016_提案
1週間前と同じ会議室。先日と違うのは、出席者の中に新顔が2名出席していることだった。
「そちらの者が、今日ここで新兵器について話してくれるフォルテ商会の者共だ。」
クララ国王の声に、パーラ、ポーラ、俺が起立する。
「フォルテ商会当主のパーラ・フォルテでございます。本日はお時間をいただき大変光栄にございます。」
「同じくフォルテ商会全権代理のポーラ・フォルテでございます。本日はお時間いただき大変光栄にございます。」
「フォルテ商会と独占契約を結ばせていただいております商人のツカサと申します。本日は宜しくお願いいたします。」
それぞれが型通りの挨拶をするが、俺の挨拶のとき新顔二人が訝しがる表情を見せる。その顔には「なぜただの商人がここに?」と書いてある。
「商人ツカサについては余が身元を保証しておる。余計な疑義は不要じゃ。」
クララのひと言に何ごとか発言しようとした二人が引き下がった。
「本日は我が王国王家軍の陸軍卿と海軍卿も招いておる。」とクララが続けると、新顔二人が起立する。
「王家軍陸軍卿のランダレア・ロッフォレスである。」
「王家軍海軍卿のシールール・ウェブワイトである。」
きらびやかなフルプレートに身を包み、帯剣して屹立する姿はまさに軍人そのものだ。
(陸軍卿に海軍卿、言ってみれば陸軍大臣と海軍大臣…。これまた大物が。。)
「役者も揃ったことだし始めるとしようかの。席につけ。」
皆が席に着いたのを確認してクララが続ける。
「ランダレア、シールール。この者たちにサイレル侵攻について開示したのは先日伝えた通りじゃ。それにおいて、そこのツカサが新兵器を考案してくれたようでの、此度はその説明を聞く場じゃ。では早速お願いしようかの、ツカサよ。」
クララが面白そうにこちらを見やる。
(あの国王、絶対楽しんでやがるだろ…)
立ち上がり、弩砲と投石機の概要設計が書かれた羊皮紙を配り、それぞれの小型模型をテーブルに置く。
クララを含め、皆の視線がテーブルの模型に集中する。
(百聞は一見に敷かず、だな。)
「細かい説明はさておき、取り敢えずこの小型模型にて実演いたします。」
ランダレア、シールール、そしてリーラスが少し身を乗り出す。
(軍事を生業とする大臣二人は当然としても、リーラスはこういうのが好きなのだろうか。たしかパーラが『リーラスは政治より軍事に明るい』と言っていたが。)
まずは弩砲に手を伸ばし、掴んで目線の位置まで持ち上げる。
「こちらは『弩砲』という兵器です。こちらは小型模型ですが、実物は全長約3.5m、全幅約3m、高さ約2m、重量約500-700kgになる想定です。」
「発想としては弓を横にして大型化する、ということか?」とランダレア。
「その通りです。ただ通常の弓とは異なり、矢の発射には『ねじりバネ』という特殊な仕組みを用います。」
出席者にねじりバネについて説明する。
「大型化した弓は長い距離を引く必要があるが、そもそもこんな大型の弓は引けず、それに壊れやすい、と。それらを解決するためにこの『ねじりバネ』を使う、ということだな?」と、今度はシールール。
「おっしゃる通りです。運用人数は3-4人。撃ち出す矢、ボルトと言いますが、撃ち出すボルトは長さ約1m、直径約5cm、重量約5kgの、例えるなら『短い槍』であり、有効射程は最大300m程となります。」
この説明に会議室がどよめく。
「「300mだと!?」」
ランダレアとシールールが思わず声を上げた。
「はい。主に城壁にいる敵兵を狙撃する用途に用いられますが、使いようによっては遠方から密集隊形に被害をもたらすことも可能かと思います。」
場が静まりかえる。
弩砲はファランクスには対して脅威にならないが、バフをかければそれなりに役に立ってくれるはずだ。
「ツカサ殿、その模型で披露願えますか?」
たまらずといったふうにリーラスが口を開く。
弩砲を見る目が心なしかうっとりしているように見える。
(リーラス第二王女…。もしやミリオタなのか…?)
「承知いたしました。」
弩砲をテーブルに置く。
ねじりバネの抵抗に抗い弦を引き、ボルト代わりの小さな矢を装填する。
出席者の注目が弩砲に集まる。
「では発射します。」
ストッパーを外す。
ねじりバネの弾性によって弦が戻り、と同時に小型の矢が前方に勢いよく押し出される。矢は放物線を描いて5mほど飛んだところに着地し、最後はそのまま勢い余って床に落ちた。
出席者が息を呑む気配が伝わる。
「模型ではこの程度ですが、実物大なら先ほど申し上げた通りの威力が出るはずです。」
「試作品はいつできる?」と、居住まいを糺したクララが尋ねる。
ポーラに目配せすると「どれだけ急いでも、ひと月半程度は掛かるかと。」と答えてくれた。
「よかろう、出来るだけ早く作るように。性能が確かめられた後には、軍需品として王国が買い取ろう。」
「はい、ご期待に応えられるよう全力を尽くします。」
「弓兵の射程でも150m程であるのに、そんな重い矢…ボルトといったか?を300m先に飛ばすとは、にわかには信じられんな…。」とランダレアが独りごちる。
「だが、もし本当なら軍船に搭載することもできるやも知れん。海戦の常識も変えてしまうかもな。」とシールールが引き受けた。
(弩砲はそんな万能じゃねぇっての! あんまり過度な期待をされると困るんだよね…。自分で作っておいて今更なんだけどさ、弩砲なんて所詮はロマン武器じゃん。)
「で、では、次はこちらの『投石機』をご紹介します。」
投石機を掴んで持ち上げる。
「この投石機は、文字通り石を投擲するものです。密集隊形、城壁を崩すのに最も効果的な兵器です。重りが下に落下する力を用いて石を遠投する仕組みとなっています。こちら、実物ですと高さ約15m、重量約25t、重り約15t、投石重量約150kg、射程約300m以上を見込んでいます。」
「バカな、そんな重い石を300mも遠投できるわけがない。陸軍の最上位魔導兵でも、せいぜい70kg程度の岩を生成して100m後方から打ち出すのがやっとだというのに!」とランダレアが椅子を蹴る。
「ランダレアよ、確かに私もそう思う。思うが、もし本当なら攻城戦の常識が覆るぞ。しかも、沿岸に配備すれば敵艦隊を敵の射程外から一方的に狙い撃ち出来る。」
「それはそうだがシールール、そんな夢のようなことが…」
「ツカサ殿、その模型も見せていただけますか?」とまたもリーラスに催促される。先ほどよりも更に熱っぽい視線が投石機に注がれている。
(やっぱりこの人ミリオタだわ。)
「しょ、承知しました。」
小石を装填し、カウンターウェイトを持ち上げる。
「ではいきます。」
ストッパーを放すとカウンターウェイトが落下し、と同時に逆側のアームが持ち上がる。
遠心力で加速したアームの先から小石が勢いよく放たれ、会議室の壁に衝突して床に落下した。
カコンッ!!…カコ!…コロコロ…。
床に小石が転がる音がやけに大きく響き、やがて止まる。
王家側のメンツが信じられないものを見たように固まっている。
そう、弩砲は言ってみれば弓矢の延長上。だから実演せずともどういう兵器なのかは見れば分かる。が、遠心力を利用して物を飛ばすなど、この世界にはその概念自体が無い。だから模型を見てもどんなふうに石を発射するのか分からない。
回転軸を中心に、短いアームのカウンターウェイトが回る速度と、反対側の長いアームの先端が回る速度が違いすぎて、まるで手品を見た気分だろう。
そして模型とはいえ、かなりの速度で射出される石を目の当たりにしたのだ。固まってしまうのも無理はない。
「こ…れは…。」
「ばかな…。」
ランダレアとシールールが同時に呻く。
「こちら、破壊力はピカイチなのですが、如何せんとても重く、先ほどの弩砲と違いバラして運搬することも難しいのです。沿岸防衛や防衛兵器として『そこに固定して運用する』なら良いのですが、敵拠点を攻めるのであれば、移動させれないため現地で全て作る必要があります。」
俺の言葉にリーラスが首を傾げて不思議そうに呟く。
「それは…浮遊魔法で軽くすれば良いのではないですか?」
「はい?」
「浮遊魔法です。誰でも出来るはずですが…。」
ポーラが咳払いをする。
「フォルテ商会では、力のある魔導士を何人も抱えていますが、浮遊魔法は生活魔法のひとつです。なので特別才能のある魔導士を雇わずとも、誰でも使える魔法のひとつ、ということですわ。」
クララが心底楽しそうに俺を眺めている。
「こんな度肝を抜くような兵器を持ってきたと思えば、そんな常識を知らぬとはな。まぁ確かに、約40tの物体に対して浮遊魔法を掛けても浮きはしないだろうが、それでもバラせば軍馬で引ける程度には十分に軽くなる。そんなことも知らぬとは、ますます面白い男よな。」
最後のひと言に、ランダレアとシールールがはたと顔を上げる。
「陛下…今、『男』、と…」
「この商人、ツカサは紛うことなき男じゃ。この世界に唯一無二のな。そして、そこのポーラの夫じゃよ。さすがにこれは、お主らも驚きじゃろ。」
ランダレアとシールールが信じられないといった表情で俺を凝視する。
(あまり深く考えなかったが、ミラが小麦粉数十キログラムを一人で担いで平気な顔をしていたのはそのためか…。)
「はい…。であれば特に重量は問題ないかと存じます…。」
「うむ。で、これの試作品はどのくらいで出来る?」
「こちらは大きい事もあり、弩砲より追加で一ヶ月程いただきたく存じます。」とポーラ。
「相分かった。では試作品が出来たら直ぐに知らせよ。」
「…承知いたしました。」
そう言葉を紡ぐのが精一杯だった。
「ランダレア、それからシールール。この部屋で見聞きしたことは他言無用じゃ。例外はない。肝に銘じよ。」
「「承知いたしました。」」
軍人らしく直ちに引き締まった答礼をする。
「完成が楽しみですわ。」恍惚とした表情でそう漏らすリーラスを遮るように「ララス、お主は何か無いのか?」とクララがララスに水を向ける。
「はい。このような兵器、もしツカサ殿の仰る通りの性能があれば、サイレル公爵家だけでなく、帝国海軍並びに連邦や法国の陸軍にも大変有効かと存じます。是非、一日も早く試作品を見てみたいものです。」
今日初めて口を開いたララスは、冷静かつ慎重に言葉を選んでるようだった。
(前の会議の後、きっとオカンにこってり絞られたんだろうな…。かわいそうに。)
「その通りぞ。じゃがヤーライルの奴を黙らさん限り、王国に未来はない。肝心の証拠はこちらで動いておるから、お主らは試作品作成に勤しんでくれ。」
「承知いたしました。」
パーラが応えるのに満足そうに頷き、続ける。
「他に何もないなら会議は終了とする。あと、ツカサは少し残ってくれ。少し話したいことがあるでの。」
(マジか…。)
「承知いたしました…。」
「案ずるな。終わったらそなたの家まで馬車で届けてやる。」
(そういうことじゃねぇよ!)
―◇―◇―◇―
皆が去った後の、クララと二人きりになった会議室。
ランダレアとシールールが気になる素振りを見せながらも無言で辞去し、パーラとポーラからは「頑張れ」と視線を送られ、ララスとリーラスは叱責を恐れてか澄ました顔で出ていった。
「さて、これでようやく二人で話せるようになったの。」
正面に座るクララが、薄い笑みを向けてくる。
「こ、このような機会を賜り、大変光栄に…」
「そのような月並みな挨拶はよい。」
必死の挨拶が軽く遮られる。
(…早く帰りたい…。)
「余の考えを見事言い当て、しかもこのような兵器まで持ってきよる。それにその珍しい髪色、何より男という性別。お主本当は何者ぞ? 遠い異国の行商などと、そんな見え透いた虚言を信じるとでも思うてか??」
(…うぅ、やっぱりそういう話題か…。どうしたもんかね。。)
「…それは…」
(やべぇどうしよう…。素直に異世界から来たって言ったら信じてくれるか? いや、どうだろうな…。)
ふんっと、クララから笑いが漏れる。
「なんての、冗談じゃ。先日、取り敢えず何も問わんと言ったばかりじゃ。では質問を変えるかの。お主、この国を害すつもりはあるか?」
全身に怖気が走る。
最後の問いに乗せた威圧と覇気が半端ではない。瞬時にこの切り替えが出来るあたり、やはり目の前に座る女が紛れもなくこの国の王であることを本能で理解する。
「ございません。」
言い切る。余計なことは言わずとにかく言い切る。これに尽きる。いいか、客の問いに中途半端な態度で答えるな。「仕様です!」と堂々と言い切ることが肝心だ。
張り詰めた空気と沈黙が部屋を支配する。が、「あっはははは!」とクララが突然笑い出した。
「いや、済まぬ。つい笑うてしもうたわ。余の本気の覇気を受けてまともに口が利けるなど、お主、とんでもない力を持っておるの。もしやこの世界の人間ではないかもしれん、というのは冗談じゃがの。」
可笑しそうに話すクララに心臓の早鐘が止まらない。
(多分、王族のみが持つ覇気スキルかなんかだろうか…。あの覇気、あの威圧。ションベン漏らすところだったぜ…。しかもこの世界の人間じゃないって、当たってるし。。)
「ララスやリーラスなど、脚が震えてまともに立つこともできなんだぞ。王族として恥ずかしい限りじゃ全く。」
(アレを喰らったのか…かわいそうに…。)
「さて、冗談はここまでぞ。とはいえ、お主が敵でないことが分かって何よりだったがの。さて、ここからが本題なのだが…」
クララが居住まいを糺す。
(今のが本題じゃなかったの…? 帰りたい…。)
「お主、ユーナ・オーマチという魔術師冒険者を知っておろう?」
「…はい。なぜそれを?」
聞いた瞬間に察する。ユーナみたいな人間を王国が放っておくわけがない。ユーナの状況くらいは把握しているのだろう。
「当然、ユーナのような存在には気を配っておる。あんな孤高のダイヤモンドランク魔導士が、どういうわけか数ヶ月ほど前から新人の、しかも最低ランクのブロンズ冒険者と組むようになった。興味を引かないわけがない。」
「確かに、道理かと存じます。しかしなぜここでユーナの名前が出てくるのでしょうか。」
「ユーナがヤーライルに潰された旧オーマチ子爵の子供であることは知っておろう?」
「はい。もはや公然の事実と聞いています。」
「その旧オーマチ領の沿岸部には、現在はラガン湾港という王国でも屈指の大港が建設され、ウィネ共和国にとっては我が王国への玄関口となっておる。」
「はい。共和国からの胡椒の水揚げの殆どがラガン港経由であることも、ポーラから聞いております。」
「ふむ。ではこれはどうじゃ。旧オーマチ子爵邸が、そのままかの怪しげなガーク商会の本部となっておるというのは知っておるか?」
「いえ、それについては初耳です。」
「そうか。で、話はここからなんじゃがの、お主におりいって依頼がある。」
「依頼、ですか?」
「左様。依頼というのは、かのユーナ・オーマチから情報を聞き出してほしいのじゃ。」
「情報…?」
「この王城は勿論、各貴族の邸宅というのは万が一の時に備えて抜け道や隠し部屋などがあるのが常じゃ。オーマチ子爵邸、もといガーク商会本部は、商会とは思えぬほど警備が厳しいようでな、なかなか間者を潜り込ませることもかなわん。かといって下手には動けば警戒を強められるでの。ユーナからそれら情報を得られれば、もしかしたら現状を打開できるかもしれん。」
「お言葉ですが、抜け道などは既にサイレル公爵側で暴かれて塞がれているのではないでしょうか。」
「そうかもの。じゃが隠し部屋などはそのまま使っておる可能性が高い。隠匿したい文書などの隠し場所に最適じゃからの。とはいえ、そもそも隠し部屋がどこにあるのか把握しとらんまま潜入しても証拠は手に入らん。」
「なるほど。お話は分かりましたが、そういうことなら尚の事、ユーナを出頭させて教えてもらえばよいのではないでしょうか。」
あの大謁見室でな! とは言わない。
クララが立ち上がり、窓際へ歩みを進める。
「それが出来れば苦労はせん。あやつはヤーライルを、それから余のことも強く憎んでおるのでな。『出頭せぬなら首を刎ねる』とでも言ってみよ、脅されて余に協力するくらいなら、喜んで処刑される方を選ぶじゃろうよ。」
「そこまで強い恨み…ですか。。」
「左様。8年前、ヤーライルの報告を鵜呑みにしてオーマチ子爵家の取り潰しと処刑を追認したのは他でもないこの余じゃ。」
「鵜呑みにした、ということは、ヤーライル公爵が虚偽の報告をした、と?」
「当時あがってきた報告によれば、『リーラ・オーマチ子爵がラガン港建設に反対し、領民を扇動して反対運動をけしかけている。この行動はサイレル家、ひいては王家に対する明確な反逆行為に他ならない。よって爵位剥奪とリーラ・オーマチ子爵の処刑についてご裁可いただきたく。』という旨じゃったな。ヤーライルにラガン港建設を指示したのは余であった。それもあってヤーライルに裁可を与えたのじゃ。」
「…それで、本当はどうだったのです?」
クララが少し目を伏せる。
「本当は、ヤーライルがリーラ・オーマチ子爵に『領民をいくら潰してでもラガン港建設を急げ。反意や不満を口にする領民は即座に切り捨てよ。』といった旨の指示を出していたらしい。子爵は湾港建設に反対していたわけではなく、ヤーライルのやり方に反対しておっただけなのじゃ。まぁ、それを知ったのは子爵が処刑されてから何年も後のことじゃったがな…。」
「…そう、ですか…。なぜヤーライル公爵はラガン港建設をそこまで急いだのでしょうか? …いえ、これは聞かずとも分かることですね。一刻も早く王家を出し抜く利権が欲しかった。それに…。 いえ、なんでもございません。」
クララが自嘲気味に嗤う。
「構わぬ。湾港貿易の潮流に乗り遅れないよう建設を急いでいたのは王家、いや余も同じじゃった。焦りで目が曇っておったために、ヤーライルにいいように謀られ、結果リーラ子爵を殺すことになってしもうたわ。」
「その事実が分かったとき、ヤーライル公爵を糾弾なされなかったのですか?」
クララの拳がぐっと白く握られる。
「できぬよ、そんなこと。経緯がどうあれ、ヤーライルが建設したラガン港のお陰で王国が発展したのも事実じゃ。それを何年も前の咎で罰してみよ、王家に疑問を持つ貴族共が増えるだけじゃ。お主以前『証拠を揃えるのはインバイト家とキート家への示しのためだ』と言いよったの。あの言葉はの、お主が自分で思うておるよりも遥かに重い意味を持っておるのだ。」
「…」
クララが俺に向き直る。
「話を元に戻すがの、この依頼、引き受けてくれるかの?」
(やってほしければ命令すればいい。それをしないというのが、この人が国王として支持される所以なのではないだろうか。とはいえ…)
「最大限努力はしますが、こればっかりはユーナの反応次第です。それに、ユーナには国王からの依頼で動いていると開示せざるを得ません。それでよければ…」
「構わぬ。これに関しては命令する立場におらぬのでな。ただ、ヤーライルに進軍することだけは伏せてはくれぬか。あればっかりは今、外に漏れることがあってはならんのでな。正直、本当はパーラにも言うつもりは無かったのじゃよ。なのにお主に言い当てられてもうた。」
「すみません、そんなつもりは…」
「よいよい。まったく本当に面白い男じゃ。では、何か情報を得たらすぐに書簡を寄越すようにの。」
「承知いたしました…」
(はぁ、また厄介な役回りを押し付けられたもんだぜ…)




