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元暴走族の50歳海将、異世界で非正規農夫に。最強スキル『酒保』の酒と煙草で、伝説の暗殺者やバケモノ達と一服する無双スローライフ  作者: 月神世一


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EP 8

判決のお白州。ドンガン鉱山行き特急便

屋根と二階が綺麗に吹き飛び、開放感に溢れすぎた代官邸。

その瓦礫が散乱する中庭には、どこから持ってきたのか、一枚の粗末なむしろが敷かれていた。

「ん……うぅ……はっ!?」

気絶から目を覚ましたゾルバとガルダは、自分たちがその筵の上に正座させられ、極太のロープで簀巻きにされていることに気づいた。

「な、なんだこれは! 貴様ら、帝国代官であるワシをこんな目に遭わせて、タダで済むと――」

「静かにしろ。今からお前らの『お白州』を始める」

ゾルバの正面。崩れた柱を椅子代わりにドカッと腰を下ろしているのは、ネイビーブルーの作業着をまとった真一だ。

その左右には、腕を組んで冷たく見下ろすキャルル、ダイヤ、龍魔呂が控え、さらに後方からは、いつの間に合流したのか、ニャングルとリバロンが歩み寄ってきた。

「司令。裏帳簿の精査、終わりましたで」

ニャングルが、分厚い帳簿の束を真一に手渡す。

「ご苦労。……さて、ゾルバ代官、そして悪徳商人ガルダ」

真一は帳簿をパラパラと捲りながら、低い声で罪状を読み上げ始めた。

「ポポロ村の特産品を騙った粗悪品の密造・販売による詐欺及び商標法違反。並びに、無実の農民への不当な拉致・監禁、及び暴行。さらには帝国への脱税と、公金横領の数々……。言い逃れはできんぞ。すべてこの帳簿に書き残してある」

「ひっ……!」

ガルダが青ざめ、ガタガタと震え出した。

「ふ、ふん! だからどうしたというのだ!」

しかし、ゾルバはまだ己の立場を理解できず、血走った目で喚き散らした。

「ワシはルナミス帝国の貴族だぞ! 貴様らのような辺境のゴロツキが裁ける身分ではない! このことが上に知れれば、帝国軍の正規兵一個師団がポポロ村を火の海にするぞ! 今すぐ縄を解いて、ワシらに土下座して命乞い――」

「…………」

真一は、呆れたようにため息をついた。

そして、ゆっくりと立ち上がると、タローマン製の作業着のブルゾンのジッパーを下げ、上半身の服をガバッとはだけさせた。

「な、なにを――」

ゾルバの言葉が、喉の奥で凍りついた。

鍛え上げられた真一の分厚い背中。そこから、文字通り『目に見えるほどの極大の闘気』が立ち昇り、夜空に向かって二体の巨大な姿を形作ったのだ。

怒髪天を突き、金剛杵を構える阿形あぎょうと、口を結び、底知れぬ怒りを溜め込む吽形うんぎょう

ポポロ村の裏社会を束ねる、絶対的な武の象徴――『阿吽の仁王像』の幻影が、ゾルバたちを睨み下ろしていた。

「あ、あ、あああぁぁぁ……ッ!!」

その恐るべき覇気と威圧感に、ゾルバとガルダの呼吸が止まる。

心臓を直接鷲掴みにされたような、根源的な恐怖。

真一は、広島の裏社会を震え上がらせてきた「族総長」としての凄みを全開にし、静かに、だが絶対的な死の宣告を叩きつけた。

「……ぐだぐだ抜かしやがって」

真一の眼光が、ゾルバたちを射抜く。

「この仁王の眼に、悪党の戯言は通らん。ルナミス帝国が束になってかかってこようが、ワシのシマ(ポポロ村)は指一本触れさせんわ」

「ひ、ひぃぃぃ……っ! お、お助け……!」

「判決を言い渡す」

真一は、夜空に響き渡る声で高らかに宣言した。

「市中引き回しの上……ドンガン地下帝国の『鉱山送り』だ! ひったてい!」

「ゲヘヘヘ! 待ってましたぜ、ダンナ!」

真一の声を合図に、中庭の地面がボコッと盛り上がり、地中から屈強なドワーフの集団が姿を現した。ドンガン地下帝国のマフィアのボス、ガンドンとその手下たちである。

「ルナミス帝国の代官と商人たぁ、こりゃまたとびきりの労働力だ! ウチの地下の最下層にある『マグマ採掘場』で、死ぬまでツルハシを振るってもらおうじゃねえか!」

ガンドンは凶悪な笑みを浮かべ、ゾルバとガルダの襟首を掴んだ。

「い、いやだぁぁぁっ! たすけて! 帝国軍! 誰か助け――」

「ヒィィィ! 真面目に働きます! ごめんなさいごめんなさい――」

「うるせえ! さっさと歩け、新入り!」

ドワーフたちに蹴り飛ばされながら、絶望の悲鳴を上げるゾルバとガルダは、真っ暗な地下の穴へとズルズルと引きずり込まれていく。

やがて、穴が完全に塞がると、庭には再び静寂が戻った。

「……お掃除、完了ですね♡」

キャルルが満足げに微笑み、真一の横に並ぶ。

「ああ。これで少しは、村の衆も安心して眠れるだろう」

真一ははだけていた作業着を直すと、夜空に浮かぶ満月を見上げた。

圧倒的な武力と、完璧な証拠による社会的な抹殺。

ポポロ村に手を出した悪党たちへの『成敗』は、これ以上ないほど鮮やかで、容赦のない結末を迎えた。

「さて……」

真一は、仲間たちを振り返り、ニヤリと笑った。

「帰って、月見酒と洒落込むか。極上の『芋酒』を開けてやる」

「「「おおおおおっ!!!」」」

キャルル、ダイヤ、龍魔呂、ニャングル、リバロン。

ポポロ村が誇る最強にして最凶の裏稼業部隊の歓声が、夜風に乗ってどこまでも響き渡っていった。

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