつも通りセレナはただ良かれと思って助言をしただけなのだが、既に劣等感の塊になっていたであろうフィオナには嫌味としか映らず、現場でフィオナとセレナの言い争いに発展してしまったようだ。というよりも、フィオナがただセレナに対して激昂しているだけだったらしい。


流石にフィオナの宥めすかしに掛かったエレナとリシアだったが、それが火に油だったらしく、エレナには「あんたも私なんて要らないって思ってるんでしょ!」と、そしてリシアには「魔導師なんていう稀有な存在のあんたにとやかく言われたくないわ!」という暴言を誘発する最悪の事態になってしまった。


最終的にフィオナは「私はひとりでだってやれるわよ!」と捨て台詞を吐き、その場から立ち去ってしまった。


翌日朝からフィオナを探す3人だったが、どこへ行っても見当たらず、ギルドの受付嬢(レバータ)に聞くと朝からヴェルデの森に魔突猪を討伐しに向かったという。

が、フィオナはどれだけ待っても帰って来なかった。それどころか、冒険に出たきりギルドへ完了報告もされてないという。


その翌日(つまり昨日)、朝からヴェルデの森にフィオナを探しに行った3人だったが、遂に見つけること叶わず、ギルドにフィオナ捜索のための依頼を発行してもらったという。


その翌日(つまり今日)、その依頼を手に取ったのが俺だったということだった。


―◇―◇―◇―


「話は分かった。それで? 今日も探しに行くのか?」


「それは…! そうしたいが…」


「エレナ、どうした?」


「行方不明になってもう3日目だ…。魔物にやられているなら、指一本見つかるかどうか…。」


(まぁ、喰い殺されてる可能性が高い、か。)


「…行きたい。行きたいんだけど、遭遇する魔物と戦って進まないと…。昨日だって探してる時間より魔物と戦ってる時間の方が長かったくらいで…。」とリシア。


セレナは自責の念からか、何も言えず黙りこくっている。


(合理的に考えて捜索なんて自殺行為、か。まぁ、この世界ではそれが普通だからな。冒険者は何があっても自己責任。魔物相手に殺されたなら、それは殺された奴が悪い。それだけの話なんだよな。だけど…)


「そうだな、普通に考えてそんな状態で捜索なんて自殺行為だ。パーティメンバを今以上に失うかもしれない。だからこそ、捜索の依頼を出したんだろう?」


「それは…!」とエレナが言葉を詰まらせる。それが明確な回答だった。


「受けてやるよ、この依頼。ただし、今日だけだ。今日俺が探して見つからなかったら、そのときは大人しく諦めることだ。」


「ツカサはまだブロンズだろう! 一人で行かせるわけには…!」


「侮ってくれるなよ。これでも大魔導師ユーナ様と死線を潜り抜けてきたんだ、必ず戻るさ。」


エレナの手が白くなるまで握られている。


「…分かった。頼む、ツカサ。お前くらいしか頼める相手がいない、恩に着る…。」


―◇―◇―◇―


王都を出て北上すること約1時間、ヴェルデの森に入る。


コンパウンドボウの練習をしに入り、ユーナと出会った場所。あれ以来訪れる機会もなかったが、今では魔化狼程度にやられはしない。


強化魔法が無いので攻撃は純粋にコンパウンドボウの威力だけだが、剣鉈は自身の攻撃力(ステータス)が反映されるはずだ。


ホログラムを起動する。


攻撃力、防御力ともに399.9。今はこれ以上は上がらないらしい。


(経験値を稼げば、また400以上がアンロックされるのかね。)


コンパウンドボウを練習し、魔化狼に殺されかけた場所を抜けて森の奥深くに進む。


あの魔化狼と戦ったのが、何年も前のことのように感じられる。


フィオナの名を叫びながら、更に森の奥に歩みを進める。


途中、魔化狗の群れ、魔化狼、魔化山猫、それからここらでは珍しい魔突猪とも遭遇したが、それらを軽く討伐しながら進んでいく。


(それにしても、あの手の魔物には慣れたもんだ。全然やられる気がしねぇ。このステータス向上スキルと現代武器、それからユーナに感謝だな。)


そんなことを考えて進んでいると、肉が腐ったような悪臭と、覚えのある甘ったるい匂いが漂ってきた。


(ほう、こんなところにも生えてやがるのか。)


マスクを召喚して鼻を覆い、悪臭が漂う方に向かう。


マスク越しにもだんだん臭いが強くなるのが分かる。


草木を掻き分けた先に、やはりそれはあった。


絞殺蔓花。


毒々しい巨大な花びらの周囲には、蔓に絡めとられた魔化狗と魔化猫の腐乱死体が転がっている。


にゅるにゅると静かに忍び寄ってくる蔓を剣鉈で切り捨て、火炎放射器を召喚して構える。


(まぁ、乾燥してないから燃やしても大丈夫だろう。万が一のときは消火器で鎮火すりゃいいや。)


火焔放射器で焼き払おうとしたとき、ふと上の方にも蔓に捕縛された獲物がいることに気付く。


立木に引っかかってるようだ。


(あれは…。)


全身を蔓でがんじがらめにされた人間だった。


よく見ると、立木の根元には弓が転がっている。


まさかと思い絞殺蔓花から伸びる蔓を引っ張り、得物を立木から引っ張り下ろす。


それは紛れもなく『月の雫』の弓使い、フィオナだった。


落ちた衝撃で目が覚めたのか、「うぅ」と呻く。


(まだ息がある!?)


慌てて蔓を切断し、捕縛を解く。肩口に深い裂傷がある他、蔓の棘が刺さってあちこち傷だらけだ。


ポーションと毒消しを取り出し、むりやり口に入れて飲ませる。それから、ラダ草から精製した傷薬を棘で刺された傷に塗ってやった。


あとは元世界から消毒薬と止血布を召喚し、裂傷を消毒して布を押し当て固定する。


一通りの応急処置を終えた後、根本に転がっている弓を道具箱に収納し、そしてフィオナを担ぎあげた。


「だ…れ、あな…た…」

衰弱しきったフィオナが息も絶え絶えに口を開く。


「助けにきた。体力を消耗するからそれ以上話すな。」


あんな深手を負った上に、何時間も飲まず食わずで、しかも花に体液を吸われ続けたんだ。無事であるはずがない。


(とにかく、治療院に急がないと…!)


そこからはとにかくスピード重視で森を抜ける。雑魚は相手にせず、大型の魔物だけを相手にしてひたすらに急ぐ。やっとの思いで森を出るころには、すでに夕方前だった。


ステータス強化したからか、思ったよりも体力を消耗していない。

(ここから約1時間か…。仕方ねぇが、気合を入れて王都まで運ぶしかねぇ…!)


「…ん、うぅ…。」

フィオナが苦しそうな声を漏らす。


「フィオナ、起きたか。森は脱した。このまま王都に連れて行ってやる。安心して寝ておけ。」


「…森を? これ、夢じゃない…?」

フィオナの途切れ途切れの吐息が耳に掛かる。


「夢じゃない。必ず助ける。だから今は眠ってろ。」


木製の荷車を現代日本から召喚する。そこに藁を敷き詰め、フィオナを寝かせた。これを引けば負ぶって走るよりもだいぶマシなはずだ。


若い身体とステータス強化が利いているのか、疲れは感じるがまだまだへこたれる気はしない。夕方前とはいえまだ陽はあるし、この調子だと日没前に王都にたどり着けそうだ。







ひたすら荷馬車を引っ張り、やっと王都の城壁が見えてきた。途中、馬車を見つけたら同乗させてもらおうかと考えていだが、あいにく自分たちを追い越して行く馬車はいなかった。


フィオナの様子を見る。気を失っているのか眠っているのか分からないが、息はしているようなのでほっと肩を落とす。


(あとは治癒院に向かうだけだ…さすがに疲れたぜ…。)


―◇―◇―◇―


城壁検問を通るために荷馬車を収納し、フィオナを担ぐ。タイヤのゴムはこの世界では未知の物質、万が一それを見咎められて時間を食うリスクは負えない。


上手く検問を通過し、ギルドまで進む。街ゆく人たちの好奇の目に晒されながら、やっとの思いで冒険者ギルドまで辿り着いた。


「エレナ! いるか!?」


ギルドを見渡すと、朝話したテーブルに『月の雫』一行が変わらず屯していた。


ギルド内の冒険者や職員も何ごとかとこちらの様子を窺っているなか、俺の声に反応して3人が駆け寄ってくる。


「ツカサ! 無事だったか!?」


エレナが俺を見て、それから俺の肩を見て固まる。


「フィオナ…。」


「まだ息がある。応急処置はしたとはいえ、あまり様態は良くない。早く治癒院に連れて行ってやれ。」


「わ、わ、分かった! おいセレナ!リシア! 私たちで治癒院まで運ぶぞ!」


セレナとリシアの目から涙が溢れ、3人でフィオナを連れて出ていく。去り際にエレナが「ツカサ、改めて礼をさせてくれ。」と一礼して後を追っていった。


その背中を見送っていると「やるじゃねーか。もうダメかと思ってたぜ。」とパツキンブラックメッシュ嬢、もといレバータが声を掛けてくる。


「運が良かっただけだ。」


「『運も実力のうち』って、あいつらに言ったんだろ?」


「エレナたちから聞いたのか?」


「そうさね。冒険者ギルドの受付には、色んな情報が舞い込んでくるもんよ。つーことで今晩一杯どうよ?」


「タラーレさんに言いつけようか?」


「んだよ勘弁してくれ。姉貴めっちゃ怖ぇんだからよ。」


(うん、知ってる。)


柱にもたれ掛かり、レバータが続ける。


「フィオナのやつを助けてくれてありがとうな。あいつら、ブロンズの時からずっと仲良く頑張ってたんだ。アタイらには、どれだけ無謀だと分かっていても冒険者が冒険に出るのを止められねぇからよ。こーゆー仕事をしてると、あいつらみたいなのが眩しく見えるもんだぜ。」


「…どういう意味だ?」


「なんでもねぇ。」


それだけ言って、レバータは後ろ手に手を振ってバックヤードに消えていった。


―◇―◇―◇―


ギルドを出て、家に向かう。

日は沈んだが、まだ黄昏時で明るい王都を気分よく歩いていく。


(農業改革とか威力偵察とかやってきたけど、やっぱりこういうザ・人助けってのもたまにはいいもんだな。フィオナも無事だろうし、今日は美味い酒が飲めそうだぜ!)


るんるん気分で家に辿り着き、玄関を開ける。


奥からミラとポーラが出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、ツカサさん。お待ち申し上げておりましたのよ。」とポーラ。


「お帰りなさい、ツカサさん。ご無事で何よりです。」とミラ。


こうやって出迎えてくれるのはよくあるが、なんだ? なんか笑顔に違和感がある。


「本日もユーナ様と冒険だったんですのね?」


「ああ、そうだ。今日は人探しの依頼を受けてきた。」


「そうだったんだすの。今、ツカサさんにお客さまがおいでですわ。奥でお待ちしていただいておりますのよ。」


「客? 俺にか??」


「はい、こちらへどうぞ。」とミラ。


ミラもポーラもとても笑顔だ。


(誰だろうな。客なんて心当たりがないぞ。『月の雫』の皆が礼を言いに来たにしてはあまりにも早すぎるし、そもそもあいつらは俺の家を知らないはずだ。)


こそばゆさを感じながらも玄関を抜け、食堂に続く扉を開く。


「…!!」


「私、今日は冒険はおろか王都の外にも出てないわ。」


ユーナが、そこにいた。


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